Vol.433.転倒歴のある70%の脳卒中患者はTAの活動が乏しい!?脳卒中患者の起立時の筋活動パターン
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カテゴリー
タイトル
●転倒歴のある脳卒中患者はTAの活動が乏しい!?脳卒中患者の起立時の筋活動パターン
●原著はLeg Muscle Activation Patterns of Sit-To-Stand Movement in Stroke Patientsこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●Vol.432で足部位置の変化による脳卒中患者の立ち上がりへの影響を学習したが、脳卒中患者の筋活動パターンの特性はどうか学ぶため本論文に至る。
内 容
背景
●椅子から立ち上がる際の脳卒中片麻痺患者の下肢の筋活性パターンの特性を調査し、転倒者と非転倒者間での下肢の筋活性パターンの違いを判別する。
●起立動作にて筋電図(EMG)を使用した研究は少ない。EMGは、椅子から起立する脳卒中患者の下肢の筋活性パターンを確認するための有用なツールである。QUA、HAM、TAおよびSOLは、健常者において膝と足関節の前後方向の安定を制御する上で重要な役割があり、片麻痺患者では前後方向の姿勢の反応が損なわれるためここでの研究に選択された。
方法
●被験者は、肘掛け椅子から快適なペースで立ち上がった。表面筋電図EMGと床反力計を使用して、起立時の下肢の筋活性の時間とパターンを分析した。脳卒中転倒者と非転倒者の違いを比較した。
●70人の脳卒中片麻痺患者および脳卒中の病歴のない20人の年齢が一致した健康な被験者がこの研究に参加した。片麻痺患者70名のうち、31名は中大脳動脈梗塞、12名は大脳基底核のラクナ梗塞、19名は被殻出血、8名は視床出血であった。すべての脳卒中片麻痺患者は医学的に安定しており、指示理解が良く、立って歩くことができた。被験者は在宅生活を送っていた。40人の脳卒中患者の非転倒者のうち27人(67.5%)と21人の転倒歴のある脳卒中患者(70%)が足装具を使用した。ただし、起立の研究では装具は着用されていない。
結果
●脳卒中者の麻痺側下肢の筋活動の平均開始時間は、前脛骨筋では著しく遅延し、ヒラメ筋ではより早くなった。
●転倒歴のある脳卒中患者の麻痺側の筋活性パターンは、幅広い変動を示した。
●患者が椅子から立ち上がるとき、転倒歴のある脳卒中者の70%は、前脛骨筋に何もないか、または単に低振幅の活動を示した。転倒歴のある脳卒中者の半数は、起立動作の上昇活動開始時に、ヒラメ筋の時期尚早または過度の活性を示した。
●脳卒中患者の非麻痺側の下肢の代償性の過剰な前脛骨筋や大腿四頭筋の活性化は、転倒を防ぐ役割を果たしている可能性があります。
私見・明日への臨床アイデア
●転倒歴のある脳卒中患者の起立動作では特に足部でのヒラメ筋の過活動・前脛骨筋の不活動、それぞれのタイミングの異常、非対称性のある活動、筋活動の変動が大きい事が示された。ヒラメ筋の過活動・時期尚早の活動ということは筋が遠心的に緩められない状態かもしれない。足底の内在筋を含め足底~下腿三頭筋・趾屈筋の長さを作り、床に広く接する足を作り、足底の知覚や荷重感覚等を学習していく事で、ヒラメ筋の過活動やタイミング異常等の是正は図れるかもしれない。随意性の得られない場合等は装具など代償手段の検討も必要な場合もあると思われる。ただ、起立練習をするのでなく、何で失敗しているのか、活かせる身体機能を把握し、建設的に介入したいと思う。
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)