vol.110:脳卒中/片麻痺の股関節痛 脳梗塞リハビリ論文サマリー
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カテゴリー
神経系
タイトル
大転子痛症候群:脳卒中患者の有病率と関連因子 Greater Trochanteric Pain Syndrome: Frequency and Associated Factors in Patients with Stroke?Koseoglu, BF. Top Stroke Rehabil. 2014 Sep-Oct;21(5):383-90. doi: 10.1310/tsr2105-383.
内 容
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・大転子痛症候群というものを初めて聞き、興味深かったから。
・自分の利用者様に麻痺側の股関節痛を訴える方がおり、治療の一助になればと思ったから。
目 的
・脳卒中患者の大転子痛症候群の有病率と関連因子を調査する。
方 法
・入院中の脳卒中患者86名(男性50名、女性36名、65.4±12.7歳、範囲18~86歳)
・意識レベルGCS15未満、MMSE7以下、脊柱・股関節・膝関節手術を受けた方やがんなどの疾患を有する方を除いた。
・関連因子として年齢、性別、BMI、損傷部位、発症してからの期間、ブルンストロームステージ、歩行能力、痙性(Ashworth scale)、認知機能(MMSE)、うつ症状、ADL、QOL、腸脛靭帯症候群の有無、腰痛の有無、股・膝関節OAをひとりの検者が評価し、大転子痛症候群の相関をみる。
※大転子痛症候群の診断基準
①股関節外側痛
②大転子部の著しい疼痛
③股関節の回旋、内外転で疼痛
④中殿筋の痛み
⑤パトリックテスト陽性
⑥大腿外側の放散痛
①②どちらかに加え、残りの③~⑥でひとつ以上あてはまる場合、大転子痛症候群と診断される。
※腸脛靭帯症候群
・オベールテスト陽性
・膝屈伸時の大腿骨外側上顆の圧痛
結 果
・28名の被験者に大転子痛症候群が認められた(32.6%)
・相関を示した因子は下肢の痙性(r=0.343, p<0.001)、うつ症状(r=-0.330, p<0.02)、腸脛靭帯症候群(r=0.477, p<0.01)だった。
・その他の因子は相関を示さなかった。
論文の背景や興味深かったこと
・大転子痛症候群は主に大転子付近に存在する滑液包炎が原因であると言われている(Geraci, Sanfilippo and D’Arienzo, 2011)。
・脳卒中患者の大転子痛症候群の有病率、関連因子を調べた研究は本論文が初めてで、腸脛靭帯症候群は先行研究(Geraci, Sanfilippo and D’Arienzo, 2011)と一致していた。
・今回、下肢の痙性も相関を示しており、下肢の異常な運動パターンが滑液包に過剰な負荷を生じている可能性が示唆された。
私見・明日への臨床アイデア
・脳卒中患者の股関節痛の一因として大転子痛症候群(滑液包炎)があると知ることができた。この滑液包の解剖、炎症が起こるメカニズム、評価方法などを調べて臨床に活かしていきたい。
参考文献
Geraci, A., Sanfilippo, A., and D’Arienzo, M. (2011) ‘Greater Trochanteric Pain Syndrome: What is this Meaning?’, Orthopedic and Muscular System, 1(1), pp.1-4. doi: 10.4172/2161-0533.1000101.
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)