vol.307:ニンテンドーWiiスポーツと高齢女性の歩行 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
バイオメカニクス、歩行
タイトル
高齢女性の障害物有り歩行に対するニンテンドーWiiスポーツの運動学的効果
Kinematic effect of Nintendo Wii(TM) sports program exercise on obstacle gait in elderly women with falling risk.?PubMed Jung DI J Phys Ther Sci. 2015 May;27(5):1397-400. doi: 10.1589/jpts.27.1397.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・テレビゲームで身体を動かすのは日常生活に取り入れやすく、転倒リスクの減少につながる可能性がある。今回、Wiiを用いて転倒予防を図った論文を見つけたため読もうと思った。
内 容
背景・目的
・世界的に高齢者人口は増加しており、転倒を経験している高齢者も多い。高齢女性の場合、骨密度の低下から転倒による骨折リスクは男性よりも高いと言われている。
・Nintendo WiiTM Sports(以下Wii)は安価で狭いスペースでも行える上に、視覚聴覚フィードバックを与えることができるため運動学習効果も期待できる。
・したがって、本研究はWii使用前後のバランス能力と障害物有り歩行の変化を検証する。
方法
・24名の高齢女性(65歳以上)
・Wii群(NWS群)、腰椎スタビライゼーション群(LSE群)、コントロール群の3群に分けた
・LSE群は①ブリッジ②ブリッジ(一方の脚は伸展位)③ブリッジ(一方の足は挙上位)④四つ這い位⑤四つ這い位(交互に上肢挙上)⑥四つ這い位(交互に下肢挙上)⑦サイドブリッジ
・NWS群は①ウェイくボード②フリスビードッグ③ジェットスキー④カヌーゲームとし、この中の好きな3つを行うこととした。
・上記介入を8週間行った。
・アウトカムはBerg Balance Scale (BBS) 、functional reach test (FRT)、the timed up-and-go (TUG) testとした。さらに、障害物歩行の評価としてcrossing velocity (CV)とmaximum vertical heel clearance(MVHC)を計測した。
・CVは障害物をまたぐ際の速度で、またいだ際のつま先離地から踵接地まで水平面上の距離をそのかかった時間で割った値とした。MVHCは障害物をまたぐ際の垂直面上の距離とした。
・障害物は60 × 10 × 15.2 cm (width × length × height)とし、障害物まで5m歩き、障害物をまたぎ、その後3m歩く、という課題とした。
Functional reach testのお役立ち動画↓↓↓
バーグバランススケール↓↓↓
結果
表:実験結果 Jung DI (2015)より引用
・全てのアウトカムで介入前後、群間での有意差が見られた。
・MWS群とLSE群はコントロール群に比してBBS、FRT、CV値が有意に増加し、TUGとMVHCは有意に減少した。
私見・明日への臨床アイデア
・Wii群は腰椎スタビライゼーション群と同等の効果があることが示唆された。自宅で簡易に取り入れられるバランストレーニングで、今後よりいっそう普及するのではないかと考える。
職種 理学療法士
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)