【2022年最新】中殿筋の起始停止と作用・神経は?筋トレ、ストレッチ、自主トレ、評価、リハビリ論文サマリーまで
中殿筋:Gluteus medius(Gmed)
中殿筋は、殿部の上部外側に位置し、腸骨稜の下にあります。この筋肉は上部が幅広く、停止部に向かって狭まり、扇形状になっています。また、大殿筋は、中殿筋の前上方の1/3を除く、殿部全体を覆っています。中殿筋のカバーされていない部分が、筋肉内注射を安全に行うことができる領域となります。
中殿筋の起始停止
図引用元:VISIBLE BODY
起始:殿部または前殿筋線と後殿筋線の間の腸骨の外側表面と殿部腱膜
腸骨稜から下のほぼ坐骨神経節まで達する広い領域である
停止:中臀筋は3つの部分に分かれている
・後部繊維は前方および下方に伸びていく
・中部線維は下方に向かい伸びていく
・前部繊維は、後方および下方に伸びていく
すべての線維が組み合わさって扁平な腱となり、大腿骨転子上部の後側部と外側部に付着する
中臀筋の神経支配
・中殿筋は上殿皮神経 (根はL4,L5,S1) から供給されている
・皮膚への供給は主にL1,2によって行われる
中殿筋の機能
・中殿筋は股関節の外転の原動力である
・前部繊維は外転し、股関節の屈曲と内旋を補助する
・後部繊維は外転し、股関節の伸展と外旋を補助する
・股関節屈曲時には、すべての部分が股関節を内旋させ、股関節屈曲90度では中殿筋の内旋のテコが8倍になることが示されている
・中殿筋は、骨盤の前額面の安定性を維持する上で非常に重要な筋肉であり、同側の大腿筋膜張筋および対側の腰方形筋と共に、前額面の安定性を提供することが主な役割である「外側の筋膜スリング」を形成しています。
・中殿筋は、歩行、ランニング、片足での体重負荷の際に、反対側の骨盤が下がるのを防ぐ重要な筋肉です。足が地面から離れると、その側の骨盤は下方からの支持を失って下制する傾向があります。中殿筋は、骨盤の下制側を維持するように働き、その結果、もう一方の足を前に振り出し、次のステップに進むことができるようになります。
・中殿筋はまた、小殿筋と大腿筋膜張筋の補助により股関節の回旋を生成することで、歩行中の骨盤を支えています。逆に、立脚相では同じ側に作用して股関節を支持します。
・中殿筋は様々な下記のような原因で抑制されやすい筋肉の1つである。
・骨盤が横方向に振られ、股関節が内転した状態で片側の下肢に体重を移動して立つこと。
・2つの下肢の間に梁がない状態で横向きに寝ると、上の脚が屈曲し、もう一方の脚に内転してしまいます。
・長時間足を組んで座ると、筋肉をやや伸ばした状態(安静時の生理的長さを超えて)にして、股関節外転筋を弱める可能性があります。
・股関節内転筋が硬くなると、中殿筋が抑制されます。
中殿筋が抑制されると、体は前額面の安定性を維持し、骨盤が下がるのを防ぐために他の筋肉で補おうとするため、同側の大腿筋膜張筋と対側の腰方形筋の活動が増加し、これらの筋肉が硬くなり、過活動になります。
N.B Jandaは、腰方形筋と大腿筋膜張筋は緊張性の筋肉であり、硬く過活動になる傾向があると述べています。
この筋肉の弱さは、下肢筋骨格系の病理学や脳卒中後の歩行障害と関連しています。中殿筋が弱いか機能不全であることと、以下のような多くの下肢の損傷と関連しています。
トレンデレンブルグ歩行、腸脛靱帯(ITB)症候群、膝蓋大腿疼痛症候群(PFPS)、前十字靱帯(ACL)およびその他の膝の怪我、足首の怪我などです。
トレンデレンブルグ徴候は、痛み、機械的な問題または筋力低下により筋肉が効率的に働かない場合、骨盤は弱点と反対側に下がります。
Trendelenburgサインの有効性に関する非常に印象的な研究によると、このテストは、中殿筋の強度が30%BWより大きい健康な人には使用すべきではないことが示されています。
このテストは、著明な筋力低下患者にのみ使用することができます。これは、実際に中殿筋が抑制されている可能性があり、トレンデレンブルグ徴候は陰性であることを意味します。
トレーニング
中殿筋の活性化に役立つ多くのエクササイズがあり、それぞれのエクササイズは、EMG活動によって示されるように、ある割合で中臀筋を活性化します。
それらを以下のように分類します。
※MVIC = maximum voluntary isometric contraction
プローン・ブリッジ又はプランク (27% ± 11% MVIC)
安定面でのブリッジ (28% ± 17% MVIC)
ランジ動作-体幹ニュートラルポジション(34% MVIC)
片側ハーフスクワット (36% ± 17% MVIC)
股関節屈曲60°のクラム(38% ± 29% MVIC)
サイドランジ (39% ± 19& MVIC)
股関節屈曲30°のクラム (40% ± 38% MVIC)
※クラム 側臥位でのまた開き(貝を開くようにとの意味)
図引用元:https://www.shawephysio.com/anterior-knee-pain/clamshell/
側方段差昇降 (41% MVIC)
対側の腕や下肢を持ち上げる四つ這い (42% ± 17% MVIC)
前方段差昇降 (44% ± 17% MVIC)
片側ブリッジ (47% ± 24% MVIC)
壁もたれスクワット (52% ± 22% MVIC)
側臥位での股関節外転運動(56% MVIC)
骨盤下制 Pelvic Drop(57%±32% MVIC)
片脚デッドリフト(58%±22% MVIC)
※Pelvic Drop exercise
片足スクワット (64% ± 24% MVIC)
サイドブリッジから脊柱をニュートラルポジションへ(74%±30%MVIC)
プローンブリッジ/プランクは、他のエクササイズと異なり、股関節と脊椎のニュートラルポジションを維持する静的エクササイズであるため、股関節と脊椎のスタビライザーとしての中殿筋の役割にフォーカスしたエクササイズです。
中臀筋の評価
触診
大転子の上にある腸骨稜の中央を探し、指2本分下にある大殿筋の大部分を触診します。片脚立ちを交互に行うと、筋肉の収縮を感じることができます。
中臀筋の筋力評価(MMT)
・側臥位での股関節外転(MMTで使用される運動)
・両脚または片脚スタンステスト
・片脚立位テストに上半身の動きを加える
・踏み台昇降、歩行、ランニングなど片足立ちを必要とする機能的なタスクの評価
リハビリテーション
まず、中殿筋の抑制や弱化の原因を見つけ、それを防ぐようにし、次に中殿筋の活性化を図る必要があります。
Pressmanらは、中殿筋の弱化を強化するための漸進的なプログラムについて述べています。
クラムシェルエクササイズ、側臥位股関節外転、立位股関節外転、基本的な片足バランスエクササイズなどの非荷重および基本的な荷重下のエクササイズを行います。片足立ちで骨盤を30秒間水平に保つことができるようになったらエクササイズを次段階に進めていきます。
体重をかける運動と安定性運動の負荷の上げ方は、
(i) ステップ運動やホッピング運動によって重心を水平方向に移動させます
(ii) 支持基底面の幅を小さくする
(iii) 腕や手に持った重りを高くして重心を高くします
(Ⅳ) 不安定面で運動を実施することによって徐々に負荷を上げます
References
1. Reiman, M. P., Bolgla, L. A., & Loudon, J. K.. A literature review of studies evaluating gluteus maximus and gluteus medius activation during rehabilitation exercises. Physiotherapy Theory and Practice,2012: 28(4): 257–268.
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中殿筋に関わるリハビリ論文サマリー
カテゴリー
バイオメカニクス
タイトル
片脚立位時の股関節外転による中殿筋活性化
Activation of the gluteus medius according to load during horizontal hip abduction in a one-leg stance?PubMed Jae-Woong Lee J Phys Ther Sci. 2015 Aug; 27(8): 2601–2603.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
上肢運動の負荷を変化させたとき、片脚立位時の中殿筋の活動がどう変わるかを調べた論文で、興味深かったため読もうと思った。
内 容
背景・目的
・中殿筋の弱化は股関節の高さに違いを生み、腰痛や下肢痛の原因となる。また、変形性股関節症、膝関節症の一因になったり、股関節の外旋を低下させたりすると報告がある。
・本研究は片脚立位によって中殿筋の活性化が図れるかを検討する。
方法
・24名の健常成人
・筋電図によって中殿筋後部線維の筋電位を計測した。
・被験者は片脚立位になり、荷重をかけている下肢側の上肢を机の上に置く。体幹を90°屈曲し、背中・挙上側の下肢は地面と平行とした。この姿勢で腰椎骨盤を回旋するよう指示した。
・実験は4条件で行い、①上記姿勢、②上肢90°外転、③上肢90°外転+1kg重り、④上肢90°外転+3kg重りとした。
結果
表:実験結果 Jae-Woong Lee (2015)より引用
・上肢負荷が増えるにつれて中殿筋後部線維の電位は上昇した。上肢重り3kgのみ他の3条件と有意差が得られた。
私見・明日への臨床アイデア
・実験姿勢はやや特殊だったが、上肢運動の負荷が増えるにつれて中殿筋後部線維の活動も高まることが証明された。比較的運動機能の高い利用者様に使えるかもしれない。
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)