vol.239:脳卒中者の運転と筋活動 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
バイオメカニクス
タイトル
脳卒中者の運転時の筋活動
Muscle activation of drivers with hemiplegia caused by stroke while driving using a steering wheel or knob.?PubMed Jung NH J Phys Ther Sci. 2015 Apr;27(4):1009-11. doi: 10.1589/jpts.27.1009.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・脳卒中の利用者様が運転を希望されることは多い。今回運転時の筋活動を調べた論文を見つけ、興味深かったため読もうと思った。
内 容
背景・目的
・運転者は長時間ハンドルを操作する。脳卒中者の場合、ハンドルにノブをつけて運転することがあるが、その大きさや形によって運転しやすさや疲れやすさは変わる可能性が高い。
・脳卒中者の運転に着目した研究は少ない。したがって、本論文は運転時、ハンドルに取り付けたノブがどのように筋活動に影響するかを検証する。
方法
・5名の脳卒中者(左麻痺)と4名の健常成人
・ノブの取り付け位置はハンドルを時計と見立てたときの1時のあたりとした。
・実際の車を使用し運転速度は10~20km/hとした。5m直進、右折もしくは左折、5m直進を運転課題とした。
・筋電図電極を三角筋前部線維、上腕二頭筋、上腕三頭筋に貼付した。
・ノブ付きハンドルとハンドルのみの比較、脳卒中群と対照群の比較を行った。
図:実験姿勢 Jung NH (2015)より引用
結果
表:実験結果 Jung NH (2015)より引用
・左折の際、両群ともにハンドルの違いによる有意差は出なかった。右折の際、脳卒中群の上腕二頭筋はノブ付きハンドルよりもハンドルのみの方が有意に高い電位を示した。
・脳卒中群と対照群がノブ付きハンドルを使用した際の筋電位を比較すると、脳卒中群の上腕二頭筋は右折の際により低い値を示すことがわかった。
私見・明日への臨床アイデア
・ノブ付きハンドルとハンドルのみを比較すると、ハンドルのみでは上腕二頭筋の筋活動が高かった。筋活動が高いということは筋疲労につながる可能性がより高いと解釈でき、ノブ付きハンドルの方が運転しやすさにつながることを示唆している。運転を考えている利用者様に対し、車をどう改造するかも専門家としての意見を述べられるようにしていきたい。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
脳卒中自主トレ100本以上 一覧はこちら
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)