vol.28:他動と自動的前庭刺激で前庭神経の反応は異なるか? 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
脳科学
タイトル
他動的・自動的平行移動時における卵形嚢と球形嚢からの求心性神経による前庭神経の反応 Response of vestibular nerve afferents innervating utricle and saccule during passive and active translations?PubMedへ Jamali M et al:J Neurophysiol. 2009 Jan;101(1):141-9
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・前庭神経について学び臨床への応用を考えていたが、介入において他動的なものと自動的なものでは反応が違うのではないかと疑問を感じたため今回に至る。
内 容
概 要
●感覚入力の区別は,正確な運動コントロールと安定しているという感覚に基づき,外界の変化に対する私たち自身の活動の結果である
●本研究では,耳石システムに対して,自発的と他動的な平行移動を行い,同様の結果になるかどうかを調査
方 法
●実験は覚醒したマカク猿で行い,前庭神経求心性線維によって刺激される球形嚢もしくは卵形嚢の活動を記録
●卵形嚢と球形嚢の求心線維のダイナミックな反応は,『他動的に体全体を動かされながら頭部を平行移動される』の場合と,『自発的に体幹上の頭部として平行移動される』という近似した条件下で比較
結 果
●サルが自発的な体幹上の頭部のダイナミックな平行移動を行った際の規則的かつ不規則的な求心情報は,他動的な動きの条件下でも継続して記録された
Fig1:加速に伴う他動的・自動的条件下での両耳間の耳石の活動比較(Jamali Mら2009)
考 察
●本研究は,前庭が空間における頭部の直線運動の正しい情報調整を自動-他動に関らず準備する事を言及している
●霊長類において,前庭の遠心性システム機能として,「アクティブな頭部の動き中で求心性反応を選択的に調節する活動がある」という仮説に対して,反論する根拠となる発見である
明日への臨床アイデア
●マカク猿(霊長類)において,耳石への求心性線維は単一性であり,平行移動時では他動・自動に関らず前庭系へ入力される感覚は同じである事を示しているStudyである.
●前庭からのAfferent(求心性)の入力は自他動問わず量は変わらないとすれば,多感覚統合を鑑みて,その他の感覚モダリティと適切に参照・統合し合えるような誘導(他動要素)が必要になってくると思われる。
●脳卒中やメニエールなど、前庭系において予測と実際のフィードバックの照合がミスマッチしている患者に対し、どのようにPrediction(予測)を他動、自動の中で適切に働かせ、実際のフィードバックとマッチさせるかを考える機会になった。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)