vol.187:肩甲骨後退運動時の上肢角度と僧帽筋・菱形筋ってどう働くの? 脳卒中/脳梗塞 片麻痺のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
バイオメカニクス、上肢
タイトル
僧帽筋上部線維と菱形筋筋活動に対する肩甲骨後退運動の効果
Effects of pulling direction on upper trapezius and rhomboid muscle activity
?pubmed Won-gyu Yoo J Phys Ther Sci. 2017 Jun; 29(6): 1043–1044.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
円背姿勢のような不良姿勢を呈し、上下肢への疼痛を訴える利用者は多い。姿勢の修正を図る際に肩甲骨から脊柱伸展を促すことがあるが、効果的な方法がないか検討していた。今回、上肢の屈曲角度を変えることで菱形筋、僧帽筋上部線維の筋活動がどう変わるかを検討した論文を見つけ、読もうと思った。
内 容
背景・目的
・頭部前突、脊柱後彎、肩甲骨前突位は不良姿勢と言われる。
・この姿勢では菱形筋は弱化し、僧帽筋上部線維、肩甲挙筋、大胸筋、小胸筋が過緊張になりやすい。
・本論文ではセラバンドを用いた肩甲骨後退練習にて、上肢の角度を変えることで、僧帽筋上部線維活動を最小限にし、かつ菱形筋の強化を図れる上肢の角度を探っていく。
方法
・健常成人15名
・EMGを菱形筋と僧帽筋上部線維に装着し、筋活動を測定
・座位にて緑セラバンドを使用し、肩甲骨後退をさせた。セラバンドの開始時の長さは30cmとした。
・condition1は肩屈曲90°、2は肩屈曲0°、3は肩屈曲30°、4は肩屈曲120°、5は肩屈曲60°とした。
結果
・condition5(屈曲60°)の僧帽筋上部線維の最大筋収縮は29.3±19.5%で、condition4(屈曲120)の15.9±10.5%に比べ、有意により大きかった。
・僧帽筋上部線維活動はcondition2(屈曲0°)で18.9 ± 13.1%、condition3(屈曲30°)で20.9 ± 17.7%、condition4(屈曲120°)で 19.9 ± 16.1だった。
・菱形筋の活動はcondition4(屈曲120°)で31.2 ± 9.8%であり、condition1(屈曲30°、22.5 ± 11.0%)とcondition5(屈曲60°、21.1%±10.8%)で有意差が見られた。
・conditions 2 (屈曲0°)とcondition3(屈曲30°)はそれぞれ27.2 ± 13.2% と24.9 ± 10.7%だった
私見・明日への臨床アイデア
・実験結果より、僧帽筋上部線維の活動を最も緩め、菱形筋の活動を高めたい場合は肩屈曲120°で行うのが最も効果的であることがわかった。
・自主トレで頭部前突、脊柱後彎、肩甲骨前突位の不良姿勢を修正する場合は、この角度を指導するのが妥当であると言える。利用者様への説明の根拠を持って行えるだろう。
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)