Vol.618.脳卒中後の非麻痺側の強化が麻痺側の機能を高める!? -Cross Facilitation/Cross Education-
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タイトル
●脳卒中後の非麻痺側の強化が麻痺側の機能を高める!?【Cross facilitation】
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●非麻痺側を強化すると麻痺側も強化されるというcross educationに興味を持ち、より多く論文を読みたいと思い本論文に至った。
内 容
背景
●大脳皮質の運動野(一次運動野(M1)や運動前野など)から発生する皮質脊髄路は両半球間の顕著な相互作用を伴う随意運動機能を制御する主要な下行性運動経路です。脳卒中後の一部の患者では,非麻痺側の手の筋肉を収縮し活性させると、病気によって影響を受けた運動皮質の活性化が高まります(交差性のファシリテーション)が、患者の運動機能の状態との関連性は不明です。
●本研究では、交差性の麻痺側の機能促進(facilitation)が、脳卒中後の患側上肢の運動状態と関連するかどうかを検討しました。
方法
●脳卒中片麻痺患者58名からデータを収集した。
●運動状態の評価にはFugl-Meyer assessment of upper extremity(FMA-UE)を用いた。
●運動誘発電位(MEP)は、安静時、非麻痺側の短母指外転筋の筋活動、非麻痺側の前脛骨筋の筋活動の3条件で、麻痺側の前脛骨筋から誘発した。
結果
●結果は58名のうち28名では、安静時に麻痺側の短母指外転筋からMEPが誘発され、これらの参加者は非麻痺側の収縮時にも交差性のファシリテーションを示しました。安静時に麻痺側の手の筋にMEPが見られた脳卒中患者は、MEPが見られなかった患者に比べてFMA-UEスコアが高かったです。
●一部の参加者では、安静時にMEPが誘発されなくても、非麻痺側の筋収縮によって麻痺側の手の筋肉のMEPが増強されました。麻痺側の手筋の交差性のファシリテーションの程度は、麻痺側上肢の運動機能のレベルと相関しており、FMA-UEスコアは交差性のファシリテーションの有無を分類することができました。
●FMA-UEスコアは、短母指外転筋の課題中の交差性のファシリテーションの程度および前脛骨筋課題中の交差性のファシリテーションの程度と正の相関がありました。
私見・明日への臨床アイデア
●FMAのスコアが高いほど、非麻痺側の強化を図ることによっても麻痺側の運動機能が促進されることが示唆された。 非麻痺側を用いて麻痺側を強化するトレーニングをCross Educationというが、患者の麻痺側の機能強化の一つの視点として臨床に明日から取り入れてみたいと思った。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
併せて読みたい【cross education、非麻痺側】関連論文
Vol.456.非麻痺側トレーニングが麻痺側同部位を強化する!?脳卒中患者の手関節背屈筋に対するCross Educationの効果
Vol.427 非麻痺側へのインソール挿入で麻痺側の荷重量が増大する?berg balance scaleバーグバランススケールなどを用いた慢性期脳卒中患者の非麻痺側のバランス
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)