vol.135:歩行時における柔軟性に欠けた膝(Stiff Knee)の原因とは? 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
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カテゴリー
歩行
タイトル
stiff knee gaitの原因を探るImportance of preswing rectus femoris activity in stiff-knee gait.?pubmedへ Reinbolt JA.et al.(2008)
本論文を読むに至った思考・経緯
•歩行時に十分に床とのクリアランスを確保できていない方も多い。その極端な例としてstiff knee gaitの論文と出会い読むに至る。いくつかの論文から問題を探る。
論文内容
論文の目的・背景
•脳性麻痺患者によく見られる病的歩行パターンのStiff knee gaitは遊脚相での最大膝屈曲角の減少と遅延で定義される。Stiff knee gaitはtoe clearanceを低下させ、つまづきや、エネルギー効率の悪い代償運動を引き起こす。
•膝屈曲の減少は、一般的には遊脚相での大腿直筋の過活動と関連があるとされている。しかし、立脚相での外側広筋や大腿直筋の過活動も、toe off時の膝の屈曲速度を減少させ、swing相の膝屈曲を制限すると考えられる。
•大腿直筋の膝伸展モーメントを減少させ、同時に股関節屈曲モーメントを保つことを目的とした大腿直筋の腱移植術はStiff-knee gaitの一般的な治療法となっている。
•研究目的は、stiff knee gait患者のpre swing相での大腿直筋の活動が最大膝屈曲に及ぼす重要性を評価することである。
研究方法
•平均年齢10.6歳の少なくとも一肢にstiff knee gaitを示す10人の脳性麻痺患者の動的歩行シミュレーションを作成することで、stanceおよびswing相の大腿直筋活動の影響を評価した。
研究結果
•early swingよりもpre swingで大腿直筋の活動性を抑制したほうが、シュミレーション上の最大膝屈曲角の向上が得られた。
•stiff knee gait患者において、pre swingでの大腿直筋の活動性は、early swingでの活動性よりも最大膝屈曲に影響することが示唆された。
•stiff knee gaitの原因を評価する際、early swingと同様に、pre swingでの大腿直筋のEMGを計測するべきである。
他論文から追記
•以下A method to differentiate the causes of stiff-knee gait in stroke patients.Campanini I.et al.(2013)
•脳卒中患者の被検者55人中の44人(85%)においてstiff knee gaitの原因はtoe offでのpush offの力の欠如と示されている。結果的にtoe off時の膝屈曲が欠如する。
•歩行時にpush offの結果、膝が素早く屈曲し、その際に大腿直筋の痙縮が引き起こされる場合がありますが、これはStiff knee gait患者ではまれと記されている。機能的手術によって、フットロッカー機構が回復しpushu offと歩行速度の両方が増加すると、大腿直筋の痙縮が誘発されswing時の膝屈曲が制限されることがあります。
•研究では、遊脚相の膝屈曲はゆっくりとした歩行のプッシュオフによって観察された。速い歩行速度では足部のpush offなしに、まず膝屈曲が起こり、次いで股関節屈筋の追加寄与が必要とされた。
•以下Effects of ankle foot orthosis in stiff knee gait in adults with hemiplegia. MA Gatti.et al.(2012)
•本研究は、痙縮を有する脳卒中被験者のstiff knee gaitを解析し、AFOの使用は、これらの被験者の歩行パターンを改善し、速度を増加させることができると結論する。
私見・明日への臨床アイデア
•脳卒中患者においては、適切なswing時の膝屈曲は、RFの過剰動員よりも、床をpushする力の評価がより重要である。「足をあげて」というCueはふさわしくない。
•無理に膝から足を前に出そうとする動きは、股関節の屈筋も求心性に過剰に動員し、遠心的な下肢の伸展性を乏しくする原因となり得る。
•装具は、足部のpre swing時のpush力を物理的に補助し、膝屈曲を促進し、stiff knee gaitを改善しうる。
氏名 覚正 秀一
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)