vol.332:上肢と立ち上がりは関係があるのか? 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
バイオメカニクス
タイトル
手すりとその使い方の違いによる立ち上がり時の股関節と膝関節に対する負荷 Effect of armrests and different ways of using them on hip and knee load during rising. ?PubMed Wretenberg P Clin Biomech (Bristol, Avon). 1993 Mar;8(2):95-101. doi: 10.1016/S0268-0033(93)90039-K
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・上肢が立ち上がりにどう影響を与えるか知りたかったため。
内 容
背景・目的
・上肢の使用により立ち上がり時の膝関節への負荷が減少するといった論文はあるが、その際の上肢支持物の高さや掴み方について研究した論文は少ない。したがって本論文は上記支持物の違いによる股関節と膝関節の負荷について検討する。
方法
・10名の健常男性 ・図にあるような環境にて立ち上がり動作を解析した。 図:実験装置Wretenberg P (1993)より引用 ・アームレスト高はふつう(肘頭の高さ)、低い(肘頭から5cm下)、高い(肘頭から10cm上)の3条件と、手の位置は前方(上腕が体幹と平行;図a)、後方(手の位置が体幹と同位置;図b)、自由位置の3条件とした。また、上肢を通常より多く使用した条件も行った。 ・上肢位置からレバーアームを計測し、モーメント計算に使用した。 図:レバーアーム計測方法Wretenberg P (1993)より引用
結果
表:股膝関節各条件のモーメントと各略語の定義 Wretenberg P (1993)より引用 ・アームレストを使用した場合、股関節は30Nm以下、膝関節は60Nm以下で、アームレストの高さの差による違いは得られなかった。 ・アームレストを使用した3条件は上肢非使用に比べて有意に股関節・膝関節モーメントが低かった。 ・上肢使用量を増加した場合、股関節膝関節モーメントは通常の上肢使用量より有意に少ない値を示した。 ・上肢を使用すると膝蓋大腿関節への負荷は体重の1/3以下、使用しないと同関節への負荷は体重の4倍以上となった。伸筋による大腿骨頭への負荷も同様に上肢使用で減少した。 表:上肢の垂直、水平方向の力 Wretenberg P (1993)より引用 ・高いアームレスト位置はわずかだが低いアームレスト位置より小さい力を示した。 ・条件間で立ち上がり時間に差はみられなかった。
私見・明日への臨床アイデア
・上肢の使用により股関節や膝関節のモーメントが確かに減っており、手すりなどの上肢把持が立ち上がりに非常に有効であることがわかる。 ・大腿骨頭や膝蓋関節面への負荷も同様に上肢使用によって減らせることがわかった。同部位への疼痛を訴える利用者には上肢使用を促すと良いと思われる。 ・アームレストの高さや手の位置は股関節、膝関節のモーメントに影響を与えなかった。手すり位置で悩むことがあったが、下肢への負担という点ではどの位置でも大きくは変わらないため、本人が使いやすいと感じる位置で特に問題ないのかもしれない。
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)