vol.355:脳卒中者の鏡像運動の起源を探る 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
神経系
タイトル
脳卒中者のmirror movementsの起源を探る
Evidence for a subcortical origin of mirror movements after stroke: a longitudinal study.?PubMed Ejaz N et al.(2018)
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・臨床上、脳卒中患者のmirror movementsに興味があり、関連する文献を読みたいと思い本論文に至る。
内 容
背景・研究目的
●脳卒中後、Mirror movementsは、麻痺手が自発的に動く時に非麻痺手に現れる不随意運動です。健常人でさえ、加える力のレベルに比例して増加する、幾らかのレベルのMirror movementsを示します。
●mirroringは、脳卒中後に特に顕著で、患者が麻痺手を動かそうとする試みにより頻繁に起こり、非麻痺手での誇張された不随意運動が生じることが多い。
●Mirror movementsの時間経過に伴う発生および発展は、運動系の脳卒中後の再編成の潜在的な窓を提供します。この潜在的な重要性にもかかわらず、脳卒中後のMirror movementsの時間経過およびパターンを注意深く特徴付けた研究はなく、この現象の起点についてはほとんど知られていません。
●Mirror movementsの1つの可能性として考えられる原因は、脳卒中後の非損傷半球の過活動化のために起こることです。この過活動は不適当であるか、または麻痺手の補償的な制御を提供するために存在する可能性があります。それらは、脳幹から生じる皮質経路(すなわち、赤核脊髄路、網様体脊髄路)が、皮質脊髄の損傷に続く手機能の実質的な回復の基盤を提供することができることを示しました。
●皮質下経路の両側性の組織は、 mirror movementsを生成するのに理想的に適しています。
●いずれにしいても、非損傷側のsensorimotor areasにおける活動は、交差した皮質脊髄路を介して非麻痺手を活性化することによってMirror movementsをもたらします。
●機能的MRI研究では、脳卒中後の非病変側のsensorimotor areasにおける活動の増加を報告しています。もしくは、脳卒中後のMirror movementsは、制御に寄与する系統発生的に古い皮質下の運動回路の活性によって引き起こされる可能性があります。
●Mirror movementsは、以前は非損傷半球のsensorimotor areasの過活性に関連しているとされていました。今回の研究では、mirror movmentsは皮質下を代わりに起源とするのかもしれないとし、皮質下を起源に麻痺手をアップレギュレーションする際の皮質下の運動経路の副産物であると仮説をたてました。
●研究目的は、非麻痺手の脳卒中後のmirror movementsが皮質または皮質下に生成されるか否かを決定することでした。
●53人の初発の脳卒中者のmirroringの時間経過を記録し、それを病変および非損傷半球のsensorimotor areasにおける活動の時間経過と比較しました(fMRIを用いて測定)。
結果
●非麻痺手のmirroringは、脳卒中後早期に著明に観察されました(第2週)、しかし時間経過に伴い消失していきました。mirroringの皮質モデルに反し、時間経過による行動変化を説明することができる皮質過活動の証拠は見出されませんでした。
●mirroring中、非麻痺手の指は広く動員され、一致した指のmirrored forcesは一致しない指のmirrored forcesよりわずかに大きかった(1.76倍)。
●回復過程において、患者のミラーリング中の指のrecruitment patternは、対応する指のmirroring patternのように見えましたが、そのシステムはコントロールにおけるmirroringを担うシステムが脳卒中後にアップレギュレートされることを示唆しています。
●損傷後の最初の2週間に、麻痺手による個々の指先のプレスは、非麻痺手に大きな力をもたらし、1Nの随意的な力で平均0.051Nのmirror movementsを生じさせました。対照的に、コントロール群におけるミラーリングは、患者よりも有意に低値でした。患者のmirroringは、その後、時間とともに減少しました。脳卒中6ヵ月後でさえ、mirroringは対照群と比較してまだわずかに大きい状態でした。
●mirroringが実際に非損傷側のsensorimotor areaの過活動化によって引き起こされた場合、活性化の時間経過は、以前に定量化されたmirroringにおける時間経過の変化に類似するはずです。このアイデアをテストするために、同じ研究集団(表1; 35人の患者、12人の対照群)からの参加者のより小さいサブセットにおいて、S1 / M1の手領域における誘発活動を測定するために機能的MRIを使用しました。参加者は、MRIスキャナー内で個々の 個々の指先プレスを実施しましたが、結果として得られたS1 / M1におけるBOLD応答は、回復の間ずっと安定していました。
私見・明日への臨床アイデア
●脳卒中後は、生まれたての赤ん坊のように、大脳皮質が十分に正しく働いていない状況で、皮質による皮質下の抑制が低下し、普段は成人では隠されている部分が赤ん坊のように現れてくるということか?皮質によるコントロール能の向上がmirror movmentを抑制するのか?さらにイメージを作るため、学んでいきたい。
職種 理学療法士
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)