Vol.606.リーチ動作時の上肢筋シナジーとBrunnstrom Stage(ブルンストロームステージ)の関係性
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カテゴリー
タイトル
●亜急性期脳卒中患者におけるリーチ動作時の上肢筋シナジーとBrunnstrom Stage(ブルンストロームステージ)の関係性
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●様々な重症度の脳卒中患者と関わり、上肢治療を行うことも多い。今回は、脳卒中患者に頻繁に見られるパターンについて学びたいと思い本論文に学習の一助として至った。
内 容
背景
●不適切な筋の協調による運動障害に苦しむ人の筋シナジー分析の目的は、根底にある生理学的メカニズムを明らかにし、効率的な回復プロセスに関する提案を提供することです。脳卒中後の筋シナジーがどのように影響を受けるかを調べるために、いくつかの研究が行われています。たとえば、Clarkら(2010)の研究では脳卒中患者の運動における運動モジュールが変更され、モジュール数が生体力学的および臨床的歩行パフォーマンス変数と相関していることを示しました。同様に上肢の動きでは、Rohら(2013、2015)の研究にて慢性期脳卒中患者からの筋シナジー構成の変化を発見しました。
●これまでの研究ではブルンストロームステージの様々な段階の脳卒中患者からの筋シナジーの構造と動員の潜在的な変化を調べていません。本論文では、亜急性期の脳卒中患者の筋シナジーの変化を自発的なリーチ運動中に調べました。
方法
●脳卒中の35人の患者と25人の年齢が一致した対照被験者が北京大学第一病院から研究のために募集されました。
●被験者は手のひらを太ももに向けて机の前に座りました。次に、参加者は自発的に親指を上に立てた状態で肩を90度屈曲しながら2秒間前方リーチしました。課題は被験者に対して3回、3分間隔で繰り返されました。
●Brunnstrom StageIIIからVIまでの35人の脳卒中者と25人の対照被験者から筋電図(EMG)データを収集しました。記録された筋は、大胸筋(PECM)、僧帽筋上部(TRA)、三角筋前部(DELA)、三角筋内側(DELM)、上腕二頭筋(BIC)、上腕三頭筋(TRI)、腕橈骨筋(BRAC)でした。
結果
●脳卒中群において大胸筋の活性化の増加と肘の伸展筋である上腕三頭筋の活性化の減少が見られました。さらに、筋シナジーの類似性は、Brunnstrom stageと有意に相関していた。
Brunnstrom stageIVおよびVの脳卒中患者は、対照群と同じくらいの筋シナジーを採用していることがわかりました。
私見・明日への臨床アイデア
●Brunnstrom stageIV・Vの患者では対照群と同程度の筋シナジーを採用していることがわかった。リーチ動作というものがStageⅢレベルの方には複雑な運動と言えるため、少しでも分離した活動が行いやすい難易度になるように徒手的またはロボット支援など環境を整えてあげることは大切と言える。患者の代償動作やパターンを見極め適切な負荷で運動学習を促していきたい。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)