vol.410:脳卒中後のトイレ動作はなぜ難しいのか? Berg Balance Scale (BBS)などで評価 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
脳神経系論文に関する臨床アイデアを定期的に配信中。 Facebookで更新のメールご希望の方はこちらのオフィシャルページに「いいね!」を押してください。」 臨床に即した実技動画も配信中!こちらをClick!!(YouTube)
STROKE LABでは療法士向けの脳科学講座/ハンドリングセミナーを行っています!上記写真をClick!! PDFでもご覧になれます。→PDF
カテゴリー
脳卒中
タイトル
脳卒中後のトイレ動作における障害 Impairment in toileting behavior after a stroke.Eri Kawanabe, Makoto Suzuki, Satoshi Tanaka, et al. (2018)
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・脳卒中後、トイレ動作は獲得すべき動作の優先順位は高い。また、自宅退院の可否を決める重要な要素なので本論文を読むことにした。
内 容
INTRODUCTION
・脳卒中患者とその家族にとってトイレ動作を自立させることは重要である。 ・トイレ動作は色々な動作の組み合わせである(例えば「下衣を下ろす」「殿部清拭をする」「トイレットペーパーを切る」など)。トイレ動作を構成するこれら動作は行動面・認知面・身体的側面を含む多次元的な性質を持つので複雑である。 ・本研究では我々は(i) トイレ動作の構成動作には易しいものと難しいものがある (ii)脳卒中患者においてトイレ動作自立を予測する因子がある、と二つの仮説を立てた。
METHODS
・被験者は脳卒中で入院しており、重度意識障害がなく、背もたれなし椅子に30分以上良肢位で座位保持できることなどを条件とした。TBに焦点を当てたため、排尿と排便コントロールは被験者にするか否かの条件にしなかったが、FIMにより評価した。 ・TBを10項目に分けた ①車椅子から立ち上がる ②便器に向かって方向を変える ③下衣を下げる ④トイレに座る ⑤トイレットペーパーを切る ⑥殿部清拭 ⑦トイレから立ち上がる ⑧下衣を上げる ⑨車椅子の方に方向転換する ⑩車椅子に座る。 ・一般的に性別でトイレ動作は異なるが、本研究では男女ともに同じ項目で評価した。トイレ動作の評価では「トイレ動作を行ってください」と口頭指示してから始まる。構成動作が不十分だったり、5秒待っても何もしない際には4つのレベルの手掛かり(口頭、見本、タッピング、介助)を与える。口頭の手掛かりは「車椅子から立てますか?」と聞く。見本は患者が模倣できるようセラピストが模擬動作を行う。タッピングでは手掛かりとなる感覚情報を与え、介助では正しい動作が行えるように誘導する。採点は指示なしなら0点、口頭指示なら1点、見本なら2点、タッピングが3点、介助は4点とした。 ・身体機能・認知機能の評価としてFugl-Meyer Assessment(運動機能の重症度を評価。上肢66点、下肢34点の計100点満点で評価。点数が高いほど機能が良い。)、Berg Balance Scale (BBS。56点満点でバランス機能を評価。点数が高いほど機能が良い。)、Mini-Mental State Examination(MMSE。30点満点で認知機能を評価。点数が低いほど障害が重い。)を行った。半側空間無視と失語は「あり」「なし」で評価した。
【完全版】ヒューゲルメイヤー評価/上肢編/FMA/fugl meyer assessment/脳卒中↓↓↓ https://youtu.be/kJHzElQSmvM
Berg Balance Scale (BBS)↓↓↓ https://youtu.be/eJonaDVOrKA ・トイレ構成動作の相対的な難しさを決めるために、構成動作の得点とそれらの合計得点をBoltzmann sigmoid方程式を用いて計算した。Boltzmann sigmoid曲線では難しいほど曲線が左に偏位する。構成動作の点数と患者の個人因子・心身機能との関係を評価するためにgeneralized linear modelを用いた。
RESULTS
・患者の特性はTable 1に示した通り。 ・Boltzmann sigmoid方程式から計算された1つの構成動作の点数と構成動作の合計点の関係をFigure 1に示した。Figure 1の男性データの曲線(点線)と女性データの曲線(鎖線)はほとんど一致するが、下衣の脱衣(c)と便器からの立ち上り(g)は例外だった。 ・統計結果からは「下衣をあげる」「車椅子から立ち上がる」「車椅子へ方向を変える」は難易度が高く、「トイレットペーパーを切る」「殿部清拭をする」「トイレに座る」は難易度が低かった(Fig. 1; Table 2)。すべての要素の中で「トイレットペーパーを切る」が最も簡単で「下衣をあげる」が最も難しかった(Figure 2)。 ・generalized linear modelの結果からBBSの点はほとんどの排泄の構成動作の自立における有意な予測を示した(Table 3)。
私見・明日への臨床アイデア
・トイレ動作の中で立位の動作が特に自立しづらいというのは予想通りであった。トイレの実動作訓練に先立って立位バランスの評価・訓練が必要であると考えられる。 ・本実験では簡単とされたトイレットペーパーを切る動作であるが生活期の片麻痺の方と接する中では「片手で行うのは難しい。」という声をよく耳にする。ごく簡単な両手動作なのでリハビリの早期から実動作訓練を行うことが好ましいと考える。
職種 理学療法士
脳卒中の動作分析 一覧はこちら 論文サマリー 一覧はこちら 脳卒中自主トレ100本以上 一覧はこちら
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)