脳卒中(脳梗塞・脳出血)への豆知識・リハビリ 前頭側頭型痴呆にみられる高次脳機能障害 イップスのおまけ
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金子コメント
今日は前頭側頭葉型痴呆FTDから読み解く各領野の役割といいますか、整理する上で有用なのではないかと思います。一般的に認知症と聞くと、「物忘れ・徘徊」などのイメージが付きまといますが、症状は多岐に渡りますよね。
下記の脳図のようにClearな症状の患者さんも少ないかもしれませんが、基底核の症状が開放傾向だよね??などの病態整理はできる方もいます。
どの症状が優位に出ているかで対応、セラピーも変わると思います。
話は変わりますが、先日金子技塾で「イップス」の話題がでました。ジストニアのほうがセラピストには入りやすいかもしれません。
局所性の筋の硬直ですね。原因ははっきりしないようですが、大脳基底核の問題とされています。
プロのピアニスト、野球選手など、同じフォームを何千回と繰り返すと、大脳基底核のループがショートを起こしちゃうんです。
下記の図でも、運動プランから実行へと移行する際に四肢からの固有受容感覚の欠如がdystoniaを生み出す可能性を示唆しています。ですので、治療にはかならず体性感覚をうまく交えた介入が重要といえます。
論文は→こちら
Review ARTICLE Front. Hum. Neurosci., 25 June 2013 | http://dx.doi.org/10.3389/fnhum.2013.00297
Focal dystonia in musicians: linking motor symptoms to somatosensory dysfunction
患者さんのセラピーにも大切ですが、反復練習も度が過ぎると脳に不可がかかるのです。行動に滑らかさ、器用さなどが失われます。
ですので、左右やタイミング、姿勢などバリエーションを増やした介入がとても大切です。
セラピストも「利き手」を可能な限り作らず、非利き手も利き手と同レベルまで操作できるようトレーニングすべきですね。40年セラピーするわけですから。そうしないと故障しちゃいます。
そのために、最近セラピストのウォーミングアップ方法を塾生と共に研究開発しています。
野球にはキャッチボールや素振り、柔道は受け身練習などがあるのにセラピストがないのはおかしいです。
もちろん、僕が考えているのはピラティスやポールトレーニング、ストレッチ、フェルデンのATMのようなものではなく、相手がいなければできないウォーミングアップです。
いずれ塾生には伝えていきたいと思っています。
本文contents
本日は面白い和文の文献を見つけたので、自分なりの解釈も踏まえながら紹介させていただきます。
「前頭側頭型痴呆にみられる高次脳機能障害:田辺敬貴:医学のあゆみ:Vol210.2004」
前頭側頭型痴呆(PICK病)の患者さんは私の所属する病院でも診断目的に入院されるので興味を持ちます。 前頭側頭型痴呆だと診断があったとしても、どちらの症状が強いのか?ということで症状が異なってきますが、それを大変わかりやすく説明されています。
1.被影響性亢進(stimulus bound behavior)
これは前頭葉の障害により頭頂葉の機能が解放されることを表すようです。 頭頂葉の本来有している機能は「状況依存型」と呼ばれるもののようです。 検者が首をかしげると、同じように模倣する、なにかの文句につられて歌を歌いだす、ほかの患者さんへの質問に応じる、検査課題の図形をいちいち指でなぞる。 としています。 集団部屋のベッドサイドで患者さんに質問すると、別のベッドの患者さんが答える場面によく遭遇します (*’-‘*) これは頭頂葉機能の亢進と捉えるのですね。確かに感覚統合の領域なのでFeedBack優位になっちゃうのでしょう。
2.わが道を行く行動(going my way behavior)
前頭葉の障害により、辺縁系が脱抑制の状態になるとでる症状のようです。 勤務中にパチンコに行ったり、無賃乗車をする、関心がほかに向くと立ち去る立ち去り行動(running away behavior)
3.常同症状(stereotypy)
前頭葉の障害により、基底核の症状が解放された状況 反復言語や反復書字、反復行為など間質性保続に属するもの、何を尋ねても生年月日を答えるといった滞続言語、毎日同じおかずを作ったり、具が同じ、同じコースを毎日散歩する(周回)これはアルツハイマー患者さんのように場所がわからずうろつく徘徊(頭頂葉機能の萎縮)と区別しています。
・背側基底核系が反復行動 ・腹側基底核系が常同行動 に関わる可能性があると述べています。
4.自発性の低下(aspontaneity)
前頭葉自体の障害。前頭葉でも穹窿面の障害では自発性の低下 前頭葉でも眼窩面の障害では脱抑制になるようです。
以下はイメージに基づき編集 ↓↓↓
側頭葉優位型の障害は意味記憶の障害や失語の症状がでるようです。「予約に行ってください」と言われても、予約の意味が分からず取れなかったりすると、物忘れとみなされ、アルツハイマー病と診断されることがあるようです。
また、相貌失認などもあるようです。
つまりよく見る図のWhat経路(何情報)とWhere(どこ情報)経路のWhat経路の障害を思い浮かべればわかりやすいと思われます
一般的に認知症と言われても、どの部位の障害による症状か?その障害によりどの部分が脱抑制状態にあるのか?といことを考えながら評価していくと、脳の機能分化の良い勉強になりそうですね。僕の電車の中でのパソコン打ち習慣は、もしかしたら、大脳基底核機能にとって「不都合」かもしれません。ε=ε=(;´Д`)
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)