【2022年版】脳卒中患者のつまずき/転倒時のバランス反応の特徴 リハビリ論文サマリー
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タイトル
●慢性期脳卒中患者のつまずいた際のReactive Balanceについて
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●徐々に冬場に近づき、今後路面凍結時や雪面での歩行の獲得も必要となってくる。それにあたって、スリップ時に関する勉強をしようと思い本論文を読むに至った。
内 容
背景
●効果的な代償的ステッピング反応は、突然の大きな外乱によりバランスを崩した際に転倒を防ぐための最初の防衛線です。しかし、脳卒中患者の転倒リスクの増大に関連する生体力学的な要因は明確に十分理解されているとは言えません。
●脳卒中後の感覚と運動の相互的な能力の障害(バランスの障害)は、患者を突然の外乱による転倒リスクを生じることが知られています。この研究の目的は立脚時の突然のスリップのような外乱が生じたときの慢性期脳卒中患者の転倒リスクのメカニズムを調べることでした。
方法
●脳卒中患者14人、年齢を一致させた被験者(対照群:AC群)、および14人の若い被験者(対照群:YC群)を大きな前向き姿勢の摂動(外乱)を与えました。
●姿勢の安定性は最初のステップのリフトオフ(LO)とタッチダウン(TD)でのBOSに対する重心(COM)の位置(XCOM / BOS)と速度(ẊCOM/ BOS)として計算されました。
結果
●すべての参加者は後方にバランスを崩し、脳卒中患者の71%が転倒しましたが、対照群(ACおよびYC群)では転倒しませんでした。
●最初のステップのリフトオフではXCOM / BOSとẊCOM/ BOSの群間の違いは見られませんでした。ただし、最初のステップタッチダウンでは、脳卒中群は対照群と比較して、有意に後方のXCOM / BOSと後方のẊCOM/ BOSを有しました。また、脳卒中患者はステップ時の垂直性の支持力の低下を示しました。
●2番目のステップのタッチダウンでは、脳卒中患者はACグループと比較して、さらに不安定でした(より後方のXCOM / BOSおよび後方のẊCOM/ BOS)。
●さらに、脳卒中群は対照群と比較して、より短いステップ長および遅延したステップ開始でより多くのステップを必要としました。
●これらの結果は、脳卒中患者が健康対照群とは異なり、1つまたは複数の代償的ステップで姿勢の安定性を取り戻すことができないことを示唆しています。そのような反応は、非効率的な代償的ステッピングと垂直性の支持能力の低下に起因するより大きな転倒リスクにさらす可能性があります。したがって、転倒予防のための治療的介入は、反応性ステッピングと四肢の支持能力の両方の改善に焦点を当てる必要があります。
私見・明日への臨床アイデア
●脳卒中患者や高齢者では、足関節や股関節を利用したcounter activityでの姿勢制御が苦手となりやすい。転倒しそうになった場合は、反射的な対応が出来ず、低重心となり、体を固めるような対応となりやすい。練習していない動きは組織だった反応が体に備わっておらず、咄嗟に反応できない可能性がある。ただ歩行するだけでなく、転倒場面を予測し、転倒場面の練習も必要であると思われる。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)