Vol.418.股関節前部痛とスウェイバック姿勢の関係性とは?歩行中の股関節角度およびモーメントに対する姿勢の影響
脳神経系論文に関する臨床アイデアを定期的に配信中。 Facebookで更新のメールご希望の方はこちらのオフィシャルページに「いいね!」を押してください。」 臨床に即した実技動画も配信中!こちらをClick!!(YouTube)
STROKE LABでは療法士向けの脳科学講座/ハンドリングセミナーを行っています!上記写真をClick!! PDFでもご覧になれます。→PDF
股関節検査↓↓↓
カテゴリー
タイトル
股関節前部痛とスウェイバック姿勢の関係性とは?歩行中の股関節角度およびモーメントに対する姿勢の影響
●原著はEffect of Posture on Hip Angles and Moments during Gaitこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●股関節周囲は疼痛を訴える方は多い。その姿勢との関連性を学ぶべく本論文に至る。
内 容
背景
●股関節前面または鼠径部の痛みは、若い活動的な人で多い。痛みの潜在的原因には、寛骨臼唇の断裂または異形成および大腿寛骨臼インピンジメント(FAI)を含む股関節の構造異常が含まれる。
●股関節屈筋などの股関節前面構造、特に腸腰筋の過使用も、股関節前部痛を引き起こす可能性がある。臨床的に、股関節前部痛の患者の多くがスウェイバック姿勢で歩き、より中立姿勢に修正されると痛みは軽減されることに気付きました。
●スウェイバック姿勢は、「上体の後方変位と骨盤の前方変位があり、後方傾斜姿勢である」という非定型の姿勢として説明されている。スウェイバック姿勢では、体の重心線が腰の後方を通過する。したがって、歩行中にスウェイバック姿勢では、重心線が腰を通過する姿勢または腰の前方にある姿勢よりも、より大きなまたはより長い持続時間の股関節屈筋モーメントの生成が必要になる場合がある。
●スウェイバックと持続時間の増加は、反復的な微小外傷と痛みをもたらす可能性がある。必要なモーメントを減らすと、理論的には筋組織にかかる負担が減り、それにより痛みが軽減される。
●研究目的は、健康被験者の歩行中に必要な運動パターンと姿勢の影響を調査することで、臨床的に観察される股関節前部痛の軽減の潜在的なメカニズムを調査することであった。
方法
●15人の無症候の健康被験者(男性3人、女性12人)がこの研究に参加した。運動学と運動力学的データは、モーションキャプチャシステムを使用して収集された。 歩行中の床反力は、20フィートの歩道に埋め込まれたフォースプレートを使用し測定された。キネマティックデータの収集には、標準のHelen Hayes マーカーを使用した。
●検査セッティング後、中立姿勢で静止立位を取った。各被験者は、自己選択速度で裸足で歩くように指示された。次に、各被験者はスウェイバック姿勢を保ちながら歩いた。第三に、各被験者は前屈姿勢を保ちながら歩行した。
結果
●姿勢を変えて歩くという指示により、運動学と運動力学的な歩行の値の両方に大きな変化が生じた。 スウェイバック姿勢、中立姿勢、および屈曲姿勢の平均歩行速度は、それぞれ1.18±0.16、1.22±0.16および1.23±0.19 m / sでした。
●歩行中のスウェイバック姿勢を維持すると、中立姿勢・屈曲姿勢と比較し、最大股関節伸展角度が大幅に増加し、最大股関節屈曲角度が減少した。(スウェイバック姿勢で歩くと、中立姿勢よりも最大股関節伸展角度が平均5.6°増加し、前屈姿勢よりも約20°増加した。)
●歩行において、股関節の伸展が2°増加すると、最大股関節前面にかかる力が156 N(24%)増加したことを示した(Lewis et al.2010)
●前屈姿勢と比較し、スウェイバック姿勢では最大膝伸展角度が大幅に増加した。 最大の足関節背屈角度は、中立姿勢と比較し、スウェイバック姿勢でわずかに増加した。 最大の足関節底屈角度は、前屈姿勢と比較し、スウェイバック姿勢で増加した。
●中立姿勢または前屈姿勢での歩行と比較すると、スウェイバック姿勢での歩行は、股関節屈筋のピークモーメントと角力積(角力積は力と時間の積で表される)が大幅に増加し、股関節伸筋の角力積が減少した。
●股関節伸筋のピークモーメントは、前屈姿勢に比べてスウェイバック姿勢で大きな減少があった。
●膝では、中立姿勢と比較し、膝伸筋のピークモーメントと角力積が大幅に増加し、膝屈筋のピークモーメントと角力積が中程度および大幅に減少した。
●足関節では、屈曲姿勢と比較し、足関節の底屈ピークモーメントが大幅に増加し、底屈角力積が減少した。中立姿勢と比較し、足関節底屈筋の角力積にも適度な減少がありました。
私見・明日への臨床アイデア
●ほとんどの方が生活習慣等から何かしら姿勢に癖を持っている。その姿勢に応じ、上記図のように筋の状態が変化してしまう(筋長・張力の変化、変化した状態で抗重力活動することによる偏った筋の使われ方が生じる。関節・関節周囲の軟部組織等へのストレスも変化する)。
●筋の弱化部、短縮等への介入→姿勢制御(静的・動的)への介入が必要であるが、長年の癖を修正するには時間・積み重ねが必要。普段の生活習慣の見直しも含め丁寧に関わっていく必要があると思われる。
歩行に役立つ動画
https://youtu.be/a_NCC4KU7qc
脳卒中の動作分析 一覧はこちら
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)