Vol.537.脳卒中患者に対するリモートでのリハビリテーション介入の効果とは?
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カテゴリー
タイトル
●脳卒中患者に対するリモートでのリハビリテーション介入の効果とは?
●原著はTelerehabilitation services for strokeこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●コロナが流行る中で種々の遠隔サービスが世の中で増えている。リハビリも同様です。その効果の研究はあるのか、気になり本論文に至った。
内 容
背景
●リモートリハビリテーションは、リハビリテーションサービスを提供する別の方法を提供します。情報通信技術は、医療専門家と遠隔地の患者との間の通信を容易にするために使用されます。通信技術の速度と洗練度が向上するにつれて、リモートリハビリテーションの使用はより実行可能になりつつあります。しかし、現在、この提供モデルが、対面で提供されるリハビリテーションと比較して、または通常のケアに追加された場合にどれほど効果的であるかは不明です。
●研究目的は、対面リハビリテーション(療法士と患者が同じ場所にいて、リハビリテーションが提供されている場合)と比較したリモートリハビリテーションが脳卒中者の日常生活動作を改善する能力につながるかどうかを判断することでした。副次的な目的は、リモートリハビリテーションの使用が、セルフケアと自立度を高め、移動性、バランス、健康関連の生活の質、うつ病、上肢機能、認知機能、または機能的コミュニケーションを改善するかどうかを判断することでした。さらに、リモートリハビリテーション介入に関連する有害事象の存在、費用対効果、実現可能性、およびユーザー満足度について報告することを目的としました。
方法
●Cochrane Stroke Group Trials Register、Cochrane Central Register of Controlled Trials、MEDLINE、Embaseを検索しました。また8つの追加データベースなどから検索しました。選択基準は脳卒中におけるリモートリハビリテーションのランダム化比較試験(RCT)でした。リモートリハビリテーションを対面リハビリテーションまたはリハビリテーションなしと比較した研究を含めました。さらに、代替グループなしでリモートリハビリテーションサービスを提供する2つの異なる方法を比較したRCTの結果を統合して説明しました。
●合計1937人の参加者を含む22件の研究をレビューに含めました。研究規模は10人の参加者から536人の参加者までの範囲でした。介入アプローチには、脳卒中後の言語障害を持つ方を対象とした退院後支援プログラム、上肢トレーニング、下肢および移動能力の再トレーニング、およびコミュニケーション療法が含まれていました。研究は退院時または脳卒中後の亜急性期または慢性期の人々を対象に実施されました。
結果
●退院後のリモートリハビリテーション介入を受けた人々と通常リハと比較し日常生活動作に差がないという中程度の質のエビデンスが見つかりました。
●バランスについてはリモートリハビリテーションと対面リハビリテーションの間に差がなかったというエビデンスの質が低い報告がありました。(106人の参加者による3つの研究に基づく)。
●569人の参加者による3つの研究では、退院後のリモート支援介入を受けた人々と健康関連の生活の質に関する通常のケアを受けた人々間に差がなかったという中程度の質のエビデンスを示しました。
●同様に、6件の研究(参加者1145人)で、退院後のリモート支援プログラムを通常のケアと比較した場合、抑うつ症状に差がないという中程度の質のエビデンスが見つかりました。
●コンピュータープログラムを使用して上肢をリモートで再訓練した場合、上肢機能のグループ間に差は見られませんでした(170人の参加者による3つの研究に基づく)
●リモートリハビリテーションが移動能力または介入に対する参加者の満足度に及ぼす影響について結論を出すには、エビデンスが不十分でした。リモートリハビリテーションの費用対効果を評価した研究はありません。重篤な試験関連の有害事象は報告されていませんが、2つの研究が有害事象について報告しました。
●結論としてリモートリハビリテーションの有効性をテストするRCTの数が増加している一方で、介入と比較対照は研究間で大きく異なるため、効果について結論を出すことは困難です。さらに、十分な能力を備えた研究はほとんどなく、このレビューに含まれるいくつかの研究はバイアスのリスクがありました。現時点では、リモートリハビリテーションが対面リハビリと同様に効果的な方法であるかをテストする低レベルまたは中レベルのエビデンスしかありませんでした。
私見・明日への臨床アイデア
●コロナによる在宅時間が増える中で、人のリモート活動が増えている。しかし、パソコンに慣れない高齢者にはハードルの高い面もあると思われる。パソコン画面は高齢者にとっては見づらい可能性や在宅レベルで過ごされている方は認知面の低下を来している可能性もあり、そのような点も問題となるかもしれない。しかし、科学の進歩に伴うリモートリハビリのような選択肢の広がりには今後も目を向けていたい。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
脳卒中の動作分析 一覧はこちら
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)