頭頂葉出血患者さんのリハを終えて・脳卒中(脳梗塞・脳出血)片麻痺のリハビリ
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金子コメント:今日は前回お伝えした頭頂葉出血の患者さんの転院場面での感想のようです。脳の理屈はかっこよく考えられても現場での実践は泥臭いんです。
臨床とはそんなものですが、泥臭く難しいからこそヒトの身体の神秘が肌で感じられるし、面白いのです。
今日はOTとしての意見も述べていますね。今の自分が目指す「ハイブリッド・セラピスト」としての原点なのかもしれません。
あと、Tap up TVで4本全ての動画が掲載されました。下記に添付しています。ご参考になれば幸いです。
本文contents
以前からたびたびブログで話題にしていた頭頂葉出血患者さんが明日、回復期リハビリ病院に転院になりました。
(p_q*)シクシク
患者さんは、初期評価は間違っていなかったのですが、治療においてかなり苦戦しました。
画像からもわかるように、背外側経路や腹内側経路といった下降性経路に大きな問題はないのですが、座れませんでした。やはり感覚統合に大きな問題を抱えていました。
テーマはどうやったら麻痺側をきづいてもらえるか?です。
テーマはシンプルなのですが、介入においては苦戦し、介入2週間でようやく端坐位が自立し、1か月でようやく歩行が監視にて15メートル程度可能になったうえでの転院です。
とにかく、接触するreferenceがなくなると、自分の身体の位置がほとんどわからなくなってしまうのです。
ですので、まずテーブルのセッティングや、立てるようになると平行棒で自分の体の位置が確認しやすいセッティングでの治療が重要でした。
麻痺は基本的にないので、右下肢でセラピストの膝を押しながら立ってもらい、ハンドリングとバーバルオーダーを組み合わせながら行いました。
これの意味づけとしては、頭頂葉が損傷しているので、本人に随意的に考えてもらいながら、筋出力をねらう前頭葉ループを利用した治療のつもりです。ハンドリングによる感覚入力はtoneを高めていくというよりも、ガイド程度で、メインは本人に施行してもらったり、注意してもらうといった、皮質を利用した姿勢コントロールです。
随意運動からの感覚フィードバックがより本人の学習につながりやすかったです。
また、OTとしての介入も考えさせられました。麻痺上肢を気づいてもらうため、自主トレとして、両手のじゃんけんの写真や、片手それぞれちがう指の写真を20パターンほど用意して自室で行ってもらいました。(当初手指失認や失行もあったため)
これにより3日ほどで、食事で箸操作が可能となりました。
また手指に比べ回復が遅かった肩のstabilityが改善してくると、すぐに看護師さんに起き上がってもらう際、麻痺側から本人に麻痺側上肢を使用して起き上がってもらうよう伝え、自室に写真を提示しました。これにより、麻痺側の気づきがさらに高まり、起き上がり、坐位の自立へとつながりました。
とにかく、ADL能力が看護師さんの業務に影響を与えない程度にアシスト程度でできるようになったものはすぐに看護師さんにお願いしました。
立位のように手がかりの少なくなる場面ではすぐに麻痺側に転倒してしまうので、段階づけをどう病棟に伝えていくか?を考えました。
<そのため歩行の経過>
介助にて歩行器歩行→両手つかまり歩行→後ろから両肩甲骨サポート→麻痺側から手をつなぐ程度(麻痺側の支持ができるようになってきた)
とreferenceを本人の能力に合わせて減らしていくことを病棟での歩行指導にOTが積極的に行っていきました。
歩行の際どうしても、股関節伸展位でのstance phaseができない場面はすぐにリハ室で立位でのstance訓練を行い、うまくいったら病棟にもどり実践してみるというように、リハ室と病棟を何度も行ききしました。
OTの役割、介入方法の重要性がなんとなく見えてきました。
OTの役割って?
OTはADLと言えばそのとおりなのですが(*働くフィールドや価値観によって様々です)
・主要問題点が何かを必ず押さえておく
・それがADL実践で解決できるのか?少しリハビリ室で練習した方がよいのか?
・carry overになるにはどのfunctionを病棟で実践してもらうか?
・看護師さんにどのようにしたら実践してもらえるか?
・ADLにおいて、とにかく本人ができるところ、アシストすればできるところを瞬時に見つけ、瞬時に病棟につなげる
この俊敏性こそ、OTに求められる臨床能力だとこの患者さんに関しては思いました。
病棟でトイレができないからトイレにこだわる必要はないと思っています。現状の能力に最も近いADLの達成の積み重ねがトイレにつながれば良いと思っているので、現状能力にトイレ能力が離れていれば、評価や楽にやれる方法をアドバイスする程度にしておいた方が良いのではないでしょうか?(ちょっと強引かもしれませんが。。。(・ε・)ムー)
OTが把握する前に病棟で実践されていたら負けかと・・・。
おそらく1カ月でここまで回復したので、今後はFree handでの屋外自立、APDLも自立するのではないでしょうか?
患者さんが、歩いてリハビリ室に遊びに来てくれることを楽しみに待ってたいと思います(・∀・)つ
*Tap up TVにて僕の講義と実技が公開されています。
*研修場面の動画を作成しました(患者様をご紹介されたセラピストの見学・実技は無料となっております)
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)