【2024年版】副神経麻痺の原因・診断・治療・リハビリテーション・自主トレーニングまで解説 – 脳卒中/神経系 自費リハビリ施設 東京 | STROKE LAB
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【2024年版】副神経麻痺の原因・診断・治療・リハビリテーション・自主トレーニングまで解説

診断からリハビリテーションまでの流れ


登場人物

  • セラピスト:金子先生
  • 患者:丸山さん

場面 1:診察室での初診

丸山さん:先月、車の事故に遭って以来、肩と首に痛みが続いています。特に右肩を上げるのが難しいです。

金子先生:それは大変でしたね。まず、肩と首の動きを確認させてください。右側の僧帽筋と胸鎖乳突筋が弱っているようです。副神経に問題があるかもしれません。

金子先生:MRIと神経伝導速度検査を受けてもらいましょう。これにより、神経の損傷部位や程度を詳しく調べることができます。


場面 2:検査結果の説明

金子先生:検査の結果、副神経が損傷していることが分かりました。特に脊髄副神経部分が影響を受けています。この神経は胸鎖乳突筋と僧帽筋を支配しているため、肩の痛みや動きの制限が生じています。

丸山さん:それは治るのでしょうか?

金子先生:幸い、早期にリハビリテーションを開始することで、機能の回復が期待できます。まずは保存的治療として、理学療法と薬物療法を行います。


場面 3:リハビリテーションの開始

金子先生:今日は肩甲骨周囲の筋力強化エクササイズを行います。まず、肩甲骨の安定性を高めるために、低負荷のエクササイズから始めましょう。

丸山さん:わかりました。具体的にはどんな運動ですか?

金子先生:このチューブを使って、肩甲骨を寄せる動きを繰り返します。また、胸鎖乳突筋のストレッチも行います。頭をゆっくりと左右に回してみましょう。

丸山さん:少し痛みますが、やってみます。


場面 4:リハビリの進展

金子先生:リハビリを始めて3週間が経ちましたが、肩の動きはどうですか?

丸山さん:だいぶ良くなってきました。肩を上げるのが少し楽になりました。

金子先生:それは素晴らしいですね。次は作業療法士と一緒に日常生活動作の指導を行います。具体的には、食事や着替えの動作を再学習し、独立した生活をサポートします。

丸山さん:ありがとうございます。頑張ります。


場面 5:日常生活指導

金子先生:今日は、作業療法士の佐藤さんが日常生活動作の指導を行います。佐藤さん、お願いします。

佐藤さん:こんにちは、丸山さん。今日は食事の際の動作を見直しましょう。肩の動きを考慮して、適切な姿勢と動作を練習します。

丸山さん:よろしくお願いします。


場面 6:最終診察

金子先生:丸山さん、リハビリを続けて2ヶ月が経ちましたが、肩と首の調子はいかがですか?

丸山さん:おかげさまで、ほとんど痛みもなく、日常生活も問題なく過ごせるようになりました。

金子先生:それは良かったです。今後も定期的な運動を続けて、筋力を維持してください。何か問題があれば、いつでも相談に来てください。

丸山さん:本当にありがとうございました。これからも頑張ります。


 

副神経の解剖と機能

副神経の走行と支配筋

副神経(Accessory nerve、XI脳神経)は、脊髄副神経と脳幹副神経の二つの根から構成されています。脊髄副神経は頸髄のC1からC5/C6レベルから起こり、脳幹副神経は延髄から起こります。これらの根が合流し、頸静脈孔を通過して頭蓋外に出ます。

副神経は、胸鎖乳突筋(sternocleidomastoid muscle)と僧帽筋(trapezius muscle)を支配します。胸鎖乳突筋は頭部の回旋や側屈に関与し、僧帽筋は肩甲骨の挙上や内転に重要な役割を果たします。

正常な機能と役割

正常な副神経の機能は、胸鎖乳突筋と僧帽筋の適切な動きを維持することです。胸鎖乳突筋が正常に機能すると、頭部を左右に回すことができ、首の側屈が可能です。僧帽筋が正常に働くことで、肩甲骨の動きがスムーズになり、肩を上げたり、腕を持ち上げる動作が円滑に行えます。
引用:https://teachmeanatomy.info/head/cranial-nerves/accessory/

  1. Cranial part of CN XI (副神経の脳幹部)

    • 副神経の脳幹部は延髄から起こり、喉頭筋の一部を支配します。脳幹部は迷走神経(CN X)とともに機能する部分があります。
  2. Spinal part of CN XI (副神経の脊髄部)

    • 副神経の脊髄部は、頸髄のC1からC5/C6レベルから起こります。この脊髄部は、頸静脈孔を通って頭蓋外に出ます。脊髄部は、胸鎖乳突筋(Sternocleidomastoid muscle)と僧帽筋(Trapezius muscle)を支配します。
  3. Sternocleidomastoid (胸鎖乳突筋)

    • 胸鎖乳突筋は副神経の脊髄部によって支配され、頭部の回旋や側屈に関与します。頭部を左右に回したり、前後に動かす役割を担っています。
  4. Trapezius (僧帽筋)

    • 僧帽筋も副神経の脊髄部によって支配されます。この筋肉は肩甲骨の挙上や内転に関与し、肩を上げる動作や肩甲骨を安定させる役割を果たします。
  5. Vagus nerve (迷走神経)

    • 迷走神経(CN X)は、副神経とともに喉頭筋の一部を支配します。迷走神経は多くの臓器に枝を送り、心臓や消化器系の機能を調節する重要な神経です。

副神経麻痺の原因

外傷や手術による損傷

副神経麻痺の最も一般的な原因の一つは、外傷や手術による損傷です。特に頸部の外科手術(例:頸部リンパ節摘出術、腫瘍摘出術など)や外傷(例:頸部の切創、交通事故など)は副神経を直接損傷するリスクが高いです。これにより、副神経が損傷されると、支配筋の機能が低下し、肩の動きや頭の回旋が困難になります。


引用:https://entokey.com/retropharyngeal-neck-dissection/

  1. Stylohyoid m. (茎突舌骨筋)
  2. 茎突舌骨筋は、顎の茎突から舌骨に付着する筋肉で、嚥下時に舌骨を引き上げる役割を果たします。
  3. Ant. belly of digastric m. (顎二腹筋の前腹)
  4. 顎二腹筋は二つの腹を持ち、前腹は下顎骨から舌骨に付着しています。この筋肉は、嚥下と舌骨の安定に関与します。
  5. Post. belly of digastric m. (顎二腹筋の後腹)
  6. 顎二腹筋の後腹は、乳突突起から舌骨に付着し、前腹と共に舌骨を引き上げ、下顎を引き下げる役割を果たします。
  7. Sternocleidomastoid m. (胸鎖乳突筋)
  8. 胸鎖乳突筋は、胸骨と鎖骨から起こり、側頭骨の乳突に付着します。この筋肉は、頭部を回旋させたり、側屈させたりする役割を持ちます。
  9. IJV (内頸静脈)
  10. 内頸静脈は、頭蓋内から血液を戻す大きな静脈で、頸部の深部に位置します。
  11. ICA (内頸動脈)
  12. 内頸動脈は、脳に酸素と栄養を供給する主要な動脈の一つで、首の深部を走行します。
  13. CN XII (舌下神経)
  14. 舌下神経は、舌の運動を制御する神経で、舌筋に分布しています。この神経は、発話や嚥下に重要な役割を果たします。

腫瘍や炎症

副神経麻痺は、腫瘍や炎症が原因で発生することもあります。頭蓋底や頸部に発生する腫瘍が副神経を圧迫すると、神経機能が障害されます。また、リンパ節の腫脹や慢性炎症(例:リンパ節炎、サルコイドーシスなど)も神経に影響を与える可能性があります。

その他の原因(感染症、自己免疫疾患など)

副神経麻痺のその他の原因としては、感染症や自己免疫疾患があります。例として、ボツリヌス中毒やジフテリアなどの感染症は神経毒素が副神経に影響を与えることがあります。また、自己免疫疾患(例:多発性硬化症、ギラン・バレー症候群など)も副神経を含む脳神経に炎症を引き起こし、麻痺を生じさせることがあります。

これらの原因により、副神経麻痺が発生した場合、早期の診断と適切な治療が重要です。外傷や手術による損傷では、神経修復術やリハビリテーションが必要となることが多く、腫瘍や炎症の場合は根本原因の治療が優先されます。感染症や自己免疫疾患による麻痺では、抗生物質や免疫抑制剤を用いた治療が行われることがあります。

副神経麻痺の臨床症状と診断は?

症状(肩の痛み、肩甲骨の位置異常、上肢の運動障害など)

副神経麻痺の主な症状には以下のようなものがあります。

  1. 肩の痛み:

    • 副神経麻痺によって支配される筋肉が弱くなると、肩に痛みが生じることがあります。この痛みは特に肩甲骨周囲や肩関節周囲に集中します。
  2. 肩甲骨の位置異常:

    • 僧帽筋の麻痺により、肩甲骨が正常な位置からずれ、肩甲骨の挙上や内転が困難になります。これにより、肩甲骨が「翼状肩甲(winged scapula)」と呼ばれる異常な位置に見られることがあります。
  3. 上肢の運動障害:

    • 胸鎖乳突筋および僧帽筋の麻痺によって、腕の挙上や頭部の回旋が困難になります。この結果、日常生活動作(ADL)の中での腕や肩の使用が制限されることがあります。

診断方法(身体診察、画像検査、神経伝導速度検査など)

  1. 身体診察:

    • 医師は、患者の肩甲骨の位置、肩関節の動き、筋力を評価します。肩甲骨の翼状変形や肩の動きの制限を確認します。また、胸鎖乳突筋の筋力低下を調べるために、頭部の回旋や側屈のテストを行います。
  2. 画像検査:

    • MRI(磁気共鳴画像法)やCT(コンピュータ断層撮影)を用いて、神経の損傷部位や圧迫の有無を確認します。これにより、腫瘍や炎症の有無を評価することができます。
  3. 神経伝導速度検査:

    • 神経伝導速度(NCV)検査や筋電図(EMG)を使用して、副神経の機能を評価します。この検査では、神経の伝導速度を測定し、神経の損傷や異常を特定します。

副神経麻痺の治療とリハビリテーション

保存的治療(薬物療法、理学療法など)

  1. 薬物療法:

    • 痛みや炎症を軽減するために、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)や筋弛緩薬が処方されることがあります。これにより、痛みの管理が行われます。
  2. 理学療法:

    • 理学療法士による筋力強化やストレッチングのプログラムが行われます。具体的には、肩甲骨周囲の筋肉を強化し、肩の可動域を改善するためのエクササイズが含まれます。また、姿勢の改善や日常生活動作の指導も行われます。

外科的治療(神経修復術、神経移行術など)

  1. 神経修復術:

    • 神経が物理的に損傷されている場合、神経修復術が検討されます。この手術では、損傷した神経を再接続し、神経の再生を促進します。
  2. 神経移行術:

    • 深刻な神経損傷がある場合、他の健康な神経からの移行術が行われることがあります。この手術では、他の神経から新しい神経を移植して、損傷した副神経の機能を補完します。

リハビリテーションプログラム(運動療法、作業療法、日常生活指導など)

  1. 運動療法:

    • リハビリテーションの一環として、特定の運動療法が行われます。これには、肩甲骨の安定性を高めるためのエクササイズや、上肢の筋力を回復させるためのトレーニングが含まれます。
  2. 作業療法:

    • 作業療法士による日常生活動作(ADL)の指導が行われます。具体的には、食事、着替え、洗面などの動作を再学習し、独立した生活をサポートします。
  3. 日常生活指導:

    • 患者の日常生活を改善するための具体的なアドバイスが提供されます。これには、補助具の使用方法や姿勢の改善、日常生活での動作の工夫などが含まれます。

副神経麻痺の治療とリハビリテーションは、個々の患者の状態や原因に応じてカスタマイズされるべきです。コメディカルスタッフは、患者の全体的な健康と生活の質を向上させるために、多職種連携を図りながらサポートする役割を担っています。

自宅でできる自主トレーニング

目的と準備

副神経麻痺のリハビリテーションにおける運動療法の目的は、肩甲骨周囲の筋力強化、肩の可動域の改善、および日常生活動作の回復です。運動療法を実施する前に、患者と一緒に以下の準備を行います。

  1. 安全な環境の確保:

    • 周囲に障害物がないか確認し、安全な場所で運動を行う。
    • 患者がリラックスできるように、快適な服装を推奨。
  2. ウォームアップ:

    • 軽いストレッチやウォーキングで筋肉を温め、運動に備える。

運動療法のステップ

1. 肩甲骨の安定化エクササイズ

エクササイズ1: 肩甲骨の挙上(シュラッグ)

  • 手順:

    1. 患者は直立し、両腕を自然に体の横に下ろします。
    2. 肩をゆっくりと耳に近づけるように挙上します。
    3. 挙上した状態で3秒間保持し、ゆっくりと元の位置に戻します。
    4. これを10回繰り返します。
  • 指導ポイント:

    • 肩をすくめる際に首の筋肉に力が入らないように注意する。
    • 動作はゆっくりと行い、急激な動きを避ける。

エクササイズ2: 肩甲骨の内転(スクイーズ)

  • 手順:

    1. 患者は直立し、両腕を自然に体の横に下ろします。
    2. 肩甲骨を背骨に向かって引き寄せるように内転させます。
    3. 3秒間保持し、ゆっくりと元の位置に戻します。
    4. これを10回繰り返します。
  • 指導ポイント:

    • 肩甲骨を引き寄せる際に、肩が上がらないように注意する。
    • 背中の中央で肩甲骨が触れ合う感覚を意識する。
2. 上肢の可動域改善エクササイズ

エクササイズ1: 壁登り(ウォールクロール)

  • 手順:

    1. 患者は壁の前に立ち、指先を壁に軽く触れさせます。
    2. 指先を壁を伝いながら、ゆっくりと腕を上に伸ばします。
    3. 可能な限り高く伸ばしたら、ゆっくりと元の位置に戻します。
    4. これを左右各10回繰り返します。
  • 指導ポイント:

    • 動作中に痛みがない範囲で行う。
    • 背筋を伸ばし、体全体が安定していることを確認する。

エクササイズ2: スティックエクササイズ

  • 手順:

    1. 患者は直立し、棒やタオルを両手で持ちます。
    2. 両腕を前方に伸ばし、棒をゆっくりと頭上に持ち上げます。
    3. 可能な限り高く持ち上げたら、ゆっくりと元の位置に戻します。
    4. これを10回繰り返します。
  • 指導ポイント:

    • 肩がすくまないように注意する。
    • 動作はゆっくりと行い、スムーズに動くようにする。
3. 筋力強化エクササイズ

エクササイズ1: エルボーフレクション(肘の屈曲)

  • 手順:

    1. 患者は軽いダンベル(または水の入ったペットボトル)を持ちます。
    2. 片方の腕を体の横に下ろし、肘を曲げてダンベルを肩に向かって持ち上げます。
    3. 3秒間保持し、ゆっくりと元の位置に戻します。
    4. これを左右各10回繰り返します。
  • 指導ポイント:

    • 背中が丸まらないように、姿勢を保持する。
    • 重さは無理のない範囲で調整する。

エクササイズ2: サイドレイズ(側方挙上)

  • 手順:

    1. 患者は軽いダンベルを両手に持ちます。
    2. 両腕を体の横に下ろし、ゆっくりと横に持ち上げます。
    3. 肩の高さまで持ち上げたら、ゆっくりと元の位置に戻します。
    4. これを10回繰り返します。
  • 指導ポイント:

    • 肩がすくまないように注意する。
    • 動作はゆっくりと行い、スムーズに動くようにする。

運動療法の終了とフォローアップ

  1. クールダウン:

    • 軽いストレッチや深呼吸を行い、筋肉をリラックスさせます。
    • 運動後の筋肉の緊張を和らげるために、ストレッチを5分間程度行います。
  2. 経過観察:

    • 運動後の痛みや違和感がないかを確認します。
    • 次回のセッションに向けて、患者のフィードバックを聞き、運動プログラムを調整します。

副神経麻痺の運動療法は、患者の状態や進行状況に応じて柔軟に対応することが重要です。患者の安全と快適さを最優先に考えながら、継続的なサポートを行ってください。

エビデンス

  1. Management of Spinal Accessory Nerve Palsy:

    • この研究は、副神経麻痺に対する手術介入の戦略とその成果について述べています。特に神経移植や神経移行術の有効性について検討しており、手術後の肩機能の改善や患者のQOLの向上が報告されています​ (Oxford Academic)​。
  2. Accessory Nerve Palsies:

    • この論文は、副神経麻痺の原因、症状、診断方法、および治療法を総合的にレビューしています。副神経麻痺は、特に頸部手術の合併症として発生することが多く、その治療には保存的療法から手術まで多岐にわたるアプローチが必要であることが強調されています​ (Practical Neurology)​。
  3. Physical Therapy for Spinal Accessory Nerve Injury:

    • この研究は、副神経麻痺に対する理学療法の効果を検討しています。具体的には、肩甲骨の安定性を高めるためのエクササイズや、肩の可動域を改善するためのリハビリテーションプログラムが紹介されています。これにより、患者の運動機能の回復が期待できます​ (Oxford Academic)​。
  4. Operative Treatment of Spinal Accessory Nerve Palsy:

    • 手術による副神経麻痺の治療法について詳述した論文です。神経修復術や神経移行術の技術的側面とその効果について、具体的な手術例を交えて説明しています​ (Oxford Academic)​。

これらの論文は、副神経麻痺の理解と治療に役立つ情報を提供しています。詳細については、各論文を参照してください。

 

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