【2024年版】筋紡錘・腱紡錘の加齢による変化とその対策:退行性変化への効率的アプローチ法を徹底解説! – 脳卒中/神経系 自費リハビリ施設 東京 | STROKE LAB
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【2024年版】筋紡錘・腱紡錘の加齢による変化とその対策:退行性変化への効率的アプローチ法を徹底解説!

筋紡錘・腱紡錘の加齢変化について

1. はじめに

金子先生(リハ医):

「さて、丸山さん。今日は筋紡錘と腱紡錘の加齢変化について話します。これらは運動制御や姿勢保持に重要な役割を果たしますが、加齢によって変化します。この知識を活用すると、患者さんの転倒予防やリハビリプランをより効果的に組み立てられるようになりますよ。」

2. 筋紡錘の基礎知識

金子先生:

「まず筋紡錘の役割について復習しましょう。筋紡錘は筋の伸張を感知する感覚器で、筋肉内に分布しています。中枢神経に情報を送ることで、伸張反射や筋トーヌスの調整に関与します。構造的には以下の3つの要素があります。」

  • 核袋線維:動的・静的な長さの変化を感知。
  • 核鎖線維:筋の静的長さを感知。
  • 求心性神経:Ⅰa線維とⅡ線維が情報を中枢へ伝達。

3. 筋紡錘の加齢変化

丸山さん(療法士):

「加齢で筋紡錘はどのように変化するんですか?」

金子先生:

「筋紡錘は加齢とともに感受性や構造が変化します。主なポイントは以下の通りです。」

  1. 数の減少:
    • 筋紡錘の密度が減少し、特に大腿四頭筋やヒラメ筋のような抗重力筋で顕著です。
    • これにより伸張反射が弱まり、バランス保持能力が低下します。
  2. 求心性神経の伝達速度の低下:
    • 加齢に伴い、Ⅰa線維とⅡ線維の伝導速度が遅くなります。
    • 結果として、中枢への感覚情報の遅延が生じます。
  3. 静的感受性の変化:
    • 静的感受性は維持されることが多いですが、動的感受性が低下します。
    • これは転倒リスクの増加に関連しています。

4. 腱紡錘の基礎知識

金子先生:

「次に腱紡錘について話しましょう。腱紡錘は筋と腱の境界部分に存在し、筋張力を感知する感覚器です。」

  • 役割:筋の張力を感知して過剰な収縮を防ぐ役割を持ちます。
  • 構造:筋紡錘とは異なり、Ⅰb線維を通じて中枢へ情報を送ります。

5. 腱紡錘の加齢変化

丸山さん:

「腱紡錘も加齢で変化するんですか?」

金子先生:

「その通りです。腱紡錘も以下のように変化します。」

  1. 感受性の低下:
    • 筋張力の感知が鈍くなり、過剰な筋収縮を防ぐ能力が低下します。
    • 特に重い荷物を持ち上げる際の誤った筋使用を助長します。
  2. 情報伝達の遅延:
    • Ⅰb線維の伝導速度が遅くなり、リアルタイムなフィードバックが難しくなります。
  3. 反射経路の鈍化:
    • ゴルジ腱反射の効率が低下し、筋や腱の過負荷による損傷リスクが高まります。

6. 加齢変化に基づくリハビリテーションの応用

金子先生:

「では、これらの加齢変化を踏まえて、どのようにリハビリに活かすかを考えましょう。」

(1) 筋紡錘に基づくアプローチ

  1. 動的なバランス訓練:
    • 加齢で低下する動的感受性を補うため、動きの中でのバランス訓練を導入します。
    • 例:不安定板やバランスパッドを用いた訓練。
  2. 筋の伸張性を高める訓練:
    • ストレッチングやPNF(固有受容性神経筋促通法)を活用し、伸張反射の閾値を下げる。
  3. 神経伝達速度を刺激する練習:
    • 短時間で繰り返す動作を取り入れ、伝導速度を維持・改善。

(2) 腱紡錘に基づくアプローチ

  1. 負荷漸増訓練:
    • 適切な荷重負荷をかけることで腱紡錘の感受性を高めます。
    • 例:低負荷→中負荷の順に段階的に負荷を上げる。
  2. エキセントリックトレーニング:
    • 筋収縮の減速段階を強調する訓練。筋張力の調整能力を高める効果があります。
  3. 感覚刺激トレーニング:
    • 振動刺激やタッピングなどで腱紡錘の感覚情報を活性化。

7. 症例検討

丸山さん:

「実際に高齢の脳卒中患者さんでどのように応用できるか、症例を教えていただけますか?」

金子先生:

「以下のケースを参考にしてください。」

  • 患者:76歳男性、左片麻痺。立ち上がり動作で膝折れが頻発。
  • 課題:筋紡錘と腱紡錘の低下による筋トーヌス調整不全が原因。
  • アプローチ
    1. 動的バランス訓:バランスパッド上で座位から立位への移行を練習。
    2. エキセントリックトレーニング:大腿四頭筋の収縮をゆっくり行う訓練を実施。
    3. タッピング刺激:膝蓋腱部への軽い叩打で感覚入力を促進。

8. まとめ

金子先生:

「筋紡錘と腱紡錘の加齢変化を理解することは、患者さんの転倒予防や動作改善の鍵となります。特にリハビリの現場では、加齢変化に応じたプログラムを提供することが重要です。」

丸山さん:

「ありがとうございました!次の臨床で早速活用してみます。」

論文内容


 
 
 カテゴリー

神経系

タイトル

体性感覚器の加齢:翻訳的視点

Aging of the somatosensory system: a translational perspective.?PubMed Shaffer SW Phys Ther. 2007 Feb;87(2):193-207. Epub 2007 Jan 23.


 
 

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

筋紡錘の加齢による変化を知りたかったため、本論文を読もうと思った。
 
 

内 容

筋紡錘 構造と機能

図:筋紡錘 Shaffer SW (2007)より引用

 
 
・筋の伸張を感知する器官で、筋の長さと収縮の速さの情報を脳に送る。
 
・結合組織と錘内線維で構成されており、錘外線維と平行に配列されている。
 
・錘内線維は核袋線維と核鎖線維で構成されており、付着部の錘内線維は収縮組織、中央は非収縮組織である。
 
・核袋線維、核鎖線維はIa群線維、Ⅱ群線維と通して感覚情報を脳へ送っている。
 
・γ運動ニューロンは錘内線維の収縮組織を収縮させ、伸張に対する感度を調整している。特に筋が短くなった際に働く。
 
・筋紡錘からα運動ニューロンへの信号は単シナプス性の伸張反射となり、一方で脊髄介在ニューロンを経由し他の筋を促通、抑制することで協調的な運動を可能としている。
 
・α、γ運動ニューロンは関節・皮膚受容器、脊髄介在ニューロンからの統合された情報も受けている。
 
 

筋紡錘 加齢変化

・ヒトの遺体を用いた研究では、筋紡錘細胞膜の肥厚と錘内線維の減少が認められた。また、軸索の球状浮腫、運動終盤の拡大、脱神経による筋紡錘の変形がみられた。
 
・他の研究では三角筋、短指伸筋に筋紡錘直径の減少があり、加齢とともに径の減少がみられたが、大腿四頭筋、上腕二頭筋には見られず、径の減少は部位特異性があると示唆された。
 
・また、上腕二頭筋を調べた研究では錘内線維、核鎖線維の減少がみられた。一方で核袋線維に減少はみられなかった。この研究から加齢により静的な筋の長さ感知(一定長にある筋の長さを知覚する)に影響がでるのではと筆者の意見があった。
 
・ラットを用いた研究では、筋紡錘の静的、動的感度は加齢とともに減少することがわかった。
 
 

筋紡錘・腱紡錘の加齢変化に抗するためのリハビリと健康管理

加齢による筋紡錘・腱紡錘の変性を抑え、感覚機能と筋力を維持するための具体的なリハビリテーション手順と、患者が日常生活で取り入れられる健康管理方法を解説します。

1. 筋紡錘の加齢変化に対応するリハビリ手順

(1) 動的バランス訓練

目的:筋紡錘の動的感受性を高め、反射経路を活性化。

  • 手順
    1. 不安定面上での立位保持訓練:
      • 不安定板やバランスパッドを使用。両脚から片脚立ちへ進行。
      • 時間:1セット1分 × 3回。休憩1分。
    2. 動作中のバランス調整訓練:
      • 軽い重心移動(前後・左右)を加え、感覚入力を刺激。
  • 注意点
    1. めまい・ふらつきが強い場合はサポートが必要。
    2. 感覚入力を過剰にしないため、患者の耐性を確認する。

(2) 筋紡錘感受性向上のための神経筋促通法(PNF)

目的:伸張反射を活性化し、筋紡錘の機能を維持。

  • 手順
    1. パターン練習
      • 上肢・下肢のPNFパターンを実施。
      • 動作中に軽い抵抗を加え、筋紡錘の動的感受性を高める。
    2. リズム的安定化訓練
      • 座位や立位で軽い抵抗を加えながら、等尺性収縮を促す。
  • 頻度
    1. 週2~3回、1セッション15~20分。

(3) 動作中の反射系トレーニング

目的:中枢神経系と末梢感覚の連携を強化。

  • 手順
    1. 振動刺激トレーニング
      • 小型の振動デバイスを用いて、特定の筋肉群に振動刺激を与える。
      • 部位:抗重力筋(大腿四頭筋、ヒラメ筋など)。
    2. 階段昇降やトランポリンエクササイズ
      • 適度な動的活動を行い、筋の伸張感覚を繰り返し入力。

2. 腱紡錘の加齢変化に対応するリハビリ手順

(1) エキセントリックトレーニング

目的:筋腱複合体の張力調整能力を強化。

  • 手順
    1. 低負荷のスクワット運動
      • 椅子からゆっくり立ち上がり、また座る動作を繰り返す。
      • 強調点:下ろす動作(エキセントリック相)を3~5秒かけて行う。
    2. カーフレイズ(ふくらはぎ挙上)
      • つま先立ち後、ゆっくり踵を下ろす。
  • 頻度
    1. 週3回、1セット10~15回を2~3セット。

(2) 負荷漸増トレーニング

目的:腱紡錘の感受性を高め、過剰負荷への適応を促す。

  • 手順
    1. 低重量のレジスタンストレーニング
      • ウェイトを使用して、徐々に負荷を増やす。
      • 筋群:ハムストリングス、大腿四頭筋、上腕二頭筋など。
    2. 等尺性トレーニング
      • 筋を一定の長さで収縮させ、張力を維持。
  • 注意点
    1. 初期は負荷を軽くし、徐々に増加。疼痛が生じる場合は中止。

3. 健康管理の具体的アプローチ

(1) 日々の運動習慣

  • ウォーキング
    • 適度な速度で1日20~30分。
    • 地面の感覚入力を増やすため、時に砂利道や芝生の上を歩く。
  • ストレッチ
    • 起床後・就寝前に、全身の主要筋群を対象とした軽いストレッチを実施。
    • 筋紡錘・腱紡錘への持続的な刺激を与える効果が期待できる。

(2) 栄養管理

  • タンパク質摂取
    • 筋肉・腱の再生促進のため、1日体重1kgあたり1.0~1.2gのタンパク質を摂取。
    • 推奨食品:卵、魚、大豆製品。
  • ビタミンDとカルシウム
    • 骨格筋機能を維持するため、ビタミンD(800~1000IU/日)とカルシウム(1000mg/日)の摂取を推奨。

(3) 自己モニタリング

  • バランステスト
    • 自宅で片脚立ちテストを実施し、左右差や持続時間を記録。
    • 改善が見られない場合は医師や療法士に相談。
  • 筋張力チェック
    • 軽い荷物(1~2kg)を持ち上げる感覚を日々確認。過剰な負荷感がある場合は筋力低下の可能性を評価。

4. 医師としての指導ポイント

  1. 段階的進行の重要性
    患者の状態に合わせ、無理のない進行プランを立案。
  2. 感覚フィードバックの重視
    運動中に患者へリアルタイムで感覚フィードバックを提供。
  3. 患者教育の徹底
    筋紡錘・腱紡錘の役割やリハビリの目的をわかりやすく説明し、モチベーションを向上。
  4. 多職種連携
    栄養士や理学療法士と連携し、包括的なケアを提供。

5. 結論

筋紡錘・腱紡錘の加齢変化に対抗するためのリハビリと健康管理は、患者の転倒リスクを低減し、生活の質(QOL)を向上させる鍵となります。日常生活に根ざしたアプローチと、継続的な専門的サポートが重要です。

年齢を重ねると必ず退行性変化を筋紡錘・腱紡錘に生じるの?

年齢を重ねると、筋紡錘腱紡錘に退行性変化が生じることが多いですが、必ずしもすべての人に同じ程度に起こるわけではありません。これらの変化の程度や進行速度は、遺伝的要因、生活習慣、身体活動量、慢性疾患の有無などによって異なります。

「必ず」退行性変化が起こるわけではない理由


  1. 身体活動が影響

    • 定期的な運動や筋力トレーニングは、筋紡錘と腱紡錘の感受性を維持または改善する効果があることが示されています。

  2. 疾患との関連

    • 糖尿病や慢性炎症性疾患などがある場合、退行性変化が早く進むことがあります。
    • 健康状態が良好であれば、退行性変化は緩やかです。

  3. 神経可塑性

    • 神経系の可塑性によって、筋紡錘や腱紡錘の機能低下を補うように中枢神経が適応することもあります。

実臨床の視点

患者に対しては、加齢による変化を「不可避」として捉えないよう説明し、適切な運動や健康管理がこれらの変化を遅らせたり、回復させる可能性があることを強調します。これは患者のモチベーションを高めるだけでなく、健康寿命の延伸にも寄与します。

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