Vol.415.ラバーハンド錯覚に鎮痛効果がある?身体所有感と痛みの認識
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カテゴリー
タイトル
●ラバーハンド錯覚に鎮痛効果がある?身体所有感と痛みの認識
●原著はAttenuation of Pain Perception Induced by the Rubber Hand Illusionこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●運動錯覚を用いるとあたかも関節または筋が動いているかのように錯覚する、筋緊張など身体変化を生じさせることは臨床でも観察されるが、他にどのような効果を生むのか学びたく本論文に至る。
内 容
背景
●ラバーハンド錯覚(RHI)の研究では、視覚信号と触覚信号の組み合わせが身体所有感の主観的体験に強く影響することを示しています。ただし、身体所有感が痛みの認識など感覚処理の他の側面をどのように変化させるかは依然として不明です。
●本研究ではRHIが主観的な痛みの調整をできるかどうかを検討しました。
補足:ラバーハンド錯覚(RHI)☞視覚的に隠された自分の手と,目の前に置かれたゴム製の手が同時に繰り返し触られることにより,次第にゴム製の手が自分の手であるかのような感覚が生じるというもの。視覚情報と触覚情報の一貫性によって手の所有感覚が変容することを示唆している。(手の身体所有感覚とラバーハンド錯覚より)
方法
1.ラバーハンドと実際の手が同時に筆で撫でられる同期条件
2.両手が非同期的に筆で撫でられる非同期条件
3.実際の手だけが筆で撫でられるという自分の手のみの条件
の3つの条件下で研究を行った。
結果
●結果は、同期条件において、他の2つの条件のRHIの強度と比較して、より強いRHIを経験したことを示した。
●主たる実験では、被験者は3つの条件下でレーザー刺激によって引き起こされた痛みの強さと不快感を報告するように要求された。その結果は、同期条件下での痛みの評価が他の2つの条件での評価よりも大幅に低いことを示しており、RHIが有意な鎮痛効果を誘発できることが示唆された。
●相関分析では、鎮痛効果の程度が個人間のRHIの強度と正の相関があることを示しました。
私見・明日への臨床アイデア
●ラバーハンド錯覚は,自分の手とラバーハンドに与える刺激が同期している場合にのみ起こることが報告されている。また、自身の手には温度変化はないもののラバーハンド上で視覚的な温度変化があった場合には、自身の手に触れる物が温かく,または冷たくなったように感じられたことが示されている。
●そのように人の体に動いている感じていると思わせるには、多感覚が同期することが重要であることが分かる。それはハンドリング等でも近い事が言え、動きに伴う筋感覚・皮膚の伸張感・関節の回転速度はじめどこかしらに違和感を生じると自身ではなく他者に動かされているという感覚に陥るかもしれない。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)