Vol.504.仙腸関節機能障害が及ぼす歩行時の筋活動への影響とは?
脳神経系論文に関する臨床アイデアを定期的に配信中。 Facebookで更新のメールご希望の方はこちらのオフィシャルページに「いいね!」を押してください。」 臨床に即した実技動画も配信中!こちらをClick!!(YouTube)
STROKE LABでは療法士向けの脳科学講座/ハンドリングセミナーを行っています!上記写真をClick!! PDFでもご覧になれます。→PDF
カテゴリー
タイトル
●仙腸関節機能障害が及ぼす歩行時の筋活動への影響とは?
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●仙腸関節に疼痛を有し跛行を有する患者を担当し、一般的な特徴を論文で学ぼうと思ったため。
内 容
背景
●仙腸関節機能障害(SIJD)などの腰痛や股関節障害のある人では、歩行能力が損なわれることがよくあります。
●仙腸関節の機能障害は、大殿筋と対側の広背筋の共活性化の低下を伴います。本来これらは一緒になって歩行中の関節の安定性を提供します。
●研究目的は、健常者と仙腸関節機能障害患者間で歩行を比較すること。健常者で特定された筋シナジーと仙腸関節機能障害患者の筋の用い方を比較することでした。
方法
●片側仙腸関節機能障害の6人の女性と6人の年齢を一致させた健康対照群は、フォースプレートを使用した運動学的評価と表面筋電図で16の筋活動を記録しながら、1m / sでフォースプレート機能を有したトレッドミルを歩きました。
結果
●仙腸関節機能障害の患者は、障害のない側よりも障害側で股関節伸展が少なく、垂直方向の床反力ピークが低下している。
●コントロール群とは対照的に、仙腸関節機能障害グループは、患側の大殿筋と反対側の広背筋との間に抑制された筋シナジー効果を示しました。
●結果は、仙腸関節機能障害を有する患者が年齢を一致させた対照群と比較し、歩行時の大殿筋の活性化の低下と、歩行時の脚間の非対称性の増大の両方を示したことを示しています。
私見・明日への臨床アイデア
●ある関節の障害がどのような筋活動を抑制しているのか、どのような代償を生んでいるのか観察・推察していくことは重要で、その経験の積み重ねが瞬時に患者の障害と動作戦略のリンクを早める訓練となる。また、動作上では、筋活動は複数の筋が機能的単位として働くため、ある筋の障害から二次的に抑制されている部分へも目を向けることも非常に重要である。今回で言えば、同側の大殿筋から対側の広背筋の活動がそうである。大殿筋と広背筋は後斜スリングシステムとして胸腰筋膜を介して機能し、歩行速度の向上などにも関与している。機能的単位、体幹を介した四肢のカップリングを意識して患者を評価治療していきたい。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
脳卒中の動作分析 一覧はこちら
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)