【2024年版】脳卒中患者のFIMに影響する因子:年齢、重症度、認知など リハビリ論文サマリー
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論文を読む前に
脳卒中患者の年齢とFIMの関係
本論文は年齢・FIM・脳卒中に関する内容となっています。加齢が脳卒中後の回復に及ぼす影響と年齢を重ねても回復する可能性について講義形式で復習していきたいと思います。
登場人物
- 新人療法士: 丸山さん
- 医師: 金子先生(神経内科およびリハビリテーション専門医)
ストーリー
カンファレンスルームでの対話
丸山さんは、リハビリテーションの新人療法士として、金子先生の講義に参加しました。今日のテーマは「加齢と脳卒中後の回復」についてです。
講義の開始
金子先生は、加齢が脳卒中後の回復にどのように影響を与えるかについて、最新の研究論文を基に説明を始めました。
金子先生: 「丸山さん、今日は加齢が脳卒中後の回復に与える影響と、高齢者でも回復する可能性について話します。多くの研究が示すように、加齢は脳卒中後の回復に影響を与えますが、高齢者でも適切なリハビリテーションを受ければ回復が見込まれることがわかっています。」
脳の可塑性の低下
金子先生は、まず加齢による脳の可塑性の低下について説明しました。
金子先生: 「年齢が上がると、脳の可塑性が低下します。若い脳は損傷を受けても他の部分が代償的に機能を担う能力が高いですが、加齢に伴いこの能力が減少します。研究によると、神経新生やシナプス形成の速度が遅くなり、機能回復の効率が低下することが示されています。」
血流と代謝の低下
次に、金子先生は加齢による脳血流と代謝の低下について詳しく説明しました。
金子先生: 「年齢と共に、脳血流量や酸素および栄養素の供給が低下します。これにより、損傷部位の回復が遅れます。さらに、エネルギー代謝も低下し、神経細胞の再生や修復が効率的に行われません。」
全身の健康状態の影響
金子先生は、加齢による全身の健康状態の変化が脳卒中後の回復に与える影響についても説明しました。
金子先生: 「加齢に伴い、心血管系や代謝系の疾患のリスクが高まります。高血圧、糖尿病、動脈硬化などの既往症は、脳卒中後の回復に悪影響を及ぼします。また、これらの慢性疾患は、脳卒中後のリハビリテーションにおいても注意が必要です。」
社会的・心理的要因
金子先生は、加齢と共に増える社会的・心理的要因についても触れました。
金子先生: 「高齢者は、社会的孤立やうつ病、認知症などの心理的問題を抱えることが多くなります。これらの要因は、リハビリテーションのモチベーションや参加意欲に影響を与え、回復を遅らせる要因となります。」
高齢者でも回復する可能性
丸山さんは、高齢者でも回復する可能性について質問しました。
丸山さん: 「金子先生、加齢の影響があっても、高齢者でも回復する可能性があるのでしょうか?」
金子先生: 「もちろんです。最近の研究では、高齢者でも適切なリハビリテーションを受けることで、回復が可能であることが示されています。例えば、2020年に発表された論文では、70歳以上の脳卒中患者に対する集中的なリハビリテーションが、機能回復に有効であることが報告されています。この研究では、個別化されたリハビリテーションプランが高齢患者の回復に寄与することが明らかにされました。」
リハビリテーションの適応
金子先生は、高齢者に対するリハビリテーションの適応方法についても説明しました。
金子先生: 「高齢者のリハビリテーションでは、以下の点に注意が必要です。
- 個別化アプローチ: 患者の全体的な健康状態、既往症、心理的状態を考慮した個別化されたリハビリプランを作成します。
- 進行速度の調整: 高齢者は回復が遅いので、無理のない範囲で進行速度を調整し、継続的なモチベーションを保ちます。
- 多職種連携: 医師、看護師、理学療法士、作業療法士、心理士などが連携して総合的な支援を提供します。
- 家族のサポート: 家族の理解と協力が回復に大きな役割を果たします。家族に対しても適切な教育とサポートを行います。
- 心理社会的支援: 社会的孤立を防ぎ、心理的サポートを提供するためのプログラムを導入します。」
金子先生は、講義のまとめとして今後の展望について話しました。
金子先生: 「加齢による脳卒中後の回復の遅れを理解し、それに応じた適切なリハビリテーションプランを提供することが重要です。最新の研究によれば、運動療法や認知トレーニング、栄養管理などを組み合わせた多角的アプローチが効果的であると示されています。高齢者でも適切な介入を行えば回復の可能性は十分にあります。今後も研究を続け、より効果的な治療法を開発していきましょう。」
丸山さん: 「金子先生、詳しい説明をありがとうございました。これからのリハビリテーションにおいて、今日学んだ知識を活かしていきたいと思います。」
金子先生: 「頑張ってください、丸山さん。患者一人一人に合った最適な治療を提供することが、私たちの使命です。」
FIM(functional independence measure )についての復習しよう
そもそもFIM(
論文内容
カテゴリー
脳科学系
タイトル
年齢と脳卒中患者の機能的転帰の関係性 Effect of age on functional outcomes after stroke rehabilitation.?PMCへ Stephen Bagg et al.(2002)
本論文を読むに至った思考・経緯
リハビリを行うにあたり「もう歳だから」と消極的な発言をされる方が時折見られる。実際、年齢は機能回復にどれくらい影響しているのか興味を持った。主論文と他論文を読み合わせ関係を探りたい。
論文内容
研究目的
•年齢が脳卒中後の機能的転帰に与える影響を調査することが目的である。
研究内容
•6年間の間に脳卒中リハビリを行った入院患者が対象である。
•入退院時の機能状態をFIMで評価した。
•年齢、機能的転帰、および他の予測変数間の関係を評価した。
研究結果
•年齢は、退院時のFIMスコアという点では予測因子として有意であった。
•しかし改善・変化という面から見ると、重要な予測因子とは言えないという結果であった。
•入院時のFIMスコアは、機能的転帰の変動の15%~66%に関与しており、脳卒中患者の評価における入院時の機能的状態の臨床的重要性を示している。
•その入院時のFIMスコアは年齢と関連していることから、総合的に機能的転帰は年齢と関連している。
•結論として年齢は、リハビリを行っても意味がないと否定する正当な理由ではないことを示唆している。
他論文より追記
•他文献においても、入院時のADLスコアのみが、入院前の生活条件への復帰に有意に関連し、年齢ではないことが示されている。Rehabilitation of the elderly ― influence of age, sex, main diagnosis and activities of daily living (ADL) on the elderly patients’ return to their previous living conditions. Hager K. et al.(1997)
•若年者の回復速度は高齢者と比べわずかに速い程度であった。
•脳卒中発症に関しては最も重要な危険因子であるが、機能回復という面では予測因子としては重要性は示されていない。
•年齢が脳卒中患者のリハビリテーションにおける制限因子とされるべきではない。
Does age influence early recovery from ischemic stroke? A study from the Hessian Stroke Data Bank. C Kugler et al. (2003)
•前庭系の疾患の高齢者に対する前庭リハビリテーションの効果は、年齢差が大きな影響を与えることはない。The Effect of Age on Vestibular Rehabilitation Outcomes SL Whitney et al. ( 2002)
•TBI後の研究であるが、年齢は排便管理および排尿管理をはじめ一部のFIM項目のみについてリハビリテーションの結果に影響を与える可能性があると書かれており、FIM総合でなくFIMの項目各々に目を向けた方が良い事が書かれている。The effect of age on rehabilitation outcome after traumatic brain injury assessed by the Functional Independence Measure (FIM)AR Pedersen. et al. (2015)
明日への臨床アイデア
予後予測をする際に、年齢よりも入院時の重症度がより関わるようです。そのほかに、どのような因子が予後に影響を及ぼすか一緒に考えてみましょう。
脳卒中患者のFIMに関わる因子
脳卒中後の回復において、Functional Independence Measure (FIM)の改善に影響を与える因子は多岐にわたります。
1.初期の機能状態: 入院時のFIMスコアが高いほど、退院時の機能回復も良好です。初期状態が回復の重要な予測因子となります。
2.リハビリ開始のタイミング: リハビリを早期に開始することで、神経可塑性が促進され、機能回復が向上します。
3.リハビリの強度と頻度: 高強度かつ頻度の高いリハビリが、より良い回復結果をもたらします。
4.年齢: 若年者の方が神経可塑性が高く、回復が良好である傾向があります。
5.病変の位置とサイズ: 脳の損傷部位や損傷の広さが回復に影響を及ぼします。特に大きな損傷や重要な機能を持つ部位の損傷は回復を困難にします。
6.合併症の存在: 糖尿病や高血圧などの併存疾患がある場合、回復が遅れることがあります。
7.家族や介護者のサポート: 家族のサポートや介護者の関与が、患者のリハビリへの参加意欲を高め、回復を促進します。
8.精神的および感情的状態: うつ病や不安障害などの精神的健康状態が回復に影響を与えることが知られています。精神的な支援が重要です。
9.認知機能: 認知機能障害があると、リハビリテーションの参加や新しいスキルの学習が困難になり、FIMの改善に悪影響を及ぼします。
10.注意障害: 注意力の欠如は、リハビリテーション中のタスク完遂を妨げ、機能回復の遅れを引き起こします。
11.記憶障害: 記憶障害があると、リハビリテーションで学んだことを日常生活に応用するのが難しくなり、FIMの改善に影響します。
12.遂行機能障害: 計画、組織化、実行の能力に問題があると、リハビリテーションプログラムへの参加や日常生活のタスクの管理が困難になり、機能回復に影響を及ぼします。
13.言語障害: 失語症や他の言語障害は、コミュニケーション能力の低下を引き起こし、リハビリテーションの効果に悪影響を及ぼします。
14.リハビリの個別化: 患者ごとに異なるニーズに合わせた個別化されたリハビリ計画が、回復に大きな影響を与えます。
15.空間障害: 空間認知機能の障害、例えば空間無視や空間失認は、患者が周囲の環境を正しく認識し、適切に反応する能力に影響を及ぼします。これにより、日常生活動作(ADL)の遂行が困難になり、FIMのスコアが改善しにくくなります。
これらの因子は、患者の回復プロセスを理解し、最適な治療計画を立てるために重要です。リハビリの計画は、多くの要因を考慮して個別に調整する必要があります。
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)