【0歳:3-6ヵ月】発達障害の基準と小児(こども)の診断・治療からリハビリテーションまで
発達段階の概要
以下は、乳幼児期の認知発達、運動発達、社会発達、言語発達の各段階を表したものです:
年齢範囲 | 認知発達 | 運動発達 | 社会発達 | 言語発達 |
---|---|---|---|---|
0-3ヶ月 | 音や視覚刺激に反応; 物体を目で追う | 反射運動; 頭を持ち上げる | やりとりに応じて笑う; 需要を伝えるために泣く | くーくーと声を出し、喜びの声を出す |
3-6ヶ月 | 手や口で物を探索; 親しい顔を認識 | 転がる; 支持付きで座る | 笑ったり、がなったりする; 社交的な遊びを楽しむ | 子音を含む音を出し始める |
6-9ヶ月 | 「いいえ」を理解; 自分の名前に反応 | 支持なしで座る; はいはいする | 見知らぬ人への恐怖が始まる; 特定の人を好む | 音の連続を発し、声で喜びや不満を表現 |
9-12ヶ月 | ジェスチャーや音をまねる; 正しく物を使い始める | 支持付きで立つ; 手助けで歩くかもしれない | さよならを手振りで示す; 単純な相互作用のゲーム | 「ママ」「パパ」といった簡単な言葉を話す |
1-2歳 | 簡単な指示に従う; 言葉を使い始める | 自立して歩く; 走り始める | 他の子どもと並んで遊ぶ; 共感を示す | 簡単な文を2語で組み合わせる |
2-3歳 | 馴染みのある物を名前で呼ぶ; 形や色で分類 | よく登る; スムーズに走る | 単純なごっこ遊びを始める; 順番を理解する | 短い文を話し、簡単な指示に従う |
3-4歳 | 数字を少し理解し、数えることができる; 質問が多い | 三輪車に乗る; 一方の足でホップする | 他の子どもと協力して遊ぶ; ルールを理解する | 質問をする; 4-5語の文を使う |
4-5歳 | 10以上を数えることができる; 時間の概念を理解 | スキップや片足でバランスをとる; バウンドボールをキャッチ | 他の子どもとの遊びを楽しむ; 性別に気づく | 完全な文を話し、簡単な物語を語る |
この表は、乳幼児期の発達段階を示しており、個々の子供によって差があるため、これらは一般的なガイドラインとして参考にされることをお勧めします。
3-6ヶ月を詳しく
発達障害に関する以下の内容は、一般的な発達段階の目安と比較して理解することが重要です。以下に示す各ポイントについて、具体的な説明を行います。
3-6ヶ月: 手や口で物を探索
この段階では、赤ちゃんは手や口を使って周囲の物を探索し始めます。これは感覚探査行動と呼ばれ、赤ちゃんが物の形や質感を学ぶための重要な過程です。この時期には以下のような行動が見られます。
- 物を握る、振る、掴む
- 物を口に運び、噛む、なめる
- 物に対する興味が増し、視覚と触覚を使って詳細を調べる
親しい顔を認識
赤ちゃんは親しい人の顔を認識し、反応を示すことができます。例えば、母親や父親の顔を見ると笑ったり、声を出したりします。これは社会的な絆を形成するための重要なスキルです。
転がる
この段階で、赤ちゃんは自分の体を使って転がる能力を発達させます。これは運動発達の一環であり、筋力と協調性を向上させるための重要なステップです。背中からお腹へ、またその逆に転がることが含まれます。
支持付きで座る
赤ちゃんはまだ自力で座ることは難しいですが、支えがあると座ることができます。これは脊柱と体幹の筋肉が強くなり、姿勢を保持する能力が向上していることを示します。
笑ったり、がなったりする
この時期には、赤ちゃんは笑ったり、がなったりすることが増えます。これは社会的な交流を楽しむサインであり、情緒発達の一環です。赤ちゃんは他人の声や表情に反応して、自分も笑顔を見せたり声を出したりします。
社交的な遊びを楽しむ
赤ちゃんは他の人とのやり取りを楽しみ、社交的な遊びに参加します。例えば、簡単なかくれんぼや、「いないいないばあ」などのゲームを楽しみます。これは社会性を発達させる重要な活動です。
子音を含む音を出し始める
この段階では、赤ちゃんは初期の言語発達として子音を含む音を出し始めます。例えば、「ba-ba」や「da-da」といった音を繰り返すようになります。これは後の言語発達において重要な基礎を築く行動です。
発達障害の徴候
発達障害の基準
発達障害が疑われる場合、以下のような兆候が見られることがあります。
-
感覚と探索の遅れ:
- 物を握る、掴む、振るなどの基本的な動作が難しい。
- 物体や人への興味が薄い、触覚や視覚的な探索が乏しい。
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社会的交流の欠如:
- 親しい人の顔を認識しない、社交的な反応(笑顔や声を出す)が限られる。
- 社交的な遊びに興味を示さない、参加しない。
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運動発達の遅れ:
- 転がる動作が見られない、または非常に限られている。
- 座る能力が発達しない、支えがあっても安定して座ることができない。
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言語発達の遅れ:
- 通常期待される時期に比べて笑ったり、がなったりする頻度が少ない。
- 子音を含む言葉の発声がない、言語の模倣が見られない。
これらの兆候は、発達が予想される範囲内で進まない場合に考えられるものですが、個々の子どもの発達は多様であるため、一つ一つの行動が直ちに発達障害を意味するわけではありません。専門的な評価が必要です。
3-6ヶ月を詳しく
1. 自閉症スペクトラム障害(ASD)
自閉症スペクトラム障害は、社会的コミュニケーションと相互作用の障害、限定された反復的な行動パターンが特徴です。乳幼児期には、親しい人の顔の認識や社交的な笑顔の欠如、他者との相互作用に興味を示さないなどの兆候が現れることがあります。
2. 脳性麻痺(CP)
脳の発達が原因で起こる運動機能障害を特徴とする脳性麻痺では、筋肉の協調性や筋緊張に異常が見られます。3-6ヶ月齢で注目されるのは、通常の発達段階よりも転がる動作が遅れる、座る際に支援が必要であるといった運動発達の遅れです。
3. 発達遅滞
グローバル発達遅延は、複数の発達領域(運動、言語、社会性、認知など)での進歩が通常の発達段階に比べて遅れることを指します。この診断は、具体的な原因が明らかでない場合に用いられることがあります。
4. 聴覚障害
聴覚障害のある乳幼児は、音に対する反応が著しく制限されることがあります。これは言語発達にも影響を与え、通常の発達段階で期待される「がなり声」や「子音を含む音」の発声が遅れる原因となります。
5. 知的障害
知的障害は、認知機能の遅れとともに社会的、学習的スキルの遅れを伴います。早期の段階では、興味や好奇心の低さ、社会的な相互作用の遅れなどが観察されることがあります。
リハビリテーションは?
1. 自閉症スペクトラム障害(ASD)
- 行動療法: 応用行動分析(ABA)は自閉症の子供に広く用いられる治療法で、社会的、言語的、学習スキルを教えることに焦点を当てています。
- 社会スキルトレーニング: 対人関係のスキルを向上させるためのグループセッションや活動を含みます。
- 感覚統合療法: 自閉症の子供は感覚過敏や感覚求心がある場合が多いため、これを管理するための療法が導入されることがあります。
2. 脳性麻痺(CP)
- 理学療法: 筋力を強化し、運動機能を改善するために行われます。また、適切な運動器具の使用も含まれます。
- 作業療法: 日常生活の活動(ADL)を改善するための訓練が含まれます。例えば、着替え、食事、書くことなどのスキルの獲得を支援します。
- 言語療法: コミュニケーション能力の向上を目的とし、言語の遅れがある場合に行われます。
3. 発達遅滞
- 早期介入プログラム: 乳幼児期に始めることが多く、理学療法、作業療法、言語療法を組み合わせて行います。
- 特別支援教育: 教育的なニーズに対応するために、個別の教育プラン(IEP)が作成されることがあります。
4. 聴覚障害
- 聴覚支援技術: 補聴器やコクリアインプラントの使用が含まれます。
- 言語療法: 聴覚障害児のための特別な言語療法が提供され、手話や口話法などが教えられます。
5. 知的障害
- 特別教育: 学習と発達のニーズに応じた教育が行われます。
- 生活スキルトレーニング: 自立した生活を送るための基本的な生活スキルが教えられます。
自宅でできることは?
1. 感覚遊び
感覚遊びは子供の感覚発達を刺激し、新しい感覚に慣れるのを助けることができます。例えば、さまざまな質感のおもちゃや材料(ゲルマット、砂、粘土など)を使った遊びを導入することができます。
2. 日常生活スキルの練習
作業療法の一環として、子供が自立して日常生活を送れるよう支援します。食事の準備、着替え、整理整頓など、基本的な家事活動に子供を参加させることで、これらのスキルを自然に練習することができます。
3. 読み聞かせと言語遊び
言語能力の発達を促進するために、日常的に読み聞かせを行い、簡単な歌やリズム遊びを取り入れることが効果的です。これにより、言語の理解と発話の基礎が育まれます。
4. 社会的スキルの発達
家族や友人との遊びを通じて、ターンテイキング、感情の表現、協力することの重要性など、社会的スキルを育てます。例えば、「いないいないばあ」などの単純なインタラクティブなゲームが有効です。
5. 身体活動と運動
子供の身体的発達と協調性を支援するために、簡単な運動や身体活動を取り入れることが重要です。家の中や庭で安全に行えるボール遊び、バランスゲーム、シンプルなヨガポーズなどが良いでしょう。
6. 音楽とリズム活動
音楽を使った活動は、言語のリズム感覚を発達させるとともに、運動能力や情緒表現の発達にも効果的です。家庭で簡単に行える楽器の演奏や、音楽に合わせて体を動かす活動を取り入れましょう。
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)