【2022年最新】肩関節不安定症の治し方は?原因、評価、筋トレ、リハビリまで徹底解説
肩関節不安定症の概要
肩関節の亜脱臼に対する介入例
当施設においても肩関節の亜脱臼や不安定感を呈する方は非常に多いです。症状にお困りの方は疾患に関わらず、是非お気軽にご相談頂ければ幸いです。整形疾患等にも長年関わっている熟練のスタッフが、適切な評価の下、ご納得の行く治療効果を保証致します。
個別性に応じた治療介入を行います。治療介入の参考として是非動画をご覧ください。
肩関節不安定症の分類
Stanmore分類
この分類は、セラピストが不安定性を正しく診断し、治療の優先順位を決めるのに役立ちます。
この分類には、3つの主なサブグループ(Polar1~3)があります。
Polar1 Traumatic Structual(外傷性の構造):肩の不安定性が外傷に直接関係している。GH(肩甲上腕)関節に構造的な欠陥があることを示す証拠がある。
Polar2 Atraumatic Structual(非外傷性の構造):非外傷性である。異常な筋活動によるものでない。
Polar3 Muscle Patteming Non-Structual(筋パターン化):構造的欠損がない。異常な筋活動パターンが存在する。
肩関節不安定症と方向による分類
・前方不安定性
上腕骨頭の前方への移動が起こります。 肩関節不安定性の最も一般的な形態です。
・後方不安定性
不安定症の症例の中で、2~5%は比較的珍しいものです。通常、頭上の動作が多いスポーツ選手がこのタイプの不安定性の影響を受けやすくなります。関節包後方やローテーターカフの欠損などの構造的問題は、患者が後方不安定性を起こしやすくする可能性があります。
・多方向性不安定症(外傷性)
肩甲上腕関節の前方/後方/下方の不安定性が組み合わさった状態です。多くの場合、このタイプの不安定性は、全身的な弛緩が原因で生じます。また、極端な動作の際の反復性外傷も原因の1つです。
肩関節の中間域で痛みが生じますが、これは筋肉の活性化が変化したことが主な原因です。また、肩甲骨の位置が適切でない場合も、痛みやその他の症状を引き起こす可能性があります。
現在のところ、この疾患について病因は不明です。しかし、五十肩の病態は、遺伝的要因と環境要因の両方が重要な役割を果たしており複雑です。
臨床的に重要な解剖学的構造
肩関節の安定性は、以下のような様々な要因の組み合わせによって決まります。
静的安定化機構
静的な関節包と靭帯要素は、肩甲上腕関節の主要な安定化因子と考えられています。
図引用元:Shoulder Anatomy and Normal Variants
上関節上腕靭帯(SGHL):”内転した上腕骨の前方および下方への移動を制限します。
中関節上腕靱帯 (MGHL):外転の中〜下方の範囲で前方移動を制限します。
下関節上腕靭帯 (IGHL) :上腕骨が45度以上に外転したときに、上腕骨下部の靭帯が最も長く、前方、後方および下方の移動に対する主要な静的な制動因子となります。
関節唇:関節窩の深さを増し、安定性を最大50%向上させると報告されています。
関節内圧:関節の一致を最大化するのをサポートします。
肩関節の固有感覚メカニズムが研究され、動的筋スタビライザーの反応と密接な関係があることが判明しました。
解剖学的標本における様々な組織学的研究により、求心性神経終末(ルフィニ終末とパチニ小体、組織の力学的変化に反応する感覚受容器)の存在が確認され、それらは肩関節包複合体に分布しています。
この受動的な安定化要素の変化は、固有受容信号の伝達に障害や遅延を引き起こし、筋反応の協調を遅らせたり、エラーを引き起こしたりします。こうして動的安定化メカニズムが変化し、関節の一致性の喪失が促進されます。
動的安定化機構
動作中に上腕骨頭を関節窩に保持するのを補助します。
1. 一次
・回旋腱板筋(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲骨下筋)
・上腕二頭筋の長頭
・三角筋
2. 二次
・大円筋
・広背筋
・大胸筋
3.腱板疎部
腱板の中の棘上筋腱と肩甲下筋腱の間をさし,関節包とそれをおおっている滑液包からなります。この間が大きいと、前方で関節包を支える構造がないため、上腕骨頭の前方移動が大きくなります。
外傷性(怪我)のメカニズム
慢性的に再発する一般的な肩関節脱臼は前方脱臼です。通常、スポーツ事故や転倒時に、特に上肢が90°外転・外旋しているときに発生します。後方脱臼は、発作や衝撃、転倒などによって引き起こされることが一般的です。
例えばテニスやピッチング動作など、上腕骨が外転・伸展した状態で極端な外旋を繰り返すことにより生じます。
不安定性は、前方および下方の静的な制動力が徐々に弱まることにより生じるかもしれません。
よくある併発する特徴または原因
・バンカート病変(関節窩から
・ヒルサックス病変(骨頭の後外側に陥没骨折)
・SLAP損傷(肩関節上方関節唇損傷)
・HAGL病変(下関節上腕靱帯が上腕骨側で剥離)
・ALPSA病変(前唇骨膜周囲スリーブ裂離)
・関節包の弛緩
臨床症状
前方不安定症
・クリック感
・後部の痛み
・肩峰下または内部のインピンジメントの可能性
・不安感を確認するテスト、リロケーションテスト、前方リリーステストが陽性
・前方への関節副運動の増加
後方不安定症
・肩峰下インピンジメントまたは内部インピンジメントが疑われる
・Glenohumeral Internal Rotation Deficit(GIRD)を認めることがある。(GIRDとは投球側の肩内旋 ROM が非投球側と比較し, 不足していることと定義されている).
・痛み
・クリック感
・特に後方への関節副運動の増加
多方向不安定症
前内側部の不安定症は、最も一般的に肩全体の痛みを呈し、特定の場所を特定することはでません。
下方への不安定性を示すサルカスサイン、不安感・リロケーションテスト、前方リリーステストが陽性である。
二次的な腱板のインピンジメントは、体操、水泳、ウェイトトレーニングなどのスポーツに参加する際に起こる微小外傷で見られることがあります。
多平面における関節の副運動の増加を認めます。
レッドフラッグ
・外傷、痛み、脱力感(腱板断裂を示唆)
・腫脹、腫瘤(腫瘍・悪性腫瘍の可能性あり)
・発熱や全身疾患
・陳旧性脱臼(脱臼後に整復されずに放置された脱臼)
・関節の感染
レッドフラッグが疑われる場合、医師の受診が早期に必要かもしれません。自己判断せずに医師にご相談ください。レッドフラッグではなく、症状が寛解されない場合は、一度当施設にご相談ください。
鑑別診断
・ローテーターカフ断裂
・肩峰下インピンジメント
・内部インピンジメント
・頸椎の機械的な痛み(肩のこと)
・上腕二頭筋腱障害
・関節唇の病理学的な問題
・先天性による弛緩(例:エーラス・ダンロス症候群)
評価
病歴
既往歴:脱臼の有無にかかわらず外傷、弛緩した関節(肘、膝、親指の過伸展を考慮、Beightonスケールによる可動性の低下を評価)について聴取します。肩周辺の全体的な痛み、日常生活状況(どのような場面で症状が見られる化)の聴取などは重要です。
身体検査
全般的な静的姿勢の評価
見る方向として、前面、側面、背面の3方向から見て行きます。
その中で鎖骨の位置や肩峰の位置、筋のボリューム(例えば三角筋のボリュームなど)や肩甲骨の非対称性、上下や肩甲骨の内外旋を見ていく必要があります。肩甲骨が肩甲胸郭関節上で動くのかなど3次元で評価をしていきましょう。
全般的運動評価
全体を見る6つのポイント
①アライメント
②運動パターン
③可動性
④タイミング
⑤スピード
⑥力
⑦姿勢制御
肩甲骨の位置が非対称性の場合は痛みが出る可能性があります。その場合、後々説明する細かいテストに移っていく必要があります。
全体運動の例としては、両手を肩関節屈曲運動、外転運動、内外旋運動、肩関節の伸展運動を見ていきます。肩関節伸展時に肩甲骨が前傾や骨盤の代償運動、肩甲胸郭関節の代償運動を見て行きます。
・関節副運動テストでは不安定な方向への可動性の増加(前方、後方、多方向性)などを診ます。
・肩甲上腕関節に限らず、肩甲骨・胸郭の動きを見ることも重要です。
その他、以下のような特殊なテストも肩関節不安定症の評価に重要です。
関節弛緩性テスト:Laxity Tests
load and shift test(関節の不安定性テスト)
【検査肢位】
背臥位で行います。
仰向けに寝て肩甲骨をテーブルの上に置き、上腕骨は自由にしておきます。骨甲上腕を関節窩に荷重し、肩甲骨を前後方向に移動させます。
【目的】
このテストは、上腕骨頭の関節窩との関係性(移動量)を評価することを目的としています。
【判定基準】
この検査には多くの採点方法がありますが、最も一般的なのはホーキンス採点法です。この方法は、臨床的な根拠があるため、最も優れた方法と考えられています。ホーキンスは動きを4つのグレードに分けました。
Grade0=ほとんど動かない
Grade1=上腕骨頭が関節窩に乗り上げる
Grade2=上腕骨頭が脱臼しても自然に元に戻る
Grade3=圧力をかけても骨頭が元に戻らない
サルカスサイン
【検査肢位】
座位、立位で行います。
【方法】
①肩甲骨を固定しつつ上腕骨と肩峰下の溝を触診します。
②肘より近位を把持して下方へ引っ張ります。肩関節内外旋位でも実施します。
【判定基準】
肩峰下の隙間が2cm程あると陽性と判断されます。
陽性の場合、肩関節不安定症が疑われます。
【ポイント】
この検査時下方に手を誘導することで痛みの助長になることもありますので、検査時は注意しながら評価を実施してください。
アプリヘンジョンテスト
【検査肢位】
背臥位で実施します。
【方法】
①肩関節外転、外旋位、肘関節90°屈曲とします。
②検査者は後方から上腕骨頭を把持し、前方に圧をかけるようにします。
③この姿勢で肩関節外旋運動を行います。
【判定基準】
疼痛ではなく不安定感を訴えれば陽性となります。
陽性の場合、肩関節不安定症・反復性肩関節脱臼を疑います。
【ポイント】
肩が抜けそう、不安感があるなど陽性反応を示した方には、前方から骨頭を安定し、それで外旋運動すると不安感が消える方は肩関節の不安定感があるという判断材料となります。
その他の肩関節評価は、下記記事にて詳細にまとめておりますので、併せてご覧ください。
治療介入
医学的管理
医学的管理は、損傷のメカニズム、重症度、患者の目標などを含む個別性に応じて決まります。いくつかのケースでは、特に外傷性メカニズムの場合、関節の安定性を回復するために外科的介入が妥当とされるかもしれません。
療法士による管理
手術以外の療法士による管理はケースバイケースで異なり、各患者の特定の目標に向けたケアを個別に行う必要があります。一般的には以下のようなことが行われます。
・再発予防のための教育
・姿勢の再教育
・機能的活動時に特定の筋肉の運動制御トレーニング
(特に三角筋、ローテーターカフ筋、肩甲骨スタビライザーの筋力強化)
・肩の後方構造、大小胸筋、その他柔軟性に障害ある筋に対するストレッチ
・肩甲上腕関節、肩鎖関節、胸鎖関節、頚胸椎の可動性障害をターゲットとした徒手療法
治療は症状の段階に基づいて個別性に応じたセラピーが行われるべきです。
STROKE LABにおいて期待できること
・病院ではこだわれない、手足の繊細な動きの改善
・担当者の技術や経験年数への要求
・異常筋緊張や疼痛など可能な限りの緩和・消失
・肩の関節の可動性(副運動を含む)の改善
・肩の不安感の軽減、消失
・正常な運動パターンの回復
・日常生活動作が快適に遂行できる
・肩関節機能を局所だけでなく姿勢全体から高める
・適切な自主トレーニングの指導
STROKE LABのセラピーは「姿勢連鎖セラピー」です。肩(局所)の治療は勿論のこと、肩をより効率的に楽に動かすことができるように、全身から肩を考え治療していきます。人間の動きを追求する経験豊富なプロフェッショナルが、肩の辛いお悩みに寄り添い、解決致します。是非お気軽にご相談下さい。
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)