上肢における中枢と末梢の筋活動の関係性とは??脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー|脳卒中 上肢
タイトル|脳卒中片麻痺者の随意的等尺性手指屈曲・伸展における近位上肢からの感覚フィードバックの影響
Effect of sensory feedback from the proximal upper limb on voluntary isometric finger flexion and extension in hemiparetic stroke subjects←(クリックにてPubMedへ) Hoffmann G:J Neurophysiol. 2011 Nov;106(5):2546-56
論文内容
目 的
●脳卒中片麻痺者の麻痺側上肢の随意的末梢筋活動における近位の感覚フィードバックの影響と近位筋活動における随意的末梢筋活動の影響の可能性について調査
対象・方法
●脳卒中対象者(10人)と神経学的既往のない健常者(10人)に対して,それぞれ2種類の静的な上肢姿勢と上肢への電気刺激(上腕二頭筋&三頭筋長頭)の3条件下で,手指MP関節の最大随意的等尺性屈曲・伸展を実施 ●最大MPトルク(MP屈曲orMP伸展)と上肢におけるターゲット筋(浅指屈筋or総指伸筋)と非ターゲット筋をパラメータとして定量化
結 果
●Hoffmannらは脳卒中後のMPの伸張反射における過去の研究から,脳卒中者は上肢肢位や電気刺激,また非ターゲット筋の活動を増加させることによって,随意的なMPトルクの産生調節を示すことを期待していた
●姿勢1(肘屈曲・肩Neutral位)は,姿勢2(肘伸展・肩屈曲位)よりも脳卒中者のMP屈曲において大きな筋活動結果をもたらした
●Fig1:脳卒中者と健常者におけるMP屈曲・伸展の上肢肢位による影響
●脳卒中者では,姿勢1でMP屈曲時に非ターゲット上肢筋の屈曲活動に大きな影響を及ぼし,MP伸展時には肘屈曲・伸展活動に大きな影響を与えた
●Fig2:脳卒中者と健常者におけるMP屈曲・伸展時の筋活動(9つ)の上肢肢位による違い
●脳卒中者は,健常者よりもMP屈曲時における肘屈曲の筋活動とMP伸展時における肘屈曲・伸展の筋活動に大きな影響を示した
●Fig3:MP屈曲・伸展時におけるターゲット筋および非ターゲット筋間の脳卒中者と健常者での筋活動の違い
出典(図いずれも):Hoffmann G.2011より一部修正・引用←クリックにて原著へ ●電気刺激は脳卒中者と健常者のどちらにおいてもMP屈曲・伸展に影響を及ばさなかった
まとめ|脳卒中片麻痺者の随意的な等尺性手指屈曲・伸展における近位上肢からの感覚フィードバックの影響
●静的な上肢肢位によっては,脳卒中後の麻痺側上肢における随意的な末梢の筋活動とそれに付随する筋活動を調整することができる可能性を示唆
明日への臨床アイデア・感想
●脳卒中者における上肢肢位のみでなく,上肢中枢部と末梢部での筋活動動態がどのような関係性で成り立っているのかを考えさせてくれる知見
●姿勢の違いからみた場合,手指屈曲ではBiceps&Tricepsの筋活動を効率的に使用できずに末梢のFlexor機能も低下している.また,EDC(総指伸筋)での過活動も見受けられる.手指伸展においてはEDCとtricepsの機能的な連結ではなく,上肢筋でのTotalな同時収縮での代償と感じた.
●健常者と比較して,脳卒中者では手指屈曲時にFDS(浅指屈筋)の低下とEDC&腕撓骨筋の増加に有意差を認め,手指伸展時にはFDS&FCU(尺側手根屈筋)&Triceps&PM(大胸筋)の増加に有意差を認めた
●このStudyでは姿勢1・2いずれにしても上肢の質量を除重した状態での末梢の筋活動動態をみている.そんな状況下でも前腕筋群の過活動が認められ,末梢の筋活動を不安定にさせているのでは?と感じる
●抗重力的な動作場面でのこの筋活動パターンは一層強化されることが考えられ,このパターンを回避するにはどうするのか??を健常者データと比較しながらリーズニングするのに有効な情報となるかもしれない.
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
上肢のハンドリングに役立つ動画
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)