vol.240:振動刺激と立ち上がり・歩行 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
バイオメカニクス
タイトル
固有受容感覚に対する刺激は若年健常成人の立ち上がりから歩行動さを改善するか?
Does proprioceptive system stimulation improve sit-to-walk performance in healthy young adults??PubMed Marcelo P. Pereira J Phys Ther Sci. 2015 Apr; 27(4): 1113–1116
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
以前に振動刺激と固有受容感覚に対する論文をブログにて掲載したが、今回立ち上がりと歩行にどう影響するかを検討した論文をみつけ、読んでみたいと思った。
内 容
背景・目的
・筋に対する振動は筋紡錘の活動を高めることができる。振動刺激による求心性入力は脳に筋が伸張していると錯覚させることにつながり、結果として伸張反射を誘発することができる。
・過去の研究で前脛骨筋、大腿直筋、僧帽筋上部線維に対する振動刺激が身体重心を前方に移動させるということがわかっている。この身体重心の前方移動を高齢パーキンソン病患者の歩行一歩目の改善につなげられないか、という仮説が本研究の根幹である。
・しかし、その前段階として本研究では健常成人に対し振動刺激が立ち上がりから歩行までの動作を改善するか検討する。
方法
・15名の若年健常成人
・振動装置は前脛骨筋、大腿直筋、僧帽筋上部線維に貼付
・被験者は椅子から立ち上がり、歩き出す動作を区切りなく行ってもらった。
・振動は①振動なし(Non Nib)、②動作時に振動(Du)、③動作前に振動(Be)の3条件とした。
・動作解析装置による身体各体節の動きを数値化した。また、身体重心(COM)を計測した。
・立ち上がり~歩行を4相に分けた
①屈曲相(体幹屈曲~離殿)
②伸展相(離殿~立位)
③移行相(踵が離れ振り出しが始まるまで)
④実行相(振り出した下肢の踵が接地するまで)
結果
表1(上)・表2(下):実験結果 Marcelo P. Pereira (2015)より引用
・表1より、各相の所要時間に3群間の有意差はなかった(振動刺激が立ち上がりや振り出しを速めることはなかった)。
・表2より、COMの変位や速度に群間の差は見られず、振動刺激は身体重心の前方移動を誘発するという結果には至らなかった。
私見・明日への臨床アイデア
・今回振動刺激の有無は立ち上がりや動作に影響を与えることはなかった。しかし、固有受容器への刺激や伸張反射を誘発することはわかっており、可能性のある仮説だと考える。健常成人では影響がでなかったが、実際にすくみ足などを呈している患者に対して効果があるのか、追加研究を読んでみたい。
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)