vol.18: 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー: 身体の垂直感覚の構築と更新に必要なのは?? – 脳卒中/神経系 自費リハビリ施設 東京 | STROKE LAB
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vol.18: 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー: 身体の垂直感覚の構築と更新に必要なのは??

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カテゴリー

脳科学系  
 
 
 

タイトル

垂直感覚の構築と更新のための内部モデル Humans use internal models to construct and update a sense of verticality←Pubmedへ Barra J:Brain.2010
 
 
 

内容

概 要

●内部モデルは,感覚処理・感覚統合および運動制御を提供している.
 
●前庭覚と体性感覚を組み合わせることにより,垂直感を構築・更新する一方法となる可能性を示唆.
 
●この報告では,後外側視床が重要な役割を担っている前庭覚と体性感覚の合成を明らかにしている.
 
●後外側視床は,内部モデルと垂直知覚の神経基盤生成の主要な性質に対応する.
 
●体性感覚情報が,垂直感の内部モデルを構築し,更新している.
 
 
 

方 法

●39人の健常者
 
●体幹および下肢の完全な求心路遮断者(完全な外傷性脊髄損傷後の対麻痺者14名)
 
●半身感覚喪失者(脳卒中後片麻痺者23名)
 
●いずれかの体性感覚の損失を有する被験者に対して,自己の重力の向きを調べることで検証.
 
●暗闇の中で直立および横方向における身体傾斜時に,重力に対する垂直方向を被験者に尋ねた.
 
 
 

ポイント

●直立姿勢時に体性感覚と前庭覚の信号が一致する時,体性感覚情報は健常者であっても垂直姿勢の安定性を改善することが可能.
 
●体性感覚と前庭覚の信号が傾斜姿勢により一致しない場合,脳は他者中心かつ自己中心的な座標システムによってつくられた曖昧な方向づけの垂直感を,正確かつ安定した垂直表現に到達するために体性感覚と前庭覚の信号を合成する.
 
●体性感覚の信号は,前庭覚が損なわれていても救助的に抗重力的な信号を送る可能性を示唆している.
 
●前庭覚が損傷されていなくても,体性感覚は垂直感覚に寄与するし,前庭覚と体性感覚が統合された情報はより強力な垂直方向へ判断に繋がる.
 
キャプチャ2 出典:Barra Jら2010
 
 

<異なる姿勢での片麻痺,対麻痺,コントロール群における視覚的垂直推定値の比較> A:対麻痺者で直立時に14人・傾斜時には50人.健常者では12人が正確に一致 B:片麻痺者で直立時に23人・傾斜時には30人.健常者では27人が正確に一致 片麻痺者の麻痺側及び健常者の左肩に向かう,真の垂直とは相対する回転への視覚的垂直の対応値

 
 
 

明日への臨床アイデア・感想

●このStudyでは暗闇の中での実施のため視覚モダリティは使用されていない.
 
●片麻痺者はUprightの状態であっても垂直感覚が傾斜しており,麻痺側への傾斜でようやく内観的にMid lineへ近づいている感覚を得ていることが推察できる.このパターン化が内部モデルを変容させ,慢性的な身体的代償を構築していくと考えられる.
 
●臨床からの印象として,体性感覚からの介入(≒筋賦活)でも動作パターンが変わる方もいるが,持続しないことが多いように思う.もちろん生活環境への汎化もあるが,患者自身のawareness(気づき)のレベルになく,perception(知覚)されずに内部モデル更新までに到達していないのでは?という仮説を感じた.
 
●そのような場合のアイデアとして,前庭系が効果的に作動しやすい立位下にて体性感覚(もちろん視覚協調も)と統合を図りながらFacilitationしていくことが重要なのではないかと思う.
 
●不安定性の強めてしまう場合は,一定のモダリティに偏ってしまうため,どの姿勢でアプローチするのか?の評価も考慮する必要性はある.    
 
 

執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表

・国家資格(作業療法士)取得

・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務

・海外で3年に渡り徒手研修修了

・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆

 
 
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