vol.23: 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー:足部位置による立ち上がり時の筋活動パターンと多関節運動連鎖 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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vol.23: 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー:足部位置による立ち上がり時の筋活動パターンと多関節運動連鎖

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カテゴリー

バイオメカニクス
 
 
 

タイトル

足部位置による立ち上がり時の筋活動パターンと多関節運動連鎖 Muscle synergies and joint linkages in sit-to-stand under two initial foot positions←Pubmedへ Khemlani MM et al.:Clin Biomech (Bristol, Avon).1999 May;14(4):236-46
 
 
 

内 容

目 的

●本研究の目的は,2つの初期の足位置から立ち上がる時の下肢筋活性化パターンを調査し筋活動開始と動作力学との関係を検討すること.
 
 
 

方 法

●20~30歳の男性9名を被験者とし,2つの足位置(Foot front,Foot back)から立ち上がる時の大腿二頭筋(BF)・大腿直筋(RF)・外側広筋(VL)・前脛骨筋(TA)・腓腹筋(GAST)・ヒラメ筋(SOL)活性を計測.
 
●被験者は床反力測定盤の上に右足を配置し,高さ調整席に座り・立ち上がりをビデオテープで録画・
 
 
 

結 果

●Foot frontでは,体重を前進させなければない距離と運動時間の増加,股関節を反映している体幹部分の屈曲速度と変位に有意な増加が認められた.
 
●しかしながら,開始と連鎖・筋活動の持続時間は2つの条件で一貫していた.
 
●また,股関節・膝関節・足関節の伸展開始と,それに付随する筋活動は足の位置に応じて相関していた.
 
キャプチャキャプチャ2 図1:Foot backとFoot front(Khemlani MMら1999)
 

Foot Backに比べFoot Frontでは全体の運動期間とextension phaseに延長を認めた.しかし,pre-extension phaseに有意に差は認められなかった.pre-extension phaseとextension phaseの間の比率は2つの条件で同じまま全体的な運動増加がみられていることは,extension phasenの増加であることを示している.

 
キャプチャ3キャプチャ4 図2:2つの状況下での各伸展開始時(Khemlani MMら1999)
 

両方の条件では下肢関節伸展の開始からの連続は同じであり,膝関節伸展から始まり股関節,そして足関節伸展に続いていた.しかし,Foot frontでは股関節は早期に伸展し始め,足関節底屈は運動の後期に起こった.また,膝関節・股関節伸展と足関節底屈の開始タイミングは2つの足位置間に有意差があることを証明した.各関節の伸展開始は他の関節の伸展開始と相関した.関節の線形関係が両足配置と全体の調整に存在したことを示した.

 
キャプチャ5 図3:2つの足部位置での筋活動パターン
 

2つの足位置下で6つの筋活動パターンを例示している.筋活動の始まりと続く順番は2つの足において同じであった.TAが最初に活性化しRF,BFとVLが続いて活性化していた.そして,その全てはThighs‐off前に起動していた.GASTおよびSOLはThighs‐off後に活性化され,活動の開始は2つの条件下で変動性を示した.Foot backに比べFoot frontの方がGAST,SOLは早期に起動した.

 
キャプチャ6 図4:各伸展開始時における筋連結
 

Foot backではRFとGASTの起動タイミングは膝関節伸展の起動と関連があった.しかしFoot frontでは膝関節伸展が単関節筋VL,TAとSOLにリンクされた.(a)Foot frontではTAとVLは1つの単位として組み合わさっている.そしてFoot backではGAST,SOLと足関節底屈始まりは相関した.(b)足首で下腿前傾させるだけでなく,脛骨を安定させることをTAとVLの機能的な繋がりは可能としている.このようにVLが安定した下腿上での膝関節伸展を可能にする.しかし,Foot backは垂直ジャンプにおいて提案されるように膝関節伸展と体重の前方への変化を減速するためGASTとSOLは結ばれる.Steindlerによって提案されるようにSOLは下腿を後傾することよって膝伸展にも関与する.また,Lonbard、Molbech 、CarlsooとZajacによって提案されるように足が固定されることでGASTは,膝関節伸展の後期に膝伸展の働きをする.Foot frontでは、膝関節と足関節の伸展機能の始まりとは異なり、股関節伸展の始まりはVLがあるが、その他は2つの足位置条件で類似するBF、TAとGASTと相関する。TAは足関節を背屈させ、足/下腿を安定させるように作用するため、この筋肉は股関節の回転に関節的に影響を与えている可能性がある。また,TAは足の上に体重を移動させることを含む階段の上りにおいて,股関節屈曲に寄与していることが示唆される.TAは立ち上がりや階段の上りで,股関節の角加速度に寄与することができ,関節反力を経由して別の部位から送られた慣性力を介して,それが伝わらない関節に貢献しているのかもしれない.

 
 
 

結 論

●TAは本研究において両方の状況で最初に起動する筋肉であった.
 
●早期より起動することは,足を安定させること,そして下腿を前傾し体重の前方移動を援助することに貢献する.
 
●TA起動後にRFとBFがほぼ同時に起動したが,これは股関節屈曲から伸展へ変わる相までに屈曲を減速することに役立つ.
 
●RFはpre extensionの終わりに起動していることから初期の股関節屈曲には関与していない.よって腸腰筋は,骨盤と大腿に及ぼす作用によって運動開始時に重要な役割を果たさなければならない.
 
●一般的に膝関節屈曲と考えられているBFは下腿を後傾することに役立つ。そして、RFとその次に起動するVLの活動を強化することによって膝を伸ばす.
 
●この起動が2つの足位置の状況で膝関節伸展の開始直前に一貫して起こった.それは膝関節伸展に貢献していることを意味する.
 
●両方の状況において,GASTとSOLはThighs-off後に活性化していた.
 
●筋肉の発生タイミングにばらつきがあることは,sit to standの姿勢調整に貢献し,起立における姿勢安定性に寄与し得ることが示唆されている.
 
●特に頭・腕・体幹から成立する上半身が足の上に中心軸を成し,体重の水平移動から静かな立位で運動を終了するためのコントロールしなければならない中で,両方の筋肉は重要である.
 
●異なる機能的なSit-to-standと行動下で異なる関節上に働いている筋肉が,時間的に関連して繋がりがあるよう調節され利用されているかもしれないことを示唆.
 
 
 

臨床上の意義

●この研究の調査結果から,下肢筋力の生成に障害のある人達と股関節疾患に罹った人々がFoot frontから立ち上がることを避けなければならないことを我々は同意する.
 
●また,立ち上がる前に椅子が足を気持ちよく後ろに置けられるようになっていなければならないという提案を支持する.
 
●TAは運動の始まりから活動的だった.そして,その機能が足を安定させることによって間接的に体幹の角加速度に貢献することになっていた.
 
●SOLの筋力低下または痙縮により床上で足を安定させることができないことは,体重の前への変化を邪魔することとなる.
 
●筋力低下患者にsit to standを行う時に,膝関節伸展が膝を伸ばす際に安定した脛骨があるように必要に応じて外制約を用いて安定するよう後ろに置かれる足と下腿の状態で訓練されなければならない.
 
●活発にFoot backから立ち上がることはSOLを伸ばす.SOLの伸張性は立位時にきわめて重要.
 
●locomotion研究は伝統的に歩行に集中してきたが,椅子から立ち上がる力学への関心も高まっている.脳卒中後と虚弱高齢者における関節炎を持つ人,腰痛などの特定疾患群に生体力学的な課題になることができる.
 

執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表

・国家資格(作業療法士)取得

・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務

・海外で3年に渡り徒手研修修了

・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆

 
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