Vol.556.パーキンソン病患者のすくみ足に対するオプティカルフローと注意戦略
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カテゴリー
タイトル
●パーキンソン病患者のすくみ足に対するオプティカルフローと注意戦略
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●パーキンソン病患者では、線またぎですくみ足が一時的に改善するとされる。より多感覚の付与することでどのように効果が変化するか気になり本論文に至る。
内 容
背景
●急速に移動する標的に反応する特定の視覚-小脳-皮質の経路は、PD患者の大脳基底核の変化した機能を迂回することができることが提案されています。この推測によれば、Majsalらは動く物体の時空間視覚刺激が患者に提供された場合にPD患者の自己決定最大歩行速度の増加を発見した。動きの速い視覚的手がかりに選択的に反応する人間の視覚野の領域の特定は、この仮説をさらに支持しています。
●軽度のPD患者に対する前方指向のオプティカルフローは歩行速度を改善し、歩行リズムを改善します。しかし、重度患者にはそのフローは速すぎるか注意戦略の訓練にて歩行速度の変化なしに、歩幅のわずかな増加とケイデンスの減少を誘発することが出来ます。
●パーキンソン患者に対する視覚的手がかりによる運動促進のメカニズムに関する仮説の一つとして、歩行時に縞模様の動きによって生成される周辺視野に対するオプティカルフローの影響が報告されています。
●いくつかの研究は、適切な視覚的手がかりが提供された場合に歩行を改善するPD患者の能力を実証しました。考えられる説明は、注意要因と周辺視野のオプティカルフローの存在に言及していました。本研究目的は、異なる段階のパーキンソン病の15人の被験者のグループと10人の年齢を一致させた対照のグループでこれら2つのメカニズムを別々に評価することでした。
方法
●2つの異なる光刺激モダリティを実装するマイクロプロセッサー制御のポータブルデバイス(下図参照)が使用されました。両側の連続的なオプティカルフローと歩行のスイング相に同期する片側の相互の光刺激が付与されました。もう一方では注意戦略の実施を可能にしました。
結果
●結果は、軽度のPD被験者(H&Y<= 2) は、歩行ケイデンスと速度の増加をもたらす前向きオプティカルフローに反応するのに対し、より進行した段階 (H&Y>2)のPD被験者は、歩幅の増加とケイデンスの代償的減少を通じて注意戦略に反応する傾向があることを示しました。
私見・明日への臨床アイデア
●今までの現場の状況では、床にテープを貼るなどの外部刺激しか難しかったと思う。しかし、近年、Q-ピットをはじめ、オプティカルフローを誘発するような技術も進んでいる。簡易的により多感覚の練習できないか、ネット・情報を掴むことに馴染みのある若い療法士が興味をもって着目していくことで現場を変えていくことは出来ると思う。しかし、あくまでデバイスは外部刺激を付与するのみ。最終的には患者の内部を変えていく必要があり、そのような視点で臨床を組み立てることが大切である。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
併せて読みたい【パーキンソン病】関連の記事はこちら
●Vol.31.パーキンソン病における外部刺激と姿勢構造の関連とは?病院/施設向け 文献
●vol.70:パーキンソン病における眼球運動と歩行時 方向転換の関連 脳卒中(脳梗塞)リハビリに関わる論文サマリー
●vol.84:LSVT BIGから学ぶパーキンソン病のリハビリ パーキンソン病論文
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塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)