【2022年版】脳卒中後の記憶障害を有する患者・家族へのインタビュー リハビリ論文サマリー
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カテゴリー
タイトル
●脳卒中後の記憶障害を有する患者・家族へのインタビュー
●原著はImpact of Memory Problems Post-stroke on Patients and Their Family Carers: A Qualitative Studyこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●高次脳機能に関する知識を深めたいと思い、文献を探っていたところリアルなインタビュー形式の珍しい文献を見つけ読みたいと思った。
内 容
背景
●脳卒中後の記憶障害は一般的であり、一部の人にとっては、これらの問題は認知症に進行する可能性(約10%の人が初発の脳卒中の直後に認知症を発症し、約3分の1が再発性脳卒中後に影響を受ける)があります。脳卒中患者は物理的に日常的なタスクを遂行できるかもしれませんが、患者と家族は新しい記憶の問題をどうやって対処し、適応するかを学ぶ必要があるかもしれません。この研究では、地域に住む脳卒中患者とその家族が記憶障害によって生じている問題を報告することでした。
方法
●患者と家族の介護者に対して半構造化面接を実施し彼らの経験を深く理解することに努めました。半構造化面接は記憶障害を発症した脳卒中患者の経験を引き出すために使用されました。参加者は脳卒中後約6か月と12か月にインタビューに参加しました。データの収集と分析は反復的でした。データはテーマ別に分析されました。
内容
●22回のインタビューが実施されました。 以下の領域についてのインタビューをしました。(1)日常生活への影響(2)感情面の影響(3)実施されている補償的戦略について。
●5人の家族・介護者と10人の脳卒中患者が脳卒中後6か月で面接を受け、そのうち8人の家族・介護者と4人の家族・介護者が12か月のフォローアップ面接に同意しました。
日常生活への影響について
●脳卒中患者とその介護者は、脳卒中後の記憶障害によって自分たちの生活がどのように影響を受けたかを直接尋ねられました。
●例1:患者は、車がパンクをしているのを知っていたはずなのに、パンクしたまま運転をしてパンクをしていることに再び気づきました。
●例2:話をしている最中に自分が話をしていることを忘れてしまいました。
●例3:買い物に行っても何を買うか忘れてしまいました。
●例4:家に近づいた時に自分が家に近づいていることに気づかずに、その土地を再度一周してしまいました。
感情的な問題
●脳卒中患者とその家族・介護者の両方が、記憶障害によって感情的な影響を受けたと答えました。脳卒中患者の自立度の低下、自尊心の喪失と介護の必要性からそれらは生じているようでした。
●患者は自分が行う必要がある活動(仕事など)に、自分自身だけでは対処できないということから自信の低下を生じていました。家族も本人にしか分からない部分もあり、代わりに対処してあげることができないためにストレスを生じました。
●一部の介護者では、脳卒中患者が家族や介護者によるケアの努力に気づいていないように見えイライラしているようでした。
●患者がある行為ができないことを家族は知っており、「あなたにはできない」と伝えるたびに患者を傷つけているようであった。
●患者は同じ質問を2、3回し、その度に「その話は聞いた」と伝えることにストレスを感じていました。
記憶障害に対する補償的戦略
●脳卒中患者は記憶障害に対応して症状を管理するための新たな実用的な方法を実行しました。
●戦略1:常に十分なお金(大きなお札など)を持つようにします。タクシーを利用する場合はポケットにお金を入れてタクシーを利用します。
●戦略2:自身に関わる重要なことはメモをするということが共通して見られる行為でした。
●ある家族の介護者は、自分を介護者とは見なしておらず、何よりもまず自身を「配偶者」であると述べました。
私見・明日への臨床アイデア
●臨床において家族指導は実際にどれくらい十分に行えているのか。長く付き合っていく家族に対する実際場面での指導は非常に重要と感じる。特に外来や地域のサービスでは、日頃の問題点を十分に聴取し、患者に対してだけのリハビリでなく、家族指導を行うことで、毎日のケアの質が向上すると思う。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
併せて読みたい【脳卒中、記憶、高次脳機能障害】関連論文
vol.384:高次脳機能評価は転倒を予測できるのか? 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)