Vol414. 呼吸トレーニングは咳や嚥下機能を改善させますか?EMSTの咳嗽・嚥下機能への影響
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タイトル
●呼吸トレーニングは咳や嚥下機能を改善させますか?EMSTの咳嗽・嚥下機能への影響
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●3食食事摂取を目標とする患者様に対し、ST以外の場面で嚥下や咳等への介入+コアを高めるようなリハまたは自主トレが出来ないかと考え、コアトレーニングとしても効果があるとされる呼吸トレーニングの効果を学ぶべく本論文に至った。
内 容
目的
●脳卒中患者の呼気筋力トレーニング(EMST)が咳と嚥下機能の両方に効果を及ぼすかを調査した。
方法
●外来リハビリクリニックにおける過去3~24か月に虚血性脳卒中の病歴がある成人14名を1つの参加者グループとして前向き介入前後比較試験を実施した。
●EMST(expiratory muscle strength training)プログラムは自宅で完了し、1日に25回、1週間のうち5日間を5週間実施した。
写真:EMST150™ Expiratory Muscle Strength Trainer – Main Medicalより図引用
●主なアウトカムは、最大呼気圧、自発的な咳の気流、200μmol/ Lのカプサイシンへの咳反射負荷試験、咳衝動の感覚認知および透視嚥下評価であった。
結果
●全ての参加者の最大呼気圧は、トレーニング後の平均で30cmH2O増加した。ベースライン時に、全ての参加者が200μmol/ Lのカプサイシンに対し鈍い咳反射を示した。 5週間のトレーニングの後、反射性の咳衝動と咳の有効性の測定値は増加しました。しかし、自発的な咳の有効性は増加しませんでした。訓練後の嚥下機能の測定値に有意な変化はありませんでした。
●EMSTは、呼気筋力、反射性の咳の強さ、咳の衝動を改善する。自発的な咳と嚥下の対策は、トレーニング後に有意差はなかった。
私見・明日への臨床アイデア
●呼吸筋トレーニング(EMST)は、器具を用い、「吸う・吐く」トレーニングを行うものです。(今回は呼気トレーニング)
図引用:Respiratory Muscles | BioNinja
●図の様に、呼吸トレーニングは横隔膜はじめ体幹筋にも働きかけます。
●咳嗽は気道内に貯留した分泌物や吸い込まれた異物を気道外に排除するための生体防御反応です。咳を起こす時にそのきっかけとなるのが迷走神経の終末枝です。刺激を受けると電気信号に変換され、延髄孤束核の咳受容体に伝わり、大脳皮質にも信号が届き、遠心性に喉頭筋や呼吸筋に刺激が伝達され咳嗽が生じるとされています。
●上記のように脳神経が関わるというポイントが、呼吸トレーニングだけで解決されない、自発的な咳・嚥下の問題を複雑化している可能性があるのでしょうか。しかし、自発的ではないにしろ咳反射が誘発された際に呼吸トレーニングをした方が有効な咳が行えるといった点は臨床で患者様と向き合う際に覚えておきたい部分です。
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)