Vol.444.非麻痺手の皮膚麻酔をすると麻痺手パフォーマンスが改善する!?慢性期脳卒中患者の運動機能に対する体性感覚入力の影響
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タイトル
●非麻痺手に麻酔をすると麻痺手のパフォーマンスが改善する!?慢性期脳卒中患者の運動機能に対する体性感覚入力の影響
●原著はInfluence of Somatosensory Input on Motor Function in Patients With Chronic Strokeこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●臨床において脳卒中患者が、麻痺手の使用時に非麻痺手を過剰に動す場面を多く見受けるが、非麻痺手への積極的な介入を行った経験は少ない。今回、非麻痺手の感覚を抑制する麻酔による介入の論文が目に止まり興味を持ち読むに至る。
内 容
背景
●動物モデルで確認された神経可塑性の原理を適用することで、脳卒中による慢性運動障害を改善できることが提案されている。最近の報告では、一肢からの感覚入力の減少により、体性感覚皮質の受容野の急速な変化を特徴とする両側の皮質の再編成が生じることが指摘されている。
●人間では、手への麻酔は両側の皮質の再編成につながり、おそらく半球間の相互作用の変調を通じ、麻酔されていない手の触覚の識別スキルの改善につながると考えられる。したがって、慢性期脳卒中患者の非麻痺手に麻酔をすると、麻痺手の運動機能に影響を与える可能性があると考えられる。この研究では、慢性期脳卒中患者の麻痺手による指タッピング課題と前腕運動課題のパフォーマンスに対する、非麻痺手と非麻痺足(コントロール群)への皮膚麻酔の効果を評価した。
方法
●13人の脳梗塞患者が参加した。患者は脳卒中発症から少なくとも1年経過していた。指でタッピングする課題(電子キーボードの特定のキーを人差し指で可能な限り迅速かつ定期的に10秒間押すように指示された。)と手首を曲げる課題(患者は20インチモニターの前60cmのところに座り、画面の中央にある十字に焦点を合わせ、モニターに表示されるGO信号に応じて手首をできるだけ早く曲げるように指示された)を次の3日間に分け評価した。 (a)麻酔なしの練習セッション(b)非麻痺手の麻酔(標的介入)(c)非麻痺足の麻酔(対照介入)。指示はテープレコーダーから再生され、運動パフォーマンスに関するフィードバックは提供されなかった。
結果
●この研究では、慢性期脳卒中患者の非麻痺手への皮膚麻酔により、麻痺手の動的な指運動課題のパフォーマンスが改善された。前腕の筋に関連する手関節運動課題では改善は認められなかった。非麻痺手への皮膚麻酔(抑制)が「部位特異的な」麻痺手の機能改善を促す可能性を示唆している 。
●この研究の主な結果は、慢性期脳卒中患者の非麻痺手の皮膚麻酔により、麻痺手での動的な指の運動課題のパフォーマンスが向上したことである。 素早い指のタッピングは、主に一次運動野で発生し、高速の皮質脊髄投射を通して行われる活動に依存する課題です。 それは、リハビリ治療を受けている脳病変のある患者の機能的目標の達成とよく相関する。
私見・明日への臨床アイデア
●非麻痺手の感覚の正常化は、半球間抑制の是正等のモデルと同様に麻痺手の機能改善を促進する可能性が示唆された。臨床では、非麻痺手を過剰に使用されている方が多く、セルフケアでも非麻痺側のコンディショニングを入れていくことで普段の臨床において麻痺手がより賦活されやすくなる可能性がある。
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)