Vol.506.上肢の予測的姿勢制御と感覚障害について 脳卒中リハビリ論文サマリー
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カテゴリー
タイトル
上肢の予測的姿勢制御と感覚障害について
原著はHow predictive is grip force control in the complete absence of somatosensory feedback?こちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●重度感覚障害の患者と臨床で関わることが多く、感覚障害を有する患者の特徴や臨床における示唆を論文から学習する過程で興味を持ち本論部に至る。
内 容
背景
●握力のコントロールは、運動系のダイナミクスと操作する外部オブジェクトの正確な内部モデルに依存しています。内部モデルは感覚的な経験によってトレーニングおよび更新されます。ここでは感覚フィードバックが予測的な握力コントロールに不可欠であることを証明します。
方法
●感覚求心路の障害を受けた患者と健常者の物品移動時の握力コントロールの効率性と精度を分析した。
●慢性的に感覚求心路が遮断された被験者と3人の健常者で、手に把持した物品を垂直および水平のあるポイントから他のポイントへ移動させる際の上肢の動きにより生じる負荷変動に対する握力調整の効率性と精度を分析しました。動作は、物品が静止した状態で開始および終了しました。
●垂直方向への検査:被験者は、物品をz軸に沿って直線の垂直線上で移動させ、移動中はその向きを一定に保つように指示されました。被験者はまた、物品を速く動かすように指示されました。動きの振幅は約30cmでなければなりませんでした。これは、各試行の最初の動きの間、動く手の横に定規を保持することによって確認しました。単一の上下の動きの間に、約1秒の短い休憩が導入されました。
●水平方向への検査:あるポイントから他のポイントへの動きを実施しました。被験者は、手のひらを下に向けて物体を上から把持しました。
●各被験者は、垂直方向と水平方向の動きを実行しました(それぞれ30±60秒の休憩を挟んで4回の試行)。
結果
●感覚障害を有する患者と健常者では、把持した物品を目標物に到達させる際に同様の加速度を生成したため、垂直方向と水平方向の移動中に同様の負荷の大きさを生成した。
●患者の方では、物品の保持と移送中に非効率的に過度に強い握力を示した。
●これは物品の重量と慣性荷重に対する適切な出力の目測が感覚を有さないと不正確であることを示しています。
●予測的な握力制御には、断続的な求心性の感覚フィードバックによる内部モデルの更新が重要であると結論付けます。
私見・明日への臨床アイデア
●感覚が脱失している患者では、より物品と目を近づけて視覚の補足的情報を得やすくしたり、両手動作等で感覚を補助する、より感覚を得やすい関節をリファレンスとしていく他、フィードバックの工夫を要する。
●感覚フィードバックは得られづらいが、求める動きの反復運動を行い、自然と求める手の姿勢となりやすいように特訓するのも一つの手である。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
脳卒中の動作分析 一覧はこちら
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)