【2023年版】脳卒中患者の立ち上がりの特徴とは?立ち上がり4相と片麻痺と代償戦略を動作分析!
立ち上がりの4相の特徴を解説
金子唯史:脳卒中の動作分析より(医学書院)引用⇒こちら
脳卒中者の立ち上がりの4相の特徴を解説
金子唯史:脳卒中の動作分析より(医学書院)引用⇒こちら
運動学・バイオメカニクス的視点で解説
脳卒中患者の立ち上がり評価・チェックリスト
準備フェーズ
- 患者の初期位置:股関節外転/外旋と支持基底面の広さを確認する。
- 体幹の位置:体幹の屈曲と骨盤の後傾を評価する。
- 重心の開始:前方への重心移動の開始能力と麻痺していない側への側方シフトを評価する。
1相:前方への重心シフト
- 体重分布の観察:麻痺していない側へのシフトが主になっているか?
- 体幹の動作分析:代償的な体幹の屈曲はあるか?
- 重心移動の速度:動きが遅すぎるか、または急すぎるかを記録する。
- 姿勢の調整:前方への重心シフトを容易にするための代償戦略をメモする。
2相:最大背屈までの重心シフト
- 背屈の達成度:最大背屈への移動能力を評価する。
- 股関節の動き:代償動作としての股関節屈曲と外転を見る。
- 視覚依存:バランスのために視覚手がかりに過度に依存しているか観察する。
- 頭と首の姿勢:代償機構としての頭と首の過伸展と固定をチェックする。
3相:離臀から立位保持まで
- 支持基底面:追加の安定性のために外部物体を使用することをメモする。
- 感覚フィードバック:足からの十分なフィードバックがない兆候を評価する。
- バランス戦略:不安定への反応としての体幹と四肢の屈曲を観察する。
- 視覚の焦点:バランスを保つための視覚入力に過度に依存しているか固定した目の動きを記録する。
4相:安定した立位位置での停止まで
- 重心の安定性:重心の後方位置と代償動作を評価する。
- 筋活動:背筋群の過度な活動と腰椎の過伸展を評価する。
- CoPとCoGの距離:バランス問題の指標としてCoPとCoGの距離を測定する。
- 姿勢の揺れ(スウェイ):揺れの不在や潜在的な剛性、固定姿勢を観察する。
一般的な観察
- 動きの流れ:立ち上がりの全体的な流れと協調性を評価する。
- 対称性:麻痺した側と麻痺して
リハビリテーション戦略は?
第1相(前方重心移動):
体重移動のドリル: 左右均等に体重を移動させ、左右対称に体を支える練習。
体幹のコントロール・エクササイズ: 代償的な体幹の屈曲の必要性を減らすために、体幹を強化し安定させるエクササイズを行います。
股関節と膝の強化: 股関節と膝関節の伸筋を強化し、重心の前方移動を補助するエクササイズ。
スピードコントロール・トレーニング: 重心移動のスピードをコントロールすることに重点を置いたエクササイズ。
第2相(重心移動から最大背屈まで):
足関節背屈エクササイズ: 前脛骨筋やその他の背屈筋をターゲットとしたエクササイズを行い、可動域と筋力を向上させます。
固有受容トレーニング: バランスをとるための視覚的な手がかりへの依存を減らすためのバランスと固有受容感覚のエクササイズ。
首と頭の姿勢トレーニング: 頭部と頸部の過伸展と固定を矯正するテクニック。
股関節の柔軟性トレーニング: 臀部のストレッチと可動性エクササイズ。
第3相(離臀から立位保持へ):
感覚フィードバック強化: 異なる感触の上に立ったり、バランスボードを使うなど、足からの感覚入力を増やす活動。
支持基底面の操作: 広げた支持基底面を徐々に狭めて、より自然なスタンスにするトレーニング。
視覚集中訓練: バランスをとるための手がかりを視覚的なものから感覚的なものへと移行するように促します。
左右対称の力発揮: 身体の両側から均等に力を出すことに重点を置いた筋力強化エクササイズ。
第4相(安定した立位で停止するまで):
姿勢動揺管理: バランスと安定性を向上させるために、姿勢の揺れをコントロールするエクササイズ。
脊柱起立筋のコントロール: 腰椎の過伸展を避けるため、背部伸筋の筋力強化とリラクゼーションエクササイズ。
CoPとCoGのアライメント: 重心と重圧を視覚化し、コントロールするためのバランス・プラットフォームの使用(動画などで)。
代償固定の軽減: 硬直を軽減し、正常な姿勢調整を促すための可動性と柔軟性のエクササイズ。
一般的な観察:
機能的動作の練習: 流動性と協調性を高めるために、椅子から立ち上がる動作全体を練習。
左右対称のトレーニング: 左右対称の動きと均等な力の配分に重点を置いた活動。
環境調整: 代償戦略(椅子の高さ、補助器具の使用など)の必要性を減らすための環境調整。
患者教育: 立ち上がり動作中の適切な技術と自己認識に関する患者への教育。
論文解説
カテゴリー
タイトル
●脳卒中患者の立ち上がりの特徴とは?立ち上がり動作の健常者と脳卒中者間の比較
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●臨床で脳卒中患者のリハに関わることは多い。その際に、まずは一般的な脳卒中患者の動作の特徴を知っておくことは重要と思い本論文に至る。
内 容
背景・目的
●座位から立ち上がる能力は、自立した生活活動を行う上で非常に重要です。また、歩行の前提条件でもあります。座位から立位(STS)のは、年齢、座面の高さ、肘掛け、足の位置、筋力、バランス能力などのいくつかの要因の影響を受ける可能性があります。脳卒中者は、椅子から立ち上がる能力が低下しているため、STS中に転倒する傾向があります。脳卒中者の転倒の37.2%がSTSから体位を変えている間に発生したことが報告されています。 STSのパフォーマンスを改善するための介入の有効性に関する標準化された評価は、まだ不十分です。パフォーマンスを改善し、脳卒中片麻痺片麻痺患者の転倒率を低下させるためにSTSの特性について理解を深める必要があります。
●研究目的は脳卒中片麻痺患者における5相に分けたの座位から立位(STS)中の健常者と比較した主要な変化点を調査することでした。
方法
●研究には、25人の亜急性期脳卒中患者と年齢を合わせた17人の健常者が参加した。 STS中のパラメーターは、フォースプレートを備えた三次元動作分析システムを使用し測定された。STSの5相は、6つのタイミングによって識別された。
結果
●1相に時間を要した。4相での膝股関節伸展に時間を要した。
●最大膝関節モーメント(回転力)までの時間が有意に遅れた。
●麻痺側での一過性の急速な膝関節モーメント(2相)の著明な減少と最大モーメントの減少が見られた。
●床反力は麻痺側で有意に小さかった。
●最大股関節屈曲が麻痺側で有意に小さかった。
私見・明日への臨床アイデア
●脳卒中患者では動作を始める時点から健常者から遅れを取っており、その時点から抗重力活動の低下や左右差、その他問題が起きていることが示唆される。姿勢セットから介入していく必要がある。
●加速を生み出すこと、その加速を位置エネルギーに変換するなど切り替えが上手くいっていないようである。加速を制動できる能力はあるか、切り替えはできるか、制動した状態(膝など関節を定位した状態)で他関節を分離して動かせるかなど評価治療することは必要そうである。
●随意性、感覚、可動域、認知他何が原因なのか整理して臨床では介入していきたい。
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)