vol.190:動作観察と脳波について 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
脳科学
タイトル
健常人と脳卒中者における動作観察と運動イメージの際の脳波活動の違い
Differences in Brain Waves of Normal Persons and Stroke Patients during Action Observation and Motor Imagery?PubMed Junghee Kim J Phys Ther Sci. 2014 Feb; 26(2): 215–218.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・動作を観察する、動作をイメージすることで運動学習が促進されることは日常生活やスポーツの場面で感じるところである。しかし、脳卒中者の場合、動作を観たりイメージする際の脳波活動はそもそも同じなのか興味があり、本論文を読むことにした。
内 容
背景・目的
・運動イメージは、行動を起こさずにパフォーマンスを精神的に表したものであり、間接的な経験を誘発する内部刺激である。
・運動イメージは実際の活性行う際に誘発されるものと同様の筋活動と脳の活性を誘導することが知られている。
・脳卒中患者の研究では、トレーニング前後の体機能の変化のみを分析しており、脳活動の変化を捉えることはほとんどない。そこで、本研究では、脳卒中患者と正常人の脳波を行動観察と運動画像の条件下で調べ、比較した。
方法
・24名の被験者(12名健常成人、12名脳卒中者)
・実験プロトコルは①休息3分間→②動作観察3分間→③イメージトレーニング3分間→3分間休憩
・動作観察で見る動作は座位骨盤前傾、体幹回旋、立ち上がりの3つであり、イメージトレーニングも同様の動作を頭の中で行ってもらう。
・電極はFp1、2:前部前頭葉、C3、4:中心溝、P3、4:感覚野、O1、2:視覚野
※α波は休息時に見られ、認知活動に伴い減少する。β波は認知情報の処理や身体活動で減少し、新しい情報を学習する際に増加する。
結果
表:実験結果
健常成人
・α波は①休息時と③イメージトレーニング時に変化がなかったが、②動作観察にて減少した。
・②動作観察と①休息時を比較すると、動作観察時のβ波はFp1,Fp2,C3,C4で減少した。①休息時と③イメージトレーニングは全体的に増加傾向を示した。
脳卒中者
・α波の①休息と②動作観察を比較すると②で減少が見られる。①と③イメージトレーニングを比較すると③が増加傾向を示す。
・β波の①休息と②動作観察を比較すると、C3を除きすべての電極で活動増加を示した。①と③イメージトレーニングも同様にβ波の増加を示した。
私見・明日への臨床アイデア
・健常成人と脳卒中者ともに動作観察時はα波が減少し、認知活動が求められていることがわかる。
・群間で最も違いが見られたのは②動作観察時で、健常成人ではβ波は減少傾向、脳卒中者では増加傾向がみられた。本論文ではβ波の増減を以下のように定義している(β波は認知情報の処理や身体活動で減少し、新しい情報を学習する際に増加する)。この定義から考えると、脳卒中者にとって骨盤前後傾や体幹回旋は見慣れない、もしくはやり慣れない動作で、これらの動作を脳が新しい情報と認識したためβ波が増加したのかもしれない。
・臨床にて利用者様に骨盤前後傾のような運動をお願いしてもうまく伝わらないときがある。今回の脳波の結果のように、基本的な骨盤前後傾でも新しい情報と認識されている可能性があり、指導する側はこの差異を留意する必要があるのではないか。
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)