vol.181:舌の位置と筋活動の関係性 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
脳神経系論文に関する臨床アイデアを定期的に配信中。 Facebookで更新のメールご希望の方はこちらのオフィシャルページに「いいね!」を押してください。」 臨床に即した実技動画も配信中!こちらをClick!!(YouTube)
STROKE LABでは療法士向けの脳科学講座/ハンドリングセミナーを行っています!?上記写真をClick!!?
カテゴリー
バイオメカニクス
タイトル
舌の位置と筋活動の関係性Effects of tongue position on mandibular muscle activity and heart rate function.?pubmedへ Schmidt JE et al.(2009)
本論文を読むに至った思考・経緯
•ST分野とPT分野を統合的に考え、議論出来るように本論文に至る。
論文内容
背景
•顎関節症の疼痛管理では、筋活動が最小限に抑えられた休息位置を維持する事が筋関連の疼痛を軽減するのに役立ちます。その方法の一つとして舌の位置をセルフモニタリングして顎周囲の筋活動を抑制する方法があります。
研究目的
•本研究の目的は、疼痛の無い健常人において舌を口蓋または口底に置いたときの咀嚼筋群の活動および心拍数の変化(迷走神経の反応)を調べることを目的とした。
研究方法
•参加者は女性23人、男性18人で、平均年齢は19.6歳であった。
•表面筋電図を用いて筋活動を測定した。
•心拍を心電図を用いて測定した。
•舌の状態はベースライン、口蓋、口底の3つの条件で行った。
研究結果
•結果は、舌が口底に配置されたのと比較して口蓋に配置されたときに、側頭筋および舌骨上筋有意な活動を示し、ならびに心拍の有意な減少を示した。
結論
•顎を休息位置とするには、舌が口底に置かれているときに、いくつかの筋群におけるEMG活性の低下を示すため、疼痛管理としてはその方法を奨励し、舌を口蓋に押し付ける方法は促してはならないことが示唆される。
追記
•口蓋に軽く押し付けた側の側頭筋や舌骨上筋の活動増加を示しているも、咬筋の活動に有意差はなかったことを示している。The effects of tongue position on mandibular muscle activity.(Carlson CR et .1997)
•最近の機能的磁気共鳴映像法(fMRI)の研究では、口蓋に舌が配置された時に、口底に配置されたのと比べ皮質の活動が高くなり、脳領域に著しい差異があることを示されている。
私見・明日への臨床アイデア
•舌は口蓋の右側であれば、右側の側頭筋と舌骨上筋の活動を高め、舌骨も右上方へ移動する。
•相反的な舌骨下筋群との関係も考慮すると考える幅が広がりそうである。舌骨上筋が口蓋に対して、自身で行うと、舌骨下筋は舌の付け根辺りを触れると収縮する印象である。
•head forward postureまたは頭が下方を向いた様な姿勢では、両方共不活性となるため、まず舌骨上下筋群を活性するには良姿勢は大切と思われる。それと併せて舌の運動は舌骨周囲筋のトレーニングに良さそうである。
•anatomy trainではDeep front lineに関わる部分である。下肢体幹と関連付けて今後臨床で観察していきたい。
•嚥下では舌骨上筋は咽頭期において舌骨・喉頭を前上方へ挙上し、食道入口部を開き食塊を食道へスムーズに移動させることに関わるとされている。嚥下とリンクさせて考えていきたい。
氏名 覚正 秀一
職種 理学療法士
脳卒中自主トレ100本以上 一覧はこちら
病院内 スタッフ育成サポート
スタッフ教育を効率的に進めてみませんか?
ハンドリングや中枢神経系への教育は、STROKE LABへご相談ください。
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)