【2024年版】失語症•吃音のリハビリに必須!ブローカ野の解剖学的理解と治療法 – 脳卒中/神経系 自費リハビリ施設 東京 | STROKE LAB
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【2024年版】失語症•吃音のリハビリに必須!ブローカ野の解剖学的理解と治療法

はじめに

本日はブローカ野について解説したいと思います。この動画は「リハビリテーションのための臨床脳科学シリーズ」となります。

これまで発売した姉妹本の「脳卒中の機能回復」「脳卒中の動作分析」などと併用して勉強していただくと、より脳神経系に強い専門家を目指せるかと思います。ぜひご覧ください。

内容は、STROKE LAB代表の金子唯史が執筆する 2024年秋ごろ医学書院より発売の「脳の機能解剖とリハビリテーション」から
以下の内容を元に具体的トレーニングを呈示します。


 
 

動画一覧は写真をクリック

 
 
それではまず解剖学的解説からいってみましょう!

 

ブローカ野とは?

 

解剖学的解説

ブローカ野の位置と構成

ブローカ野は、一次運動野の前、下前頭溝の下に位置し、主に弁蓋部と三角部の2つの部分で構成されています。これらの領域は、言語理解と構文処理、音声の計画、開始、明瞭化など、言語処理のさまざまな側面に関与しています。

血液供給

ブローカ野への血液供給は、下前頭回を灌流する中大脳動脈(MCA)の枝から供給されます。MCAは内頸動脈から分岐する主要な動脈で、前側頭動脈、中側頭動脈、側頭後頭動脈、角回動脈、中心前動脈、中心動脈などの小さな動脈に分岐します。


ブローカ野に関連する神経経路

弓状束を介したウェルニッケ野との接続

ブローカ野は、脳の優位半球の上側頭回の後部に位置するウェルニッケ野と複雑に接続されています。弓状束はこの接続を促進する重要な経路であり、言語理解(主にウェルニッケ野によって制御される)と音声生成(ブローカ野によって制御される)の統合を可能にします。この経路は、ウェルニッケ野によって処理された言語の明瞭な生成に不可欠です。

運動皮質への接続

ブローカ野は運動皮質、特に顔、顎、舌、喉の筋肉を制御する領域に直接接続されています。この接続は、発話に必要な筋肉の動きの調整やタイミングの計画と実行に重要な役割を果たします。

吃音における役割

最近の研究では、ブローカ野の神経回路と小児の吃音との関連が示唆されています。ブローカ野と運動領域を含む脳の他の部分をつなぐ神経経路の混乱が、吃音の一因となっている可能性があります。


病態像

ブローカ失語症(運動性失語症)

ブローカ失語症は、脳卒中、脳損傷、または腫瘍によるブローカ野の損傷によって引き起こされることが多い状態です。この病態の患者は通常、言語理解力は保たれていますが、発語や流暢さに問題を抱えます。

主な症状

  • 言葉を明瞭に表現することが難しい(発話が遅く、努力を要し、流暢さに欠ける)。
  • 接続詞や前置詞などの文法的に重要な小さな単語の省略。
  • 語順や文章構成の障害。
  • 場合によっては、書字能力にも影響を及ぼす。

 

画像読解:ブローカ野の位置と特徴

ブローカ野の位置

ブローカ野は、前頭葉の優位半球、すなわち右利きの人にとって左半球に位置します。この領域は、音声生成と言語処理において重要な役割を果たします。

前頭葉の位置

前頭葉は、額のすぐ後ろに位置する脳の領域であり、ブローカ野の主要なランドマークの一つです。前頭葉は高次認知機能を司る中心的な領域であり、ブローカ野がここに位置することは、言語処理におけるその役割を強調しています。

下前頭回

ブローカ野は下前頭回の後部に位置しています。下前頭回は脳の表面に見られる顕著な隆起で、弁蓋部、三角部、眼窩部の3つの部分に分かれます。特に、ブローカ野は弁蓋部と三角部に含まれており、これらの領域が言語生成において重要です。

外側溝(シルビウス裂)

外側溝は、前頭葉と側頭葉を隔てる顕著な溝で、脳の解剖学的ランドマークとして広く利用されます。ブローカ野は、この溝のすぐ上に位置しています。外側溝は、ほとんどの脳画像スキャンで容易に識別できるため、ブローカ野の位置を特定する際の重要な目印となります。

中心前回の近接性

中心前回は一次運動野であり、ブローカ野のすぐ後方に位置しています。この近接性は、運動皮質が随意運動を制御する役割と関連しており、ブローカ野が音声生成をサポートするための筋肉制御と調和しています。ブローカ野と運動皮質の関係は、言語生成と運動計画の統合的役割を示しています。


 
 

臨床観察ポイント

言語生成

ブローカ野は、発声に必要な動作の制御など、言語生成に関わる運動機能に重要な役割を果たしています。この領域が損傷すると、運動性失語が生じ、患者は言語の理解能力を保っている一方で、言語生成に苦労します。
Geschwind N. The organization of language and the brain. Science. 1970 Nov 27;170(3961):940-4

言語生成に関する観察ポイント:

  • 言語生成ができるか?
    患者に会話を促したり、既知の文章を暗唱させたり、1~10まで数えさせるなどして観察を行います。患者が言葉や文章を作るのに苦労していても、指示された内容を理解している場合、ブローカ野の問題を示唆することがあります。

  • 発声のための運動制御は?
    患者が話そうとする際に、口、舌、その他の発声器官の不規則な動きや異常な動きを観察します。

  • 助詞の省略などは?
    「です」「は」「そして」などの助詞や接続詞が省略され、意味のある短いフレーズで努力して話す「電文体」の特徴を示すかどうかを確認します。


言語理解

ブローカ領域は言語生成だけでなく、文章の文法構造や単語間の文法的関係を理解する役割も持っています。
Grodzinsky Y, Santi A. The battle for Broca’s region. Trends Cogn Sci. 2008 Dec;12(12):474-80.

言語理解に関する観察ポイント:

  • 構文の理解度はどうか?
    患者に複雑な文章を繰り返したり言い換えたりさせることで、文構造の理解度を評価します。正確に繰り返しや言い換えができる場合、構文を理解していることを示唆します。

  • 文法的関係の理解は?
    「猫が犬を追いかけた」と「犬が猫を追いかけた」のように、単語の順序を変えることで意味が変わる文章を使用し、主語と目的語を正確に理解できるかを観察します。

  • 言語理解は?
    言葉や文章による指示に従ったり、質問に答えたり、会話に参加したりすることで、患者の言語理解力を評価します。


顔のニューロン制御

ブローカ失語症は、主に言語生成の障害ですが、コミュニケーションにおける表情の使用にも影響を及ぼす可能性があります。顔の筋肉や神経の直接的な障害ではなく、自己表現の困難さから生じることがあります。
Hadar U, Wenkert-Olenik D, Krauss R, Soroker N. Gesture and the processing of speech: neuropsychological evidence. Brain Lang. 1998 Mar;62(1):107-26.

顔のニューロン制御に関する観察ポイント:

  • 会話中の顔の表情は?
    患者が話している間、表情が乏しいか、表情と話の内容が一致しないかどうかを観察します。

  • 非言語コミュニケーションは?
    患者に、幸せ、悲しみ、怒り、驚きなどの感情を声に出さずに表現するよう求め、表情のコントロールが可能かを観察します。

  • 顔の動きを真似できる?
    眉を上げる、顔をしかめる、笑う、唇を尖らせるなど、特定の顔の動きを模倣できるかを評価します。


言語に関連する認知タスク

ブローカ野は言語処理における統合機能を持ち、問題解決、計画立案、言語に基づいた作業記憶などの高次認知機能や実行機能にも関与しています。【Hagoort P. Nodes and networks in the neural architecture for language: Broca’s region and beyond. Curr Opin Neurobiol. 2014 Oct;28:136-41.

認知タスクに関する観察ポイント:

  • 問題解決はできる?
    患者に「部屋の中で鍵を失くした場合、どのように探しますか?」と尋ね、系統的な方法で探すかどうかを観察します。

  • 計画を作れる?
    「友人とのキャンプ旅行を計画する際、どのようなステップを踏みますか?」と尋ね、段階的な計画を説明できるかを評価します。

  • 言語ベースのワーキングメモリーは?
    患者に「アップル、バナナ、チェリー」といった単語を聞かせて逆順に繰り返させるか、短い物語を順序正しく思い出させるなどのテストを行います。


 

臨床へのヒント

言語生成

  1. 言語生成訓練
    発話の改善を目指し、まずは「あー」や「えー」といった簡単な音の繰り返しから始めます。例えば、子供が最初に「ママ」と言うように、簡単な単語を徐々に学習していきます。次に、「こんにちは」「ありがとう」といった基本的なフレーズを練習し、最終的には「今日の天気は晴れですね」といった完全な文を形成できるように指導します。

    • 関連論文: 2008年のサンジャによる「Evaluation, treatment and evolution of Broca’s aphasia」では、ブローカ失語症の患者に1年以上適用した特定の言語療法について論じています。この治療法は、重度の失語症患者でもコミュニケーション能力が大幅に改善されることを示しています。この研究は、失語症患者のリハビリテーションにおいてカスタマイズされた言語療法の重要性を強調しています。
  2. メロディックイントネーションセラピー(MIT)
    患者が「おはようございます」のようなフレーズを話しにくい場合、まずはメロディーに合わせて歌うように指導します。徐々にメロディーやリズムを省き、最終的には音楽なしで自然に話せるようにトレーニングします。

    • 関連論文: イネケ(2016年)の「Melodic Intonation Therapy in Chronic Aphasia: Evidence from a Pilot Randomized Controlled Trial」では、慢性脳卒中後失語症の患者を対象に、6週間のMITを実施した実験グループと介入なしの後に6週間のMITを受ける対照グループを比較しています。研究結果として、MITはトレーニング項目の繰り返しを大幅に改善しましたが、追跡評価では安定した効果を示せなかったことが報告されています。MITの有効性は限定的かつ一時的であり、訓練を受けていない内容や機能的なコミュニケーションへの一般化は見られませんでした。
  3. スクリプトトレーニング
    日常的なスクリプトを繰り返し練習することで、日常生活でのコミュニケーションがスムーズになるよう訓練します。例として、「カレーを一つお願いします」といったレストランでの注文や、「私は田中です。よろしくお願いします」といった自己紹介のスクリプトを使用します。

    • 関連論文: Naomi(2018年)の「Script Training Using Telepractice with Two Adults with Chronic Non-Fluent Aphasia」では、重度のブローカ失語症患者の失われたコミュニケーションを回復させるのにスクリプトトレーニングが効果的であることが示されています。遠隔診療を使用した研究では、ブローカ失語症および皮質横断運動失語症の患者において、治療後に作成されたスクリプトの精度が大幅に向上することが実証されています。

言語理解

  1. 構文と文法の練習
    さまざまな文型を理解し、作成するための直接的で集中的な作業です。視覚的な補助具や図を使い、文の順序を正しく並べる練習を行います。

  2. 意味判断課題
    「雪が熱い」という文が意味的に正しいかどうかを判断させることで、構文と意味の両方を理解する能力を評価します。

  3. 絵画的課題
    文と絵を一致させたり、文に基づいた絵を並べたりすることで、文法的な関係性を理解させます。例えば、「象が自転車に乗っている」という文に対応する絵を選ばせます。

    • 関連論文: ジェシカ(2018年)の「Using Images With Individuals With Aphasia: Current Research and Clinical Trends」では、失語症患者の評価と治療における画像などの視覚的サポートの使用に焦点を当てています。この論文は、コミュニケーションを制限する音声、言語、認知の喪失を補う際の画像の役割について説明しており、画像を用いた方法が言語理解の促進に役立つことを示しています。
  4. 言語ゲーム
    ボードゲーム、カードゲーム、デジタルゲームなどを通じて、楽しみながら言語理解力を高めます。カードゲームで正しい文を作ることでポイントを獲得する形式などがあります。


顔のニューロン制御

  1. 会話中の表情調整
    患者が鏡を使って自分の表情を観察し、喜び、悲しみ、怒り、驚きなどのさまざまな感情を話しながら練習します。視覚的なフィードバックを利用して、どのように表情を作るかを学びます。

    • 関連論文: リリアン(2021年)の「Training Emotion Recognition Accuracy: Results for Multimodal Expressions and Facial Micro Expressions」では、失語症の治療に直接取り組んでいるわけではありませんが、非言語トレーニングと表情のより広範な分野について洞察を提供しています。この研究は、患者が多様な感情表現を訓練することで表情のコントロールを学び、非言語的コミュニケーション能力を向上させる方法について考察しています。
  2. 非言語トレーニング
    ロールプレイを通じて非言語コミュニケーションのスキルを向上させます。患者に店員と客のシチュエーションを想像させ、喜びや驚きなどの感情を表現する練習を行います。


言語に関連する認知タスク

  1. 問題解決のための課題
    シンプルなシナリオを提示し、解決策を考えさせ、その具体的な手順を明文化させます。これを繰り返し行うことで、問題解決能力を高めます。

  2. 計画タスク
    現実的なタスクに取り組み、買い物リストの作成や1日のスケジュールを計画するなど、時間管理のスキルを向上させる活動を行います。

  3. 言語ベースのワーキングメモリー
    短い物語を聞き、その後で詳細を思い出して話すエクササイズを行います。また、連続した単語や数字を覚えて繰り返す活動も含まれます。

    • 関連論文: スティーブ(2018年)の「Working memory treatment in aphasia: A theoretical and quantitative review」では、失語症における作業記憶の少数の治療研究の理論的かつ定量的なレビューを提供しています。この研究は、治療後に正常範囲の作業記憶パフォーマンスが観察され、介入の有効性が強調されています。ただし、より理論に基づいた評価と治療プロトコルの必要性も認識されています。

新人が陥りやすいミス

  1. 認知タスクに関するミス
    患者の興味や好みを無視してタスクを設定すると、やる気をなくし、進歩が遅くなります。患者の個人的な興味に合わせてタスクを設計することが重要です。

  2. 顔の表情に対するミス
    フィードバックの仕組みを取り入れないことが一般的なミスです。ミラーエクササイズやバイオフィードバックなどを活用して、即時に表情の誤りを修正できるようにします。


 

ブローカ野とその臨床関連性について提供される詳細な情報の理解を確認するために、ここに 10 の質問があります。


ブローカ野の解剖学的位置: ブローカ野は脳のどの部分に位置していますか?

機能: ブローカ野は言語処理のどの側面に主に関与していますか?

ブローカ失語症: ブローカ失語症の患者は通常、どのような症状を示しますか?

神経経路: ブローカ野はウェルニッケ野とどのように接続されていますか?

血液供給: ブローカ野への血液供給はどの血管から来ますか?

言語生成の臨床観察: ブローカ野に障害がある場合、言語生成にどのような影響が見られる可能性がありますか?

非言語コミュニケーション: ブローカ失語症の人は非言語コミュニケーションにどのような問題を抱える可能性がありますか?

言語理解: ブローカ野は言語理解のどの側面に影響を与えることがありますか?

言語に関連する認知タスク: ブローカ野は言語以外のどのような認知タスクに関与していますか?

治療法: ブローカ失語症の治療にどのようなアプローチが一般的に用いられますか?

 
 回答は?

ブローカ野の解剖学的位置: ブローカ野は脳の前頭葉、特に利き半球(通常は左半球)の下前頭回の後部に位置し、弁蓋部と三角部で構成されています。

機能: ブローカ野は言語の計画、開始、明瞭化に関与し、言語理解と構文処理のさまざまな側面を担っています。

ブローカ失語症: ブローカ失語症の患者は、言語理解力は優れているものの、発話や流暢さに困難を抱えます。これには、言葉の明瞭な表現の困難、接続詞や前置詞の省略、語順や文章構成の問題が含まれます。

神経経路: ブローカ野は、弓状束を介して脳の優位半球の上側頭回の後部に位置するウェルニッケ野と複雑に接続されています。この接続は、言語理解と音声生成の統合を可能にします。

血液供給: ブローカ野への血液供給は、中大脳動脈(MCA)の枝から来ています。

言語生成の臨床観察: ブローカ野に障害がある場合、患者は発声に必要な動作の制御に問題を抱え、運動性失語という症状が現れます。これには、発話が遅く、努力が必要で、流暢でないことが含まれます。

非言語コミュニケーション: ブローカ失語症の人は、コミュニケーションの非言語的側面、特に口調やイントネーションの使用に困難を抱える可能性があります。

言語理解: ブローカ野は、文章の文法構造、特に文中の異なる単語間の文法的関係の理解に影響を与える可能性があります。

言語に関連する認知タスク: ブローカ野は問題解決、計画立案、言語に基づいた作業記憶など、言語を含む高次認知や実行機能にも関与しています。

治療法: ブローカ失語症の治療には、ミュージックイントネーションセラピー、スクリプトトレーニング、言語生成と理解のための特定の練習や課題などが用いられます。これらは、言語機能の改善と日常生活でのコミュニケーション能力の向上を目指しています。

 

ブローカ野を意識したリハビリテーション展開例

登場人物

  • 療法士:金子先生
  • 患者:丸山さん

ストーリー

初回セッション:評価と課題設定

セラピストの金子先生は、ブローカ失語症を持つ患者の丸山さんと対面しました。丸山さんは、数年前に脳卒中を経験して以来、言語生成に苦労しています。言語理解はある程度保たれているものの、発話が遅く、簡単なフレーズを構成することに難しさを感じています。

金子先生は、丸山さんと簡単な会話を始め、彼の言語能力を評価します。

 金子先生:「丸山さん、今日はどうですか?体調はいかがですか?」

 丸山さん:「…んあ…いいです。」(ゆっくりと、途切れ途切れに話す)

金子先生は、丸山さんが単語の生成に時間がかかり、助詞や接続詞の使用に困難があることを観察しました。また、発声においても口や舌の動きが不規則であることが分かりました。

 金子先生:「ありがとうございます。少しゆっくりお話ししましょう。言いたいことを焦らずに、ゆっくり伝えてみてくださいね。」

総合評価とリハビリ目標の設定

評価の結果、丸山さんの主な問題は「言語生成の困難」と「発話の非流暢さ」にあることが明らかになりました。これらの問題に基づいて、金子先生はリハビリの目標を「自分の名前をはっきりと伝えること」に設定しました。

 金子先生:「丸山さん、まずはお名前をはっきりとお伝えできるようになるのを目標にしましょう。『私は丸山です』と言えるように練習してみます。」

 丸山さん:「…ま…る…やま…です。」(ゆっくり、努力して発音する)

 金子先生:「そうです、いい感じです!少しずつ、無理せずにやっていきましょう。」

リハビリの計画と実施

金子先生は、丸山さんのために3つの段階的なリハビリ計画を立てました。

  1. 音の生成練習
  2. メロディックイントネーションセラピー(MIT)
  3. スクリプトトレーニング

詳細:

  1. 音の生成練習
    初めの段階では、簡単な母音や子音を繰り返し発声する練習を行います。

 金子先生:「まずは、『あー』『えー』といった簡単な音を繰り返してみましょう。」

 丸山さん:「あー…えー…」(ゆっくりと繰り返す)

 金子先生:「良い感じです。このリズムを意識してもう少し繰り返してみましょう。」

丸山さんは舌や口の筋肉を整えることで、発話の準備を行います。これは、発声に必要な運動制御を改善し、より明瞭な発話を目指すための基礎となります。

  1. メロディックイントネーションセラピー(MIT)
    次に、丸山さんが「まるやまです」と自分の名前をメロディーに乗せて発音する練習をします。

 金子先生:「次は『まーるーやーまーでーす』と、歌うように言ってみましょう。」

 丸山さん:「まーるー…やーまー…でーす…」(メロディに合わせてゆっくり)

 金子先生:「いい感じです!その調子で少しずつメロディを減らしていきますね。」

徐々にメロディーを省き、最終的には自然な発話に移行します。

  1. スクリプトトレーニング
    最終段階では、日常的なシナリオを想定したスクリプトトレーニングを行います。

 金子先生:「『こんにちは、私は丸山です』と言ってみましょう。このフレーズを何度も練習してみますね。」

 丸山さん:「こん…にちは、わた…しは…まるやまです。」(緊張しながらも少しずつ自然になってきている)

 金子先生:「良い感じです!今のように少しずつ練習して、どんどん自然に話せるようにしましょう。」

結果と進展

数週間のリハビリを経て、丸山さんの発話には顕著な改善が見られました。最初は単音の発声から始まった練習が、徐々に名前のフレーズに進化し、今では「まるやまです」を比較的スムーズに言えるようになりました。MITによるリズム練習が功を奏し、発話の流暢さも向上しました。スクリプトトレーニングの成果もあり、自己紹介の際により自信を持って発話できるようになっています。

 金子先生:「丸山さん、今日はとても良くできましたね。『まるやまです』がずいぶんスムーズに言えるようになりました!」

 丸山さん:「ありがと…うご…ざいます。」(少し照れながら)

次のステップ

丸山さんの次のステップとして、金子先生は以下の目標を設定しました:

  • 新しい単語やフレーズの習得:例えば、「今日はいい天気ですね」「よろしくお願いします」といったフレーズを練習する。
  • 非言語的コミュニケーションの強化:表情や身振りを使ったコミュニケーションのトレーニングも取り入れる。
  • 日常生活での応用練習:リハビリで学んだスキルを実生活で使い、家族や友人とのコミュニケーションをさらに豊かにする。

 金子先生:「次は新しいフレーズも挑戦してみましょうね。頑張っていきましょう!」

 丸山さん:「はい、がんば…ります。」

金子先生と丸山さんは、リハビリの進展に対して前向きな姿勢を持ち、さらに次のステップへと進む準備を整えています。リハビリを続けることで、丸山さんはより効果的にコミュニケーションを取れるようになるでしょう。

今回のYouTube動画はこちら

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STROKE LAB代表の金子唯史が執筆する 2024年秋ごろ医学書院より発売の「脳の機能解剖とリハビリテーション」から
以下の内容を元に具体的トレーニングを呈示します。

STROKE LABではお悩みに対してリハビリのサポートをさせていただきます。詳しくはHPメニューをご参照ください。

 
 
 
以上となります。次回は前頭眼野になります。それでは臨床に行ってきます!!
 
**************
株式会社 STROKE LAB  
代表取締役 金子唯史
www.stroke-lab.com
03-6887-5263
 
本館:〒113-0033 東京都文京区本郷2-8-1 寿山堂ビル 3階
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