vol.138:頸椎位置覚と老化 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
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カテゴリー
神経系
タイトル
年齢と頸椎位置覚の誤差との関連性 Association of age on cervical joint position error ?PubMed: Khalid A. A, J Adv Res. 2017 May; 8(3): 201–207.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・臨床コースにて歩行と頭部の揺れ、平衡覚や頸部固有感覚に着目して治療する機会があった。本論文では頸椎位置覚と老化の影響を検討しており、臨床に活かせるのではないかと考え、読もうと思った。
内 容
背景・目的
・頭部と頸部の位置覚は頸部の筋・靭帯・関節包の固有受容器、視覚刺激、平衡覚を統合して形成される。
・頸部の求心性情報の障害は頸部関節位置の誤差で計測される(Cervical joint position error: cervical JPE)。
・老化に伴う頸椎編成、可動域低下、筋力低下、長さ-張力曲線の変化は頸椎のJPEに変化をもたらす。
・本研究の目的は、無症状の被験者2群(若年、老年)を比較し、頸椎JPEと年齢の関係と検証することである。
方法
・230名の健常成人(17歳~70歳)を2群に分けた。
・若年群(平均32.4歳、17~49歳)169名
・老年群(平均64.9歳、50~70歳)61名
・頸椎JPEは機器を用い、検者が誘導した頸椎角度(最大角度の50%)に自動運動で合わせてもらい、誤差を測定した。
・被験者は椅子座位にて脊柱伸展位、股膝関節90°屈曲位を取った。胸椎はストラップで固定し、閉眼位を維持。頸椎屈曲、伸展、左右側屈を計測した。さらに、背臥位にて頸椎の左右回旋を記録。
図1:計測器の装着方法
Khalid (2017)より引用
結果
図2:屈曲(左)と伸展(右)の実験結果
Khalid (2017)より引用
・年齢とJPEは屈曲(r=0.71)、伸展(r=0.81)で有意に正の相関関係が見られた。
図3:右側屈(左)と左側屈(右)の実験結果
Khalid (2017)より引用
・年齢とJPEは左側屈(r=0.77)、右側屈(r=0.84)で正の相関がみられた。
図4:右回旋(左)と左回旋(右)の実験結果
Khalid (2017)より引用
・年齢とJPEは右回旋(r=0.84)、左回旋(r=0.84)は有意に相関関係が得られた。
・誤差が最も大きかったのは頸部の伸展だった(若年群3.11°±1.92、老年群6.53±1.61)。
私見・明日への臨床アイデア
・本研究で年齢と頸椎位置覚の低下に相関が示された。加齢とともに筋紡錘、関節や皮膚の受容器の数の減少や機能低下が報告されていると本論文にあり、今回の結果を裏付けるものである。利用者様によっては頸部の固有受容器数がそもそも乏しい可能性もあり、アプローチの効果が乏しい際の原因のひとつになりうるのかもしれない。
・頸椎の伸展で誤差が最も大きかった。高齢若年問わず、日常生活での座位時間が長くなった結果、上部頸椎伸展位の姿勢から後頭下筋群の短縮を伴い、固有受容覚として機能していないことが一因ではないだろうか。同筋群へのアプローチで頭部、頸部の位置覚改善、ひいてはバランス能力の改善が図れるかもしれない。
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)