Vol.518.脳卒中患者の起立動作の特徴のレビュー 〜立ち上がり動作の極意〜
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カテゴリー
タイトル
●脳卒中患者の起立動作の特徴のレビュー
●原著はDeterminants of sit-to-stand tasks in individuals with hemiparesis post stroke: A reviewこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●起立動作は、歩行開始の準備、日常生活上でも欠かせない最も重要な動作の一つです。起立動作正しい理解は非常に重要と感じ、その理解を深めるため起立動作に関する本論文を読むに至る。
内 容
背景
●脳卒中後、患者は脳病変の対側に感覚運動障害を示し、歩行、立位、立位(STS)などの機能的活動を実行する能力が制限されます。日常生活の基本的な前提条件と考えられているSTSは一般的に問題を生じており、脳卒中後患者は椅子から安全に立ち上がるこの能力を簡単に回復することができていません。したがって、STSがどのように達成されるかをよりよく理解し、患者のパフォーマンスを改善するために考慮すべき重要な要素を知ることは重要です。
●この論文は、椅子から立ち上がる能力に影響を与える要因をレビューし、脳卒中後のリハビリテーションの推奨事項を特定することを目的としています。
方法
●「脳卒中」、「リハビリテーション」、「立ち座り」という検索用語を使用しました。文献検索では、122のタイトルと要約が特定され、レビューの目的に沿っている46が分析対象となりました。
結果
●脳卒中後片麻痺患者はしばしば股関節と膝関節の角度変化時の協調性の低下を示し、股関節がまだ伸展途中で膝を完全伸展させてしまうことがありました。
●脳卒中患者は、足を自発的または対称的な位置に配置し椅子から立ち上がったときに、STS中に非麻痺側に体幹を傾けた。
●脳卒中後患者は、健常者と同様の体幹の屈曲運動幅を実行したにもかかわらず、健常者と比較してCOP変位が少なかった。
●自立して起立動作が出来る脳卒中患者の特徴は、非麻痺側方向への体幹の軸のズレ、非対称性の荷重(離殿前から)、膝伸展モーメントの非対称性、動作の時間延長などを示しました。興味深いことに、片麻痺の被験者がまだ大腿を椅子に接触させていたとき、荷重の非対称性は既に観察され、計画された戦略性を示唆していました。
●STS中、特に伸展相で体を安定させるためにより多くの時間を必要とし、転倒のより大きなリスクが観察されました。
私見・明日への臨床アイデア
●脳卒中患者では、起立時に特に麻痺側の下肢の協調的な姿勢制御が難しく、膝伸展をBack kneeで代償したり、非麻痺側に依存したり種々の戦略で動作を遂行しようとされる。臨床上、このパターンは治療がどこに重点を置いて治療してきたかにも依存する印象が有る(例えば、短下肢装具中心で屈曲要素の残存した歩行練習では股関節の十分なコントロールが苦手なままとなりやすい)。個々の患者の障害の特徴、姿勢制御の戦略の分析、治療展開の経過を適宜見直し、患者の問題点を丁寧に振り返りながら運動学習を進めていきたい。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)