vol.328:立ち上がり時の筋活動 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
バイオメカニクス
タイトル
立ち上がり動作における筋電活動 Patterned electromyographic activity in the sit-to-stand movement. ?PubMed Goulart FR Clin Neurophysiol. 1999 Sep;110(9):1634-40.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・立ちあがりにおける筋活動を知りたかったため
内 容
背景・目的
・本論文は立ち上がり動作における筋電活動を計測することを目的とする。
方法
・20名の健常成人(12名男性、8名女性。25歳~45歳) ・前脛骨筋(TA)、ヒラメ筋(SOL)、大腿四頭筋(QUA)、ハムストリングス(HMS)、腹直筋(ABD)、腰部脊柱起立筋(LPS)、胸鎖乳突筋(SCM)、僧帽筋(TRA)に電極を貼付した。 ・43センチの椅子を使用し、上肢を胸の前で交差した状態で立ち上がりを行った。 ・立ち上がりは以下の6条件で行った。 図:6条件 Goulart FR (1999)より引用 ① 正常座位 ② 足部を前方に位置した座位 ③ ①の肢位から膝を最初に動かして立ち上がる ④ ①の肢位から体幹を最初に屈曲して立ち上がる ⑤ ①の肢位から顎、首を実験者が支持した状態で立ち上がる ⑥ 体幹をアップライト肢位にして立ち上がる
結果
図:実験結果 Goulart FR (1999)より引用 条件①について ・全被験者が動作開始時に前脛骨筋の弱い筋電位を記録した。 ・腹直筋は被験者11名で動作開始時の活動が認められた。残り9名は電位記録が遅かった。 ・胸鎖乳突筋は12名で図のように僧帽筋と交互に収縮が見られたが、8名では僧帽筋との同時収縮がみられた。 ・離殿の際には腰部脊柱起立筋、ハムストリングス、大腿四頭筋の電位が得られた。 ・ヒラメ筋は動作終盤で活動が見られた。 条件③ ・腹直筋の活動が見られなかった。 条件⑤ ・胸鎖乳突筋と僧帽筋の活動が見られなかった。 表:各条件の動作開始までの時間、離殿までの時間、全動作終了までの時間 Goulart FR (1999)より引用 ・条件⑥が最も速く動作開始・離殿が生じ、全動作時間も短かった。 ・動作開始が最も遅かったのは条件②、離殿が最も遅かったのは条件④だった。 表:各筋、条件ごとの動作開始時と離殿時の時間差 Goulart FR (1999)より引用 ・条件②、④は前脛骨筋の活動が有意に遅かった。 図:各条件の筋電位 Goulart FR (1999)より引用 ・前脛骨筋、ヒラメ筋、腹直筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋は条件間の違いが大きく、腰部脊柱起立筋、大腿四頭筋、ハムストリングスは条件間の違いが少なかった。
私見・明日への臨床アイデア
・条件間の違いが大きいヒラメ筋、腹直筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋は姿勢調節筋と説明されていた。(支持基底面内に身体重心を置く)逆に腰部脊柱起立筋、大腿四頭筋、ハムストリングスは立ち上がり時の重心上方移動のための動力源であることが示唆されていた。 ・利用者の立ち上がりのパターンを6条件に当てはめると筋活動を予想できるかもしれない。 ・今回は上肢を制限しているが、臨床では上肢を使わないで立つ利用者は稀であると感じる。上肢は重心前方・上方移動に寄与できるのは間違いない。上肢の影響を調べてみたい。
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)