vol.147:脳卒中者の早期退院と継続的フォロー 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
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Early supported discharge and continued rehabilitation at home after stroke: 5-year follow-up of resource use. ?pubmed Thorsén AM J Stroke Cerebrovasc Dis. 2006 Jul-Aug;15(4):139-43.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・早期退院と在宅での継続的なフォローの重要性が昨今叫ばれており、本論文でその取り組みの結果がわかると思い読もうと思った。5年間の追跡も期間が長く、貴重な情報であると考えた。
内 容
背景・目的
・早期退院とその後のフォローアップは重要だが、12カ月以上追跡した研究は少ない。
・本研究の目的は脳卒中者の5年間の機能面や生活面のアウトカムの変化を追うことである
方法
・83名の軽度~中等度の脳卒中者(発症から5-7日で参加の可否を検討)
・HRG群(在宅でのリハ)とCRG群(一般的な入院、リハビリ)の2群にランダムに分けた。
・両群ともに病棟での治療、リハビリテーション(理学療法、作業療法、言語聴覚療法)を受け、HRGへと移行した。
・HRG群の介入期間はそれぞれの被験者で異なり、平均介入期間は14週間、平均介入回数は12回だった。
・CRG群は必要があれば外来でのリハビリを継続した。
・退院から1年もしくは5年経過した被験者に電話でのインタビューを実施した。
・アウトカム
・入院期間
・死亡した場合、退院日からの日数
・身体機能、活動、参加、個人因子、主観的な障害
・MMSE
・Lindmark Motor Capacity Assessment(LMCA)
・Nine-Hole Peg Test(NHPT)
・10m歩行テスト
・Barthel ADL Index
・Katz ADL Index (cooking, transportation, shopping, cleaning)
・Frechay Activities Index (FAI) 社会活動の評価
・Sense of Coherence Scale(SOI) 問題解決能力
・Sickness Impat Profile (SIP) 主観的障害
・転倒歴
・計測はベースライン、3か月後、6カ月後、12か月後、5年後とした
結果
・1名を除く82名を5年間追跡できた。
・5年間のうちに17名の死亡があった
・入院期間はHRG群14日、CRG群30日と有意差があった。
・10m歩行やペグの移動において、HRG群はCRG群より高い値を示したが、有意差はなかった。
・発症から5年後、HRG群は皿洗い、洗濯、読書の項目でCRG群より有意に自立していた。
・Katz extended ADL Index(料理、公共交通機関の移動、買い物、クリーニング)において、HRG群はCRG群より有意に高い値を示した。
・発症から5年後、両群ともに歩行、家事、趣味やレクリエーションが障害されていると述べていた。
・両群とも過去6カ月で転倒があった被験者の割合は60%だった。
私見・明日への臨床アイデア
・HRG群(早期退院と継続的なフォローアップ)はCRG群(通常の入院期間)に比べ、IADLや趣味活動などに差が見られていた。退院後の訪問リハや通所リハなどを後押しする根拠になると思われる。
・HRG群の継続的なフォローは平均3か月だった。フォローが終了したあと、被験者たちが自宅でのトレーニングを継続していたかどうかは調査対象とはなっていない。フォローが終了した時点でトレーニングを辞めた方、続けた方で結果は違うと思われるので、今後の研究に期待したい。
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)