vol.137:振動刺激と固有受容感覚 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
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カテゴリー
神経系
タイトル
姿勢のオリエンテーションにおけるアキレス腱振動の効果
Effect of Achilles tendon vibration on postural orientation. ?PubMed: Ceyte, H. Neurosci Lett. 2007
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・姿勢を保つ上で固有受容感覚は重要である。特定の筋もしくは腱に振動を与えることで、固有受容感覚に変化をもたらし、さらに姿勢を変化させることできると知った。より詳しく知りたいと興味を持ったため本論文を読もうと思った。
内 容
背景・目的
・筋や腱に適切な頻度と強度の振動を与えると、筋は伸張していると脳で認知される。これにより関節の位置を誤認知したり、振動された筋の収縮が生じたり、さらには姿勢に変化が生じる。
・例えば立位でアキレス腱に振動を加えると、体は後方へ揺らぎ、正中線の認識がずれる。
・本研究ではアキレス腱に振動を与え、被験者が姿勢をどう認知しているか検証する。
方法
図1:実験方法
Ceyte (2007)より引用
・12名の健常成人
・被験者は暗い部屋で、閉眼位で実験を行う。20分の介入を2回、1回の介入には12セッションあり、無振動3セッション×2と振動3セッション×2からなる。アキレス腱振動は90Hz。
・板の開始角度は7°後傾位、7°前傾位をランダムに始める。各セッションのあと、被験者はジョイスティックを使い板の角度を正中位に戻させる。実際の正中位と被験者が認識している正中位とのずれを計測する。
・筋電図にて利き足の前脛骨筋、腓腹筋外側頭、ヒラメ筋を計測。
結果
図2:実験結果(被験者が認知する正中位と実際の正中位の差)
Ceyte (2007)より引用
Vibration:振動あり、No Vibration:振動なし、Forward:前傾、Backward:後傾
・振動なしでは被験者は正中線を概ね捉えることができた。
・7°後傾と0°正中位で振動があった場合、被験者は正中位を後傾位と捉えることが多かった(図下の黒の棒グラフ2本)。
・7°前傾では振動ありでもほぼ正中位を捉えていた。
図3:実験結果(筋電図)
Ceyte (2007)より引用
GL:腓腹筋外側頭、Sol:ヒラメ筋、TA:前脛骨筋
・振動刺激によって腓腹筋外側頭とヒラメ筋に筋収縮が生じていた。
私見・明日への臨床アイデア
・振動刺激によって下腿三頭筋の筋紡錘は刺激される。図2より、板の角度が0°正中位の際、被験者は自身が正中位に位置していると認識できず、後傾位に板を動かした。
・この結果から読み取れるのは振動刺激によって筋は伸張していると錯覚するということである。逆に7°前傾位の場合、被験者の脳では筋が伸張位と認知し、実際の下腿三頭筋も伸張位であるため誤認知がなく、被験者は正中位を誤差少なく認識できている。また、刺激した筋に筋電位がみられたことも興味深かった。
・臨床応用として、可動域の改善に役立つかもしれない。脳卒中者の下腿三頭筋の過緊張に対し、前脛骨筋を振動刺激すると、前脛骨筋の筋紡錘は発火し伸張位であると錯覚し、伸張反射様に筋電位が生じる。同時に拮抗筋である下腿三頭筋に対しては抑制性に働き、同筋の過緊張を緩和し、可動域の改善につなげることが可能かもしれない。
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)