<第8回:脳科学講座Blog>~姿勢制御~編
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姿勢制御とは?
姿勢をコントロールする能力
日常生活のほとんどの動作において必要とされる能力
のことであり,姿勢制御は定位(Orientation)と平衡(Stability)・・・から構成されると言われています.
定位・平衡とは・・・
定位(Orientation)
●身体各部の位置を他の部位や環境に対して適切に保つこと
●例:片脚立位で足関節が内反したり,股関節が内外転すること
平衡(Stability)
●身体のバランスを維持すること
●支持基底面内に質量中心(Center Of Mass:COM)を抑える能力
のことを指します.
この定位・平衡をコントロールする姿勢制御には,もちろん神経系が関与が必要不可欠になってきます.
姿勢制御に関わる神経機構
姿勢制御は,筋出力・感覚情報フィードバック・外乱予測など,様々な要素が組み合わさって実行されます.
第7回の「運動制御編」でも述べましたが,視覚・前庭感覚・体性感覚による感覚フィードバックは重要です!
これらが大脳皮質・大脳基底核・脳幹・小脳・脊髄にフィードバック情報を送り,それらが統合されることで姿勢の維持が行われます.
実際にどのような神経機構があるのか?機能解剖的視点から少しお伝えしていきます!
外側運動制御系と内側運動制御系
運動制御≒外側運動制御系,姿勢制御≒内側運動制御系,外側運動制御系は背外側系,内側運動制御系は腹内側系とも呼ばれます.
外側運動制御系
●外側皮質脊髄路と赤核脊髄路にて主に構成
●反対側の手や指の巧緻運動を主に制御します.
内側運動制御系
●主に脳幹から脊髄への下降路で姿勢維持や歩行を制御し,持続的内向き電流(PIC)との関わりがあります.
●大脳皮質の出力としては前皮質脊髄路が関与してきます.
※持続的内向き電流(Persistent Inward Current:PIC)とは?
運動ニューロンの発火率を大幅に向上させ,シナプス入力が終わった後にまで発火を延長させる大きな持続的な内向き電流のことを言います.
促通性網様体脊髄路,青斑核脊髄路,縫線核脊髄路の終末から放出されるセロトニンやノルアドレナリンによって生じ,姿勢制御や同時収縮など,常に筋活動を起こしていなければならない状況において,上位中枢からのシナプス入力なしに筋活動を維持できるシステムであり,脳にとって効率が良いとされています.
一方,近年では痙縮を引き起こす要因として重要視されてきているそうです.(針谷講師の資料より抜粋)
予測的姿勢制御(Anticipatory Postural Adjustment:APA)
主運動より先行して生じる姿勢制御のことをいいます.
例(上肢挙上時):上肢挙上に先行して大腿二頭筋が活動 = 上肢挙上によって重心が前方移動した際に前方に転倒しないようにするための予測的作用を意味します
APAは無意識下でコントロールされるとばかり解釈されることが多いように思われがちですが,APAも皮質との連携を要求されます.
随意運動を伴うAPA’sのためには6野(補足運動野:supplementary motor area;SMA)からの信号が必要とされます.
ネコを用いた研究では,M1由来の約30%,高次運動野由来の約50%の神経線維が脳幹網様体に分布しています.
最後は,いつものようにDiscussion!
神経学的な解釈にもみなさんだいぶ慣れてきているようです.
(編集:齋藤 潤孝)
お知らせ information
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)