【必見】歩行分析と脳卒中片麻痺患者への臨床応用編 – CPGsと脳幹網様体との関係-
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歩行とは?
●歩行は,自動性と随意性の両者の性質を兼ね備えた全身運動のことを指し,
●歩行の発現と制御には,中枢から末梢までの神経系全般と筋骨格系が関与しています
歩行には主に以下のような3つのシステムが関与しています
歩行に関わるシステムは,歩行実行系,調節系,高次脳機能系に分類されます.
実行系には主に脳幹-脊髄が,調節系には大脳基底核と小脳が,高次脳機能系には大脳皮質が関わります.
歩行の実行系とは?
●①歩行リズムを生成すること②姿勢を維持することを達成させる仕組み
●実行系のポイントは,皮質-脳幹投射系,脳幹-脊髄投射系,脊髄ニューロン系という3つのシステム
●脊髄にあるCPG(central pattern generator)は,歩行リズムやパターンを生成
・・・することにあります!
皮質-脳幹投射系
一次運動野と高次運動野からの出力は,脳幹や脊髄に伝達されます.
脳幹網様体への入力は,一次運動野由来の約30%,高次運動野由来の約50%(猫)があります.
高次運動野由来のものは上丘(視蓋脊髄路の起始核),青斑核や縫線核・脚橋被蓋核にも観察されます.
一次運動野由来の約45%,高次運動野由来の約30%は橋核などに投射し,遠心性コピーを小
脳に送る経路が豊富にあります.
一次運動野由来の遠心性コピーは,体部位再現性のある精緻運動の情報を,高次運動野由来の遠心性コピーは,姿勢や筋緊張などの情報を小脳に送ります.
CPG(central pattern generator)
歩行リズムや歩行パターンの形成に関わります.
脊髄介在ニューロン群から構成される神経回路網ですが,まだ不明な点が多いのが現状です.
求心性神経入力なしに周期的な神経出力を発現させる神経ユニットと定義されます.
歩行中には,①荷重情報②股関節求心系の感覚情報との相互作用によって歩行リズムの安定化,立脚ー遊脚の位相転換などが行われます.
各歩行誘発野からの信号が,網様体脊髄路を介してCPGを駆動させます.
歩行の調節系とは?
●歩行の調節には,大脳基底核と小脳が関わり,これらを調節系と言います
●小脳による運動の調節のためには,感覚フィードバックが重要です
●大脳基底核は,ドーパミンと呼ばれる神経伝達物質で調節しています
小脳の役割
CPGの活動に関する情報は,遠心性コピーとして腹側脊髄小脳路を通って小脳へ
体性感覚フィードバックは,背側脊髄小脳路を通って小脳へ
脊髄小脳で情報処理された後,脳幹ー脊髄投射系を介して脊髄内のニューロン活動を調節します
大脳基底核の役割
大脳基底核は,抑制することで大脳皮質の働きを調整しています.
歩行の高次脳機能系とは?
●自分と外界との接点で生じる情報(体性感覚と特殊感覚)と自身の中で生じる情報(深部感覚と内臓感覚)を合わせて分析,統合する過程や,複雑な情報処理を介して行動を計画する過程のことをいいます.
大脳皮質と随意的な歩行
意思や認知が必要になる随意的な歩行のとき,大脳皮質が歩行に強く関わります(例:歩行の開始と停止,正確な位置に足を置く,障害物を乗り越えるなど).
これらの動作には,上肢のリーチングや手指の精緻運動と同様の仕組みが関与します.
大脳皮質は歩行に関わらないのか?
また,歩行開始においては補足運動野(SMA:supplementary motor area)も関与し,両側ともに補足運動野が障害されると,歩行開始が困難となります.
上記で述べてきた内容,システムが協調的に作用することによって,歩行は実現されるようになります!
もっと複雑な神経科学により構成され,講義でも述べられていましたが,ここではその一部をご紹介させて頂きました!!
最後は,ディスカッション!
今日は実際の患者さまの歩行動画を見て,神経科学的に解釈するという,より臨床実践に近似した討議となってきました!!
(編集:齋藤 潤孝)
お知らせ information
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)