vol.367:頭部固定状態での追従眼球運動によるボディバランスの崩れ 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
バイオメカニクス
タイトル
脳卒中者の握力・バランス・呼吸機能に対する腹部引き込み運動および腹部拡張運動の効果
Smooth-pursuit eye movements without head movement disrupt the static body balance.g-Yeon moon, PhD, OPT, HYun gug CHo, PhD, OPT J.Phys. Ther. Sci. 28: 1335–1338, 2016
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・頸部と眼球運動の関係について、姿勢制御の視点から知識を広げたかったため。
内 容
背景
・姿勢制御は視覚、前庭、固有受容器系による感覚入力に依存する。
・視覚において重要な眼球運動の1つに、滑動性追従眼球運動(SPEM)がある。
・SPEMは姿勢制御における重要な要素とされている。
・本研究は頭部を動かさない状態でのSPEMにおける、ボディバランスの変化を調べることである。
※補足:追跡眼球運動は、ゆっくり動く視覚対象物の網膜像を網膜中心窩付近に維持し、その動きに合わせて視線を滑らかに動かす時に起こる随意性眼球運動を指す(Wikipediaより)。
方法
・対象は23.24±2.58歳の40人(男性24人、女性16人)。
・頭頸部カラーを使用して、SPEM中の頭頸部の動きを最小限に抑えた。
・SPEMは異なる方向と速度で誘発された。
方向:水平方向、垂直方向、斜め方向
速度:10°/ 秒、20°/ 秒、および30°/ 秒
・両眼の視界は50°に制限された。
・ボディバランスの変化を比較するために以下を測定した。
general stability (ST)
fall risk index (FI、転倒リスク指数)
・STおよびFIの増加は、姿勢安定性および転倒の可能性が大きいことを示している。
結果
・STはすべての方向において、SPEM速度の増加とともに有意に増加した(表1)。
・FIはすべての方向において、SPEM速度の増加とともに有意に増加した(表2)。
・速度が同じ条件では、STとFIともに斜め方向で最も高い値を示した。
考察
・一般的にSPEMはターゲットが30°/ 秒より速く動くとサッケード運動になり、ターゲットが17°を超えて動くと頭の動きを伴う。
・頭の動きとそれに伴う目の動きは、ボディバランスを保つために補完的な関係にある。
・SPEM速度の急激な変化は姿勢調整メカニズムを妨げる。
・これらから、頭を動かさないでSPEMの速度を上げると、ボディバランスの安定性が低下し、転倒の危険性が高まると考えられる。
私見・明日への臨床アイデア
・頸部に可動域制限などを認める症例は多い。姿勢制御を考えるにあたっては、頸部の評価と介入が重要であると改めて感じた。
氏名 遠藤 健二郎
職種 言語聴覚士
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)