vol.253:3つのセラピー的活動時の脳波分析 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
脳科学系
タイトル
3つのセラピー的活動時の脳波分析
Analysis of cortical activation during three types of therapeutic activity. ?PubMed Lee SA J Phys Ther Sci. 2015 Apr;27(4):1219-22. doi: 10.1589/jpts.27.1219.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・タイトルにある3つの活動がなにかが気になった点と、それぞれが脳波的にどう違う結果を示すのか興味があったため読もうと思った。
内 容
背景・目的
・Pedrettiは適切な治療を選択するために活動をadjunctive, enabling, purposeful, and occupation-basedの4つのレベルに区分した。
・adjunctiveは機能面に着目した活動で、より意図的な活動の基礎となる。
・enablingは目的的活動の前段階の活動で、身体的な活動に精神的な活動を加えたものとなる。
・purposefulは意義あるゴールを有する活動であり、日常生活動作に直結する課題となる。
・occupation-based activitiesは実生活で行われる目的ある活動と定義される。
・脳波は頭皮から脳皮質の電気活動を捉えたものである。δ波は低い身体エネルギーと睡眠、θ波は持続した眠気、α波は脳部位全体の抑制/促通もしくはタイミングを表す。β1波は運動機能、β2波は警戒と動的思考を表す。
・本研究はPedrettiの活動分類におけるadjunctive, enabling, purposefulの3つの活動時の脳波を計測しそれぞれの特徴を検討する。
方法
・adjunctiveは単純な指の動き、enablingは指で絵を描く、purposefulはペグボードでの課題とした。
・被験者は25名の作業療法学生
・16個の電極にて脳各部位ごとの脳波を計測した。
結果
表:実験結果 Lee SA (2015)より引用
・α1波は3つの活動で群間の差がみられたが、β1とβ2波では群間の有意差は得られなかった。
・中心前回の領域において、 purposeful(ペグボード)が adjunctive(単純な指の運動)よりβ1波の活動が有意に大きかった。
・頭頂葉のβ2波において、enabling(指で絵を描く)がadjunctive(単純な指の運動)より有意に高い活動を示した。
・後頭葉のα1波において、purposeful(ペグボード)がenabling(指で絵を描く)より有意に高い活動を示した。
・前頭葉と側頭葉には有意な脳波の差は得られなかった。
私見・明日への臨床アイデア
・ペグボードのような日常生活動作に近く、目的のある動作は単純な指の運動や指で絵を描くことより中心前回、後頭葉の活動が大きかった。単純な指の運動より目的を持った課題の方が脳への刺激になることが今回の研究からわかる。
・指で絵を描くことで頭頂葉の活動が高まった。この動作は麻痺側の運動を促し、直接指からの刺激があり感覚面の促通も期待できるためアプローチとして非常に有効なのではないかと感じた。単純な運動を自主トレとしてお願いすると飽きて続かない利用者様も多いため、絵を描くことを勧めて麻痺側の自主トレをお願いしようかと思う。
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)