Vol.620.【リスク管理】初発の脳梗塞と高齢者の心大血管疾患の合併の関係性
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カテゴリー
タイトル
●初発の脳梗塞と高齢者の心大血管疾患発症のリスクの関係性
●原著はFirst-ever ischemic stroke and increased risk of incident heart disease in older adultsこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●若い療法士を指導する立場として、リスク管理に関わる学びを継続的に行おうと思い学習の一助として本論文に至る。
内 容
背景
●急性期脳卒中患者の心血管の合併症は、共存する血管危険因子、既往の心疾患、心筋の酸素需要の一過性の増加などの影響を受けやすいことが提唱されている。例えば、脳卒中後に交感神経系の緊張が高まったり、副交感神経の駆動力が低下したりすると、冠動脈ストレスが生じ、心筋の酸素需要が一過性に増加することがあります。しかし、脳卒中後の心筋損傷や機能障害は、神経系を介した非虚血性メカニズムによっても引き起こされることが示唆されています。
●脳卒中後の心臓関連の合併症はよく見られます。その原因が、元々有する危険因子や既往の心疾患等にあるのか、それとも脳卒中に伴う心筋・冠動脈の傷害にあるのかは不明です。本研究では心疾患の既往歴のない患者において、初発の脳梗塞が心大血管の合併の発症リスクの増加と関連するという仮説を検証しました。
方法
●このコホート研究では、2002 年から2012 年にかけてオンタリオ州に居住し、66 歳以上で心大血管疾患の既往がない人を対象とした。
●初発の脳梗塞の21931人の患者と脳卒中を有さない71696人の傾向が一致した人の間で、心筋梗塞、不安定狭心症、うっ血性心不全、冠動脈疾患、冠動脈血行再建術、心血管死亡と定義される主要な心大血管イベント(MACE)の発生リスクを1年間で比較しました。
結果
●初発の脳梗塞は偶発的な主要な心大血管イベント(MACE)のリスクの増加と独立して関連していました。
図引用元:First-ever ischemic stroke and increased risk of incident heart disease in older adults
●リスクは最初の30日間で最も高く、25倍に達しました。その後、31日から90日は5倍、91日から365日は2倍のリスクが続きました。この関連性は3年後も有意でした。補足的な説明として、脳卒中に伴う心筋および微小血管の冠動脈損傷が挙げられる。
●この関連性が、脳卒中に伴う心筋梗塞、既存の潜在的な心血管疾患、あるいはその両方によって説明されるかどうかは不明である。
私見・明日への臨床アイデア
●発症後30日は血管系のイベントが発症しやすいことが示唆され、より循環系のリスク管理や患者の些細な変化の観察が重要であると思われる。逆に心房細動等による血流の淀みから脳梗塞(心源性脳梗塞)が発症しやすく、抗凝固療法などで対応する場合が多い。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)