【2022年版】MRIとCTの違い分かる?療法士向け分かりやすい脳画像の見方/下肢運動とfMRIの論文紹介
MRIを簡単に説明
MRI(Magnetic Resonance Imaging)は、体内の水素原子の分布図です。水素原子は陽子が1個で磁気モーメントが大きいので、MRIに適しています。
簡単に説明すると、MRI装置は大きくて強力な磁石でできており、その中に患者さんが横たわります。
磁石が作る磁場によって、水素原子の陽子1個1個が共鳴し、その位置が機械によって把握されます。人間の体の約75%は水分子からできているため、MR画像は身体の部位を正確かつ詳細に撮影することができます。
また、細胞の種類によって信号が異なるため、骨、関節、筋肉、軟骨など、さまざまな組織を識別することができます。身体のどの部分の画像も、あらゆる平面で得ることができます。
MRIは、体内のすべての水素分子を詳細に「撮影」し、その体の部位を正確に表現するために計算されます。
MRIには、信号の減衰の違いによって撮影される画像が異なる複数のタイプがあります。
●T1強調MRIは、信号の減衰の初期、つまり陽子が配置された後の早い段階を捉えます。
●T2強調MRIは、信号減衰の後期、つまり共鳴から少量のプロトン(水素原子核)が移動した後を撮影します。
なぜMRIを使うの?
MRI検査は、医療診断に幅広く応用されています。
用途は以下の通りです。
MRIは、小さな腫瘍に対してCTよりも感度が高いです。また、後頭蓋窩の可視化が可能となります。そのため、神経系・癌の検査に最適なツールです。
また、灰白質と白質の間のコントラストにより、脱髄疾患(MSなど)、認知症、脳血管障害、感染症、てんかんを含む中枢神経系の多くの疾患に対して最適な選択となります。
機能的磁気共鳴画像法(fMRI)
fMRIは、強い磁場と電波を用いて身体の詳細な画像を作成する非侵襲的検査である磁気共鳴画像法(MRI)と同じ技術をベースにしています。しかし、fMRIはMRIのように臓器や組織の画像を作成するのではなく、脳の血流を見て、活動領域を検出します。
血流の変化をコンピューターで解析することによって、医師は脳の機能についてより深く理解し、どの部位が最も活発であるかを判断することができます。fMRIは、脳卒中やその他の脳の問題を発見することができます。脳の手術が必要な場合、例えばてんかんや腫瘍の場合は、脳のマッピングに使用することができます。
心臓MRI
心臓MRIは、心エコー、心臓CT、核医学など、他の画像診断技術を補完するものです。その用途は、心筋虚血やバイアビリティの評価、心筋症、心筋炎、鉄過剰症、血管疾患、先天性心疾患などです。
磁気共鳴アンギオグラフィ。(通常、MRアンギオグラフィまたはMRAと略される)は、従来のアンギオグラフィやCTアンギオグラフィの代替として用いられます。この技術は電離放射線やヨード造影剤を必要とせず、時には完全に造影剤を必要としません。現在では、様々な利点と用途を持つ、複数の技術に発展しています。
肝臓・消化管MRI
肝胆膵MRIは、肝臓、膵臓、胆管の病変を検出し、その特徴を明らかにするために使用されます。肝MRIでは細胞外造影剤が広く使用されており、新しい肝胆道系造影剤では機能的な胆道画像も可能です。
オンコロジー MRI
オンコロジー MRIは、大腸がんや前立腺がんの術前病期分類に利用される検査であり、その他の腫瘍の診断、病期分類、経過観察に役割を担っています。過剰な水分はMRI装置内でより長く共鳴し、生成される画像において腫瘍を周辺組織と区別することができます。
MRIは軟部組織の観察に優れたイメージングモダリティです。T1、T2強調画像は、MR画像の中核をなすものです。
T1およびT2画像は、脂肪抑制、ガドリニウム増強、反転回復という調整が可能です。
異なるシーケンスによって、病変部に何があり、どのような挙動をしているかが分かります。これらの特徴、病変の位置、および臨床歴から、診断を行うことができます。
MRIの長所
CTスキャンとは異なり、電離放射線を使わずに画像を作成することができます。患者の体位を変えずに、複数の平面(軸位、矢状、冠位、斜位)で画像を取得することができます。また、CT画像は最近になって、同じ空間分解能(等方性ボクセル)で複数の平面で再構成することができるようになりました。
MRI画像は、CTスキャンや単純X線写真に比べて軟部組織のコントラストに優れており、脳、脊椎、関節、その他の軟部組織の検査に適しています。
CTや従来の血管造影とは異なり、造影剤を使用せずに血管造影画像を得ることができるものがあります。
拡散、スペクトロスコピー、灌流などの高度な技術により、単なる「巨視的」なイメージングではなく、正確な組織の特徴を把握することができます。機能的MRIにより、特定の活動時に脳が活性化する部位を可視化し、その背後にあるネットワークを理解することができます。
MRIのデメリット
MRI検査はCT検査より高価です。MRIスキャンはCTスキャンよりも取得にかなり時間がかかり、患者の快適性が問題になることがありますが、これは以下の要因によって悪化する可能性があります。
MRIスキャナーでの画像取得にはCTに比べてノイズが多い傾向があります。また、MRIスキャナーの穴はCTよりも密閉されているため、閉所恐怖症を抱えている患者にとっては負担となることがあります。しかし、最近ではNBオープン型MRI装置が開発され、小児や閉所恐怖症を抱えている患者にとってより快適な体験が可能となっています。
MR画像には独特のアーチファクトがあり、それを認識し軽減する必要があります。
MRI検査は、金属製のインプラントや異物がある患者さんには安全ではありません。患者やスタッフの重大な傷害を避けるためには、安全対策に十分な注意を払う必要があり、そのためにはMRIに適合した特別な装置と安全プロトコルの厳格な遵守が必要です。
T1画像とT2画像
T1画像とT2画像は、RFパルス(ラジオ派の信号のこと)のタイミングにより、異なる組織を映し出します。この2つの間で、注意しなければならない主な違いは以下の通りです。
T1 :1つの組織が明るく表示される(脂肪、亜急性期の出血、鉄の沈着物、メラニンなど)
T2 :脂肪と水の2つの組織が明るく表示されます。
T1は最も「解剖学的」な画像です。逆に、脳脊髄液(CSF)は水分を含んでいるため、T2で明るく表示されます。一般的にはT2がよく使われますが、T1は解剖学的構造の基準として、あるいは脂肪と水の明るい信号を区別するために使われます。
T1/T2強調画像のその他の特徴
脂肪抑制:脂肪信号を抑制することで、解剖学的構造物やその周辺の病変(特に水腫)を見やすくすることができます。副腎腫瘍や骨髄の病理では、脂肪が多いため周囲の組織と同じような画像になるため、この方法が有効です。
ガドリニウム製剤による強調:ガドリニウムは、血管(動脈など)や病理的に血管の多い組織(頭蓋内転移や髄膜腫など)を強調します。5~15mlの造影剤を静脈内に注射し、その後すぐに撮影を行う方法です。ガドリニウムは信号が明るく見えるため、詳細な異常(頭蓋内病変など)を検出することができます。
IR反転回復法
T1、T2を操作した画像です。反転のタイミングによって特定の組織を無効化し、脂肪や髄液などの組織が明るい信号として現れないようにします。病的な信号の同定に有用です。以下、主な2つのタイプについて説明します。
Short tau inversion recovery (STIR):T2画像をベースに、脂肪(および類似の信号を持つ他の物質)を無効化する方法で画像を操作したものです。しかし、脂肪抑制画像とは異なり、STIRはガドリニウム造影剤と併用することができません。先に述べたように、脂肪は浮腫領域や骨髄の解釈を困難にします。
FLAIR(Fluid attenuated inversion recovery):T2と同様であるが、CSFの信号が無効となります。脳室周囲、脳溝、脳回など中枢神経系の構造評価に特に有用である。例えば、FLAIRは、多発性硬化症のプラーク、脳卒中後の微妙な水腫、およびCSFが解釈を妨げる可能性のある他の状態での病理を識別するために使用することができます。
ハイブリッドMRIシーケンスとは、高周波と原因エコーの種類と周波数を使い分けることで実現します。グラディエントエコーは、関節軟骨の欠損や筋肉内の出血などの鉄複合体の感度を高めますが、手術で使用した金属製の器具(ピンやネジなど)の解像度を低下させます。スピンエコーは、組織のコントラストを高め、半月板断裂をより鮮明に描出することができます。刺激エコーは信号の干渉を減らすため、組織内の特定の分子の動きを見るために使用されることがあります。
プロトン密度画像
陽子の密度を単純に表した画像です。プロトンの密度が高い部分は白く表示されます(皮質骨、骨髄)密度の低い領域は暗く表示される(体液、軟部組織)ことがあります。
MRIの禁忌
●ペースメーカー
●動脈瘤クリップ
●人工内耳、人工中耳の方
●ステント挿入手術を受けて間もない方
●眼窩内異物(金属片)など
●金属製品を所有している人
などの方は禁忌となります。
MRIとCTの違い
MRIは、CTと同様に、従来から身体の薄い「スライス」の2次元画像を作成しており、したがって断層撮影法と考えられています。
現代のMRI装置は、3Dブロックの形で画像を作成することが可能であり、これはシングルスライス、断層撮影の概念の一般化と考えることができます。
MRIはX線を使用しないため、X線写真やCTスキャン(X線を使用)とは異なり、その懸念はありません。個人が受けることができるスキャンの数に制限はありません。ただし、MRIスキャンには、磁場による組織の加熱や、体内に埋め込まれたペースメーカーなどの装置がある場合に健康リスクがあることが十分に認識されています。これらのリスクは、機器の設計や使用するスキャンプロトコルの一部として厳密に管理されています。
CT と MRI は異なる組織特性を感知するため、この 2 つの技術で得られる画像の外観は著しく異なります。
CTでは、X線が何らかの密な組織によって遮られないと画像が得られないため、軟部組織を見る際の画質が悪くなります。
MRIでは、核スピンの正味のある原子核なら何でも使えるが、水素原子の陽子はどこにでもあり、大きな信号を返すので、特に臨床の場では最も広く使われています。
水分子に含まれるこの原子核が、軟部組織の優れたコントラストを可能にするのです。
MRIでみる画像診断
引用元:画像診断Cafe
引用元:画像診断Cafe
引用元:画像診断Cafe
論文評価
カテゴリー
脳科学,歩行
タイトル
能動的な足関節背屈と底屈時における脳内活動の違い-fMRIを用いた研究- An fMRI study of the differences in brain activity during active ankle dorsiflexion and plantarflexion?PubMedへ Trinastic JP et al:Brain Imaging Behav. 2010 Jun;4(2):121-31
内 容
目 的
●本研究の目的はfMRIを用いて,足部の自動底背屈運動時の皮質活動の特徴を分析すること
方 法
●右利きの成人健常者群にて,聴覚刺激から足関節の底背屈を行い,fMRIにて脳内活動を調査
結 果
●背屈時には左優位のM1,両側SMA,右側小脳の動員があることがわかった
●底背屈どちらにおいても近似した左の視床と被殻の活動を認めた
●背屈運動は,右の被殻領域のさらなる活性化が見られた
●足関節底背屈は,共有して制御されている部分と独立した神経回路があることを示している
Trinastic JP et al:Brain Imaging Behav. 2010 Jun;4(2):121-31?原著pdfへ
考 察
●一つの解釈としては,足関節自動背屈時における皮質の広範囲部位の活性化は,背屈動作により多くの皮質リソースを必要とするより多くの運動課題が必要となる
●直立二足歩行の遊脚相に必要とされる,背屈と踵接地運動はヒト特有の歩行パターンである(Capaday:2002)
●背屈は二足歩行に適応して進化した運動のように思われ,歩行時には他の運動よりもより皮質コントロールによって行われている可能性がある
●さらに,障害物への反応として運動野が重要な役割を果たしている(Drew et al:1996,Drew et al:2008)
●障害物を避ける為には足部を正確に置く必要があるが,皮質の障害があっても平地歩行時は問題が少ない(ネコの実験)(Beloozerova and Sirota:1993)
●ヒトの背屈においては,踵が最初に接地する為,安全に環境をモニターする為に協調した神経ネットワークが働く必要がある
●対照的に,底屈は蹴り出しに重要であるが,足部の位置に注意する必要性があまり無いかもしれない
●CPGは環境に適応して,通常の歩行リズムや遊脚相を変える時に皮質からの入力が増加する(Drew et al:1996)
●底屈はCPGへの上行性入力の影響を受けていることが,底屈運動への皮質の関与が少なさを説明するかもしれない
●脳卒中の運動野の障害は,背屈コントロールの減弱はあるが,底屈運動には問題がない
明日への臨床アイデア
●背屈運動が歩行に重要であることは周知の事項だが,皮質活動を多く必要とすることからも,バイメカだけでなく神経的な面からも足関節の背屈運動を捉える必要性をが窺える
●健常人においては,歩行時における足関節背屈運動はある程度自動化され,歩行環境に何かしろの変化・危険等があれば,随意的な皮質コントロールのもとで足関節背屈をコントールしていることは推測できる
●しかしながら,CNSに障害・損傷を負った患者においては,上記研究でも報告しているように足関節底屈運動に比べて背屈運動は皮質から出力が要求されるため,CNSに問題を抱える患者は一層皮質の興奮性を高めることで代償戦略をとることが容易に想定できる
●歩行は,身体各セグメントとの協調のもとで成立する運動・動作であるため,身体重心や動揺が安定していなければ,まずそちらへの代償を第一選択として皮質興奮性のCapacityを使用するのではないかと仮説立てている
●そのため,足関節背屈を能動的な要素で出せる潜在性があったとしても,歩行の戦略として使用できないのには,上記内容も含めた多方面からの代償的なMaskingが散在しているのではないかと考えており,個々のセラピストが考えうるMakingを解除した上で,FES等を使用しながらの随意的コントロールの強化,そして自動化へともっていくことがセラピストとしての治療戦略上いいのではないかと感じた
●また,姿勢不安定性等が強く,患者自身が足関節を随意的にコントロールできる幅があまりにも狭いにも関わらず,FES等でMuscle Activationを図ることは,過剰な伸張反射やCo-contractionを強化し,一層随意的な足関節コントロールを失わせるきっかけを作っている可能性すらあり得ることを,セラピスト自身は理解しておくことが肝要ではないかと思う
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
脳卒中後の足関節背屈のトレーニングに役立つ動画
脳卒中の動作分析 一覧はこちら
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)