vol.27:頭部姿勢の予測的姿勢制御(APAs):脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
脳科学,姿勢制御
タイトル
頭部姿勢の予測的コントロール Anticipatory Control of Head Posture?PubMedへ Alessander Danna-Dos-Santos et al:Clin Neurophysiol.2007.Aug;118(8): 1802–1814
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・頭頚部を過剰に固定してバランスを保持している患者をみることがある。その際、頭頚部の予測的なコントロールが低下し、協調的な動きや姿勢保持機能に影響を与えるのではないかと感じた。頭頚部の予測的コントロールについての論文があったため読むこととした。
内 容
概 要
●APA(anticipatory postural adjustments:予測的姿勢制御)を見る際に体幹の活動を見ることは多いが,頭部のAPA を見る研究は少ない
●先行研究では,上肢の挙上の際,三角筋が働く前に頭部の屈伸筋活動があると報告されている
●本研究では,HP(頭部)・TP(体幹)・HTP(頭部と体幹)をEMG にて,計測方法は立位での上肢活動で計測した
方 法
Fig1:主な実験条件6つ A・B:頭部への動揺,C・D:体幹への動揺 ,E・F:頭部・体幹双方への動揺(予測的な荷重・除重によって異なる方向性の動揺を作りだす)
結 果
●動揺が頭部に直接的に関係した際に頚部の屈筋,伸筋の活動が強まった
●頭部が動揺する際の体幹と下肢の筋活動は少なかった
●体幹の動揺は,頭部と体幹の動揺と変わらないAPAの反応であった
●①A time-shifted(reciprocal)pattern と②A simultaneous activation(co-activation)pattern の二つが頭部のAPAの活動として確認された
●①は予測しやすい状況下での相反的な頚部の反応で,②は予測できない状況下での同時収縮的な頚部の反応であった
●下肢と体幹の安定は頭部の安定を助長してくれる役割は認められなかった(→頚側の仕方に問題があったと思われる)
●先行文献では,下肢と体幹の安定は頭部の安定性を保証してAPAの活動を促してくれるとの報告がある
明日への臨床アイデア
●頭部の動揺を極力減らそうと体幹、頭部と体幹の連結が重要になることがわかった
●体幹の動揺に対するAPAとして,ガストロ・前脛骨筋・大腿四頭筋の活動はあまりみられず,腹直筋やハムスト、脊柱起立筋の活動が重要であったことはコアスタビリティの治療の示唆となる可能性がある
●頭部の相反的な筋活動と同時収縮的な筋活動の二つのパターンは臨床経験からしても予測できる
●食事における嚥下の際,頸部伸筋がAPAに伴い先行的に活動し,頭頸部が安定した上で屈筋の活動による嚥下へと移行していくことの重要性が窺われる(舌骨のコントロールの幅が拡がる?)
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)